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Remained GaMe -replay-  作者: ぼんばん
0章 箱庭ゲームへよウこソ
4/52

見知らぬステージ

 3人は早速探索へと向かった。


 施設の構造は中央に玄関ホールを構えて、向かって右がA棟、左がB棟らしい。

 玄関ホールの奥には中庭のテラスがあるようだ。



「おっ、何々その組み合わせ!」

「………。」


 中庭には、高濱と石田がいた。その2人に久我が尋ねる。


「どうですか? 何か面白いものはありましたか?」

「んにゃ、別に。渡り廊下を使って裏庭に抜けられる仕組みらしいぜ。」

「へー、じゃあ倉庫に物を取りに行く時はわざわざ回りこまなくても良さそうですね。」


 施設の裏手には鬱蒼とした木々が並ぶ裏庭と倉庫があった。

 見通しが悪く、暗さも相まって勢いよく走るとうっかり誰かとぶつかってしまいそうな視界の悪さだ。


「……石田さんは?」

「…………。」


 美波の問いかけに対して彼は首を横に振るのみ。

 彼を不審に思い、問いかけようとすると、慌てた様子で高濱が間に入る。


「あー、ごめんごめん! コイツ話すのが凄い苦手でさぁ! 悪い奴ではないからあんまり責めないでやってよ。」

「……悪い奴か、悪い奴じゃないかは私が決めるものだと思うけど。」

「かーっ、厳しいね、美波ちゃん。」



 彼は参った、と言わんばかりに大袈裟に頭を抱えてみせる。

 しかし次に顔を上げた時は真剣味を帯びており、彼女にやんわりと語りかけるように言う。


「確かに君の言う通りだけどさ、適応にはやっぱり人それぞれ速度があると思うんだよ。君たちみたいな子もいれば、遼馬や莉音ちゃんみたいに人によっては距離を置く人もいるんだしさ。まぁ、焦らずやってこーぜ。」

「……分かったよ。急かして悪いね。」


 石田は気にしていないと言わんばかりにゆるゆると手を横に振る。

 コミュニケーション自体は取れるのになぜ頑なに言葉を発さないのか、美波にとっては甚だ滑稽な様子に見えた。










 次に3人は棟を探索することにした。

 A棟には、ログインルーム、何やら大きめのホール、シャワー室2部屋、仮眠室4部屋、トイレ、モニタールーム、作業室2部屋が存在していた。


 一方で、B棟は2階建てになっており、玄関ホール側の階段と奥のトイレ横の階段が存在していた。

 1階には図書室、娯楽室、テレビルーム、音楽室、トレーニングルーム、美術室、空き部屋2つの8部屋かわ配置されており、2階には個室みたいな部屋、空き部屋2つがあった。


