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Remained GaMe -replay-  作者: ぼんばん
4章 計画にない目標へ
33/52

休息の心得

「ここ、電子機器ないね。」



 1階のホームセンターフロアに石田と梶谷はやってきた。AIの【綾音】にファイル解析の結果を確認することだった。



『こんにちは、梶谷くん、石田さん! ファイルはほとんど解析が終わったよ!』


「仕事早いね。」



 石田が素直に褒めると、画面の向こうで彼女がえっへんと胸を張る。



『まずは【箱庭模擬ゲーム】の全体サーバーマップについては以前梶谷くんが見つけたサーバーマップに間違いはなさそうです、でも。』


「「でも?」」


『どうやら厳密には、以前の【箱庭ゲーム】とは違うみたいなんです。』


「どんな風に違うんですか?」



 うーん、と彼女は悩むような様子を見せる。



『前のゲームでは、外部からの介入がほぼできないシステムだったんです。だからこその機密性と安全性でしたけど。

 今回はサーバー主、ダストボックス、それこそ外部から、さまざまなところからのアクセスが可能なんです。』


「それって外部から助けが来やすいってこと?」



 石田が尋ねると、いや、と梶谷が否定する。



「逆に言うと、こちらから外部へウイルス送り込むことも可能なんすよ。不可能と思いますけど、ダストボックスからのアクセスの方が安全でしょうね。」


「……ふーん。」



 果たして石田は分かっているのかいないのか。

 【綾音】は淡々と解析結果を述べる。



『次は【箱庭】の構成プログラムについて、ですね。これについては、前回のゲームと大差ないですよ。』


「今回の世界では部屋の構成が捻れ曲がっているんすけどそれについては?」


『うーん、厳密には分からないけど、前回のゲームみたいに、外部から全ルームの【強制退場】を行なう作業でエラーかつ想定してなかったであろう【自滅行為】が重なったとか、……何かしら【スズキ】の想定していなかったことが発生したとかかなぁ。』


「何かしら、ね。」



 正直なところ、心当たりはあった。

 恐らく、美波と隠し部屋の出入口が消えたことではなかろうか。しかし、それであれば彼女は何者なのだろうか。


 難しい顔を浮かべる梶谷を尻目に、石田と【綾音】は会話を続ける。



「……酒門と【スズキ】の会話も解析してたよね? そっちは?」

『特に会話内容については違和感はありません。ですが、分析を行なっているうちに【スズキ】の人格を分析することは可能でした。』


「どんな人間なんすか?」



 【綾音】は、歳相応とは言えない、淡々とした様子で無機質な笑顔を浮かべた。



『知識量、声質、会話の内容を踏まえて恐らく30代女性。しかし、思考は幼く、自己中心的な性格、箱庭への執着も強い。一方で研究者気質なところもあり、同じ分野の人間への興味関心も強い。だからこそ、人との交流を愉しんでいるところもある、と言ったところでしょうか。

 過去の、とある人物とよく似ていますが正反対です。』


「ある人物?」


『うん。』



 次の動画に関することと関わるんだけどね、と彼女は前提を話す。






『かつての【箱庭ゲーム】、功労者と言われた【赤根茉莉花】に。』



「……【赤根】、」



 石田が、ぽつりと復唱する。



「どうしたんすか?」

「……いや。」



 今度は石田が思案顔になってしまう。



『それでね、あの動画のことも合わせて調べたいことがあるからできれば回線に繋いでほしいんだ。』


「それは……。」



 【綾音】の言うとおりにすれば、今まで得られなかった情報を得ることができる。しかし、梶谷たちの最終兵器を失うリスクも伴うのだ。



「少し、考えさせてくれませんか。」

『分かったよ。』



 【綾音】は困ったような顔をしつつも、了承する。しかし、時間はないからとしっかり念押しをされた。




「……梶谷、もしかして入れ込んでるの?」



 僅かに険しい顔を浮かべて石田が尋ねる。



「それは、その、無いとは言い切れないっす。でもデータと割り切るならバックアップをどこかにとっておくべきっすよ。」

「ならオレのーーーーー。」


「私の端末にすればいいよ。」




 2人は背後から聞こえた声に肩を震わせる。


 その正体は、ずっと姿を見せなかった美波であった。どこか疲れているような、気怠そうな顔をしていた。




「酒門さん! 今までどこに……!」


「ずっとうろうろしてたよ。」




 嘘でしょ、と石田はどこか呆れたように言う。



「いや、嘘じゃないよ。ただ自分の身体のプログラムを弄った。」

「そんなこと可能なんすか?!」



 彼女は何を言ってるんだコイツと言わんばかりに梶谷のことを困惑した表情で見つめた。



「……アンタならそんなプログラム自分で組めると思ったけど。」

「いや、そんな、オレには……。」




 ゲームに参加した時なら、できると即答出来ただろう。しかし、自分にできていることなんて。

 梶谷は下唇をぐっと噛み下を俯く。




「梶谷、アンタ、プログラム組むの好きでしょ?」


「……、」




 梶谷は驚いた。

 美波が問うてきたことでなく、自身が即答できなかったことに驚いているのだ。

 美波はその様子を見て、一瞬悲しげな顔をしたが突然雑に梶谷の頭をわしわしと撫でる。




「アンタ、暫くパソコンから離れな。

 そんで、もう1回、触りたいって思った時に触りな。」


「……ッ、オレ。」



 梶谷は体育座りをして顔を膝に埋めてしまう。




「……酒門の端末にっていうのは承諾できない。それと、もし実行するんだったら梶谷以外の端末でやった方がいい。」


「何でっすか、」



 梶谷が力なく尋ねると石田は厳しい目つきで彼女をにらみながら答える。




「酒門の言い分も分かるし、過去のゲームを参考にするなら酒門と木下は限りなく【サポーター】である可能性は低い。

 でも、隠し部屋の出入口と一緒に消えたこととか、今まで姿を見せなかったこと、プログラムを組み立てられる点では、ちょっと警戒すべき人物だよね。」


「それに梶谷にパソコンに触るなって言ったから?」



 石田は頷く。

 確かに今いるメンバーの中では、梶谷に次いでプログラミングに詳しい人物は酒門であることに間違いはなかった。



「わかったよ。ならオフラインに書き換えられるようプログラムを組んでくるからまた明日この時間にここで会おう。」



 美波は倉庫から非常食を幾らか持ち出すと、そのまま去ってしまった。

 梶谷は急な衝撃に顔を上げる。どうやら石田に無理やり立たされたらしく、体格の違う彼に抗うことは叶わなかった。














「はい、梶谷。」

「……、ハァ、ハァ。」

「ごめん、速すぎたね。」



 足の速さも、心肺も、そもそもの長さも違うのだから色々と配慮してほしかったと、息も絶え絶えで梶谷は思う。

 連れてこられたのは、グランド。

 


「何でここに?」

「何でって、思い切り身体を動かすため?」

「身体を?」



 梶谷は息を整えて顔を上げる。

 目の前の彼は涼しげな表情をしている。



「そ、たぶん今まではプログラミングがストレス解消だったんだろうけどそれを取り上げられたでしょ。

 なら、しっかり身体動かして、疲れて、頭すっきりさせた方がいい。それに疲れてる時の方が怒ったり泣いたり、笑ったりしやすいって風磨が言ってた。」



 恐らく無表情な彼を見兼ねて、高濱が彼にアドバイスをしてのだろう。彼らしい、と梶谷は笑ってしまう。



「じゃあ何するっすか?」

「走るか……サッカーか? グランドにバスケゴールないし。バスケとか?」

「いや本職の人目の前でバスケはキツイっす。キャッチボールにしません?」



 オッケー、というと彼は体育館倉庫に向かう。



 自分が思っているより、自分は周りに救われているのかもしれない。



 梶谷はグランドの傍らにある花壇の縁に腰をかけ足をぶらぶらと揺らす。ふと玄関の方を見ると、ちょうど建物から出てきた莉音と目があった。

 また憔悴しきった彼女は、梶谷を認めるとびくりと身体を震わせて怯えたようにそそくさとカフェテリアの方に向かう。


 なんだろう、何かに怯えているような、迷っているような。


 少しばかり気になり始めたところで石田が戻ってきた。



「石田さん。」

「ん?」



 ボールをグローブに叩きつけながら彼は不思議そうな顔を浮かべて戻ってきた。



「申し訳ないんすけど、アイテム使用歴を確認してもらえないっすか?」

「……? いいけど。」



 2人で石田の端末を覗き込むと、とある事実が淡々と羅列されていたのだ。




 この世界に来てから、不自然に睡眠薬がダウンロードされていたのだ。



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