 B棟の図書館には華を中心に荻と莉音が何やら話をしていた。

 それを麻結が遠目でチラチラと見ている、何とも不思議な光景であった。


 3人の元には、久我と綾音が向かった。

 何となくであったが、美波はこの3人を苦手だと思っていたため、関わりたくはないが麻結の方に接近した。


「アンタは何やってるの?」

「ひっ、びっくりさせんじゃねーよ……。真面目に探索に決まってんだろ……。」

「なら、何で1人でコソコソしてるのさ。」

「うっ、うるせーな!」


 美波の声など容易に搔き消すほどの声であったが、美波は特に動じることなく聞いていた。


「探索はマジなんだよ。証拠にちゃんと担当者の奴に問い合わせてよ、2階の空き部屋はモニタールームから外部に注文して部屋をカスタマイズできるらしいことを聞いたぜ。」

「カスタマイズ?」

「ああ、例えばあたしだったら少女漫画が好きだからよ! データにある漫画全部かき集めて読書部屋を作ることもできるってことよ!」

「へえ……。」


 言葉遣いや態度からはいまいち好みがぴんと来なかったがとりあえず肯定しておいた。



「で、何で3人を見つめる本音は?」

「あ? 簡単だよ、アイツら恋愛関係にもつれそうじゃね?って。」

「……荻の取り合い?」

「三角関係もありだろーがよぉ……。」


 恍惚とした表情を浮かべる彼女の思想は美波には理解できなかったが、面倒だったこともあり、そう、と呟いておいた。

 横目で彼らを見ると何やら話しているようだった。




「3人は何をしているの?」

「ん? 華が2人に信じ合うことの大切さを説いてあげてたんだよ〜。信じる者は人でも、神様でも、ものでもいいんだよ〜。信じる者は報われるからね〜。」

「し、信じることは大切だと思うけど……。」

「おっ、綾音も参加するか?」

「えっ。」


 彼女はしどろもどろになって、助けをこちらに求めてきた。

 しかし、息を呑みながら麻結が美波の手を掴んでいたため動けなかった。

 それを察したらしい久我は苦笑しながら華に向けて話し始めた。


「信じるのはいいことだと思うけど、人に強制させることは本質と異なるんじゃないかな。」

「……それもそうだねー。」


 想像よりあっさり引いたと思ったが、華は不気味に含み笑いをすると久我の側に立った。


「でもそれは睦が信じられてないからじゃないのー?」

「……。」

「華には分かるよー? どうしてこの楽園で人を疑わなきゃいけないのー? それとも、睦が隠し事してるのかな?」


 ジッと深く黒い瞳が彼を覗き込む。

 しかし、久我は一切動じる様子を見せない。


「ふーん、そかそか。やましいことではなさそうだねー。勿論華は睦を信じてるからねー。」

「そう、信じてもらえてよかったよ。」


 そんな2人のやりとりを不安そうに見つめる莉音や綾音を尻目に荻はクックックッと喉で笑っていた。


「ちょ、荻くん何で今の状況で笑っていられるの……?」

「いや、ね、武島サン?」


 彼は愉快そう笑うのみ。


「いや、全くボロを出す気がない久我サンを無償で信じるなんて凄いなって。久我サン、案外アンタは曲者だね。」

「ボロを出すも何も、そんなネタないよ。」


「そうかなぁ? 例えば、隠し部屋を知っている、とか。」

「隠し部屋?」


 流石に美波も気になり、集団の会話に加わった。

 彼はやっと来た、と言わんばかりに美波を見た。


「そ、以前の【箱庭ゲーム】では、倉庫にランダムで隠し部屋の入口が現れたらしいよ。噂では、最初の発見者にはアドバンテージがあったとか。」

「アドバンテージ?」

「うん、オレも詳しくは分からないし問い合わせても返ってこないから定かではないけど。もし存在するのだとしたら、興味あるよねー。」

「ふーん。それは私も興味あるかな。」

「美波ちゃん?!」


 綾音がギョッとして彼女を見やるが、美波はポーカーフェイスを崩さない。


「でも現時点で知ってたとしても特に得しないでしょ。なら、久我だって隠す必要はない。」

「ま、その通りなんだけど! あはは、論破されちゃった!」


 彼はぐーっと小さい身体を伸ばしてケラケラ笑っていた。


「うん、オレは結構君ら2人は好きかもしれない。仲良くしてね!」

「ほどほどならね。」

「釣れないねー。」


 そんなやりとりを最後に図書館を後にした。

 何やら麻結が言いたげであったが捕まったら最後、長くなることは明白であったため、美波は2人の背を押してそそくさと部屋を出た。








 玄関ホールを出ると表には噴水、出て右側にはグランドと体育倉庫、温室があった。

 グランドの方を見てみると千葉と須賀が梶谷を追いかけて何やら走り回っているように見えた。


「あ、久我さん達いいところに〜!」


 半べそをかいた梶谷が3人を見つけてよろよろとやってきた。

 梶谷は肩で息をしながら久我の後ろに隠れた。


「いい体格した2人で何してるの?」

「別にいじめてるわけじゃねーよ。ただ梶谷があまりにも運動しなすぎて心配だっただけだよ!」


 慌てて千葉が弁明するが、須賀は大柄に笑っているのみだ。


「なぁに、ちょっと運動をと思って誘ってただけさ!」

「別にゲームの世界で運動したって実体に反映されないと思うんすけど……。」

「梶谷の言う通りだね。」


 ジト目で真実を訴える梶谷に対して美波が同意すると2人はうっ、と反省したような様子を見せた。


「ねー、お三方! オレも一緒に行きたいっす! オレも施設ちゃんと調べたいっすよー!」

「僕はいいよ。2人は?」

「あ、私はいいよ。」

「別に。」

「やったー! ありがとうございます!」


 きゃーと子どものように無邪気に喜んでいる。

 残りの2人は久我にやんわりと怒られており、こちらもまた子どもが親に怒られているような光景だった。


「ところで、梶谷はプログラミング得意なんでしょ?」

「まぁ、そこそこっすかね。」

「この世界はどう?」



 美波の唐突な質問に目を丸くしたが、そうっすねぇと悩むような含んだ言い方をする。


「無気力な子ども、っていうのがハマるのはよく分からないっすけどプログラミング好きとしてはこの世界はある種の楽園かもしれないっすね。」

「と、いうと?」


「だってこの世界は全てがデータ、ってことはデータを読み切っちゃえば全部オレが動かせてもおかしくないってことっすよね。とても、興味深くて恐ろしいことだと思いません?」


 綾音が唾を飲んだのが伝わった。

 純粋な疑問と興味なのだろう、美波は少しだけ梶谷の言っていることが理解できた。


「ならこの世界での生活がよりよいものになることを期待してる。」

「冷静に無茶振りっすね……、もちろんせっかくなんで色々やらせてもらう予定っすけど!」


 彼は未知な世界に対して興奮を抑えきれないらしく楽しそうに辺りを見回していた。


「あれ? あそこにいるのって香坂さん?」

「はい、そうっすよ。図書館だと矢代さんたちに絡まれるし、って。最初はオレと同じように誘われてたんすけど2人とダウトの勝負して勝ったから傍観を許されてるんすよ。」

「ダウト?」

「はい、なんだろ、読心術でも得意なんすかね。」


彼はからからと笑いながら言う。

真実は本人に聞かなければ分からないが明らかに近づくなオーラが出ているため、4人は接近を諦めることにした。












 施設の裏手に回ると、鬱蒼とした木々が並ぶ裏庭と倉庫があった。倉庫内には説明通り、不足分の生活必需品が所狭しと並べられていた。

 菜摘と楓がマメに必需品のリストアップをしているようだ。


「あ、美波ちゃん。施設は一通り見られた?」

「うん、2人は全部リストアップしてるの?」

「そうですよ。あった方が便利かと思いまして。もう少しでできるのでみなさんにはメールで共有しますね。」

「ごめんね、ありがとう。」


綾音が控えめに礼を言うと菜摘と楓は首を横に振る。


「せっかくの機会だし、みんなで楽しまないとね!」

「そうですよ。この後BBQもあるわけですし。」


 2人の気合の入れように何となく空気は和み、笑いが漏れた。

 美波はそこで一通りの探索を終え、BBQの準備を始めることにした。

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