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草木も眠る丑三つ時、即ち午前二時頃押し入れからがさごそと何かがいるような音がした。


はっきり言って、真夜中だ。しかも、ここは独り暮らしで、他に誰かがいる余裕などないのだ。


「鼠? 泥棒? 或いは、両方か?」

真剣な表情を浮かべ、手短にあったプラッチック製でやたら分厚くて硬い45㎝定規を片手に、件の押し入れの引き戸に手をかけゆっくりと引き開ける。


すると、そこには、男がいた。

上半身鍛え上げられた肉体に、ピンク色の新婚のお嫁さんが着けるようなフリルのエプロンを身に付けた筋肉質の男だ。金髪碧眼で、完全に海外の人である。


「えっと…こんばんは?」


思い付いた言葉が、通常の挨拶か、しかも日本語で!? と思考の隅で頭を抱えたものの、相手も礼儀正しいらしく、姿勢を正して挨拶を返してくる。

「このような場から失礼致します。聖女様。御迎えに参りました。」

「!!」

日本語で、返してきおった。見た目、海外の人なのに?!


いや、問題はそこ出てなく、言葉も問題と言えば問題だけど、このおっさん、人ん家の押し入れでエプロン姿で何やってんだ?


「あの…聖女サマって、俺、のこと?」

恐る恐る聞いてみると、おっさんは真面目な顔で頷く。

まあ、ここには、俺とおっさんしかいないもんな。他に誰かが隠れているなら、ビックリだわ。



でも、聖女ってなんだ?



俺、男なんだけど? 平凡でフツメン。お得と言えば、運動神経の良さと背が高いくらい、か。


なんで。そんな俺を捕まえて、いきなり聖女とか言うのかな、このおっさんは。


俺の心情なんか知る由もない押し入れのおっさんは、手を伸ばし俺の手を掴もうとする。

「さあ…」

無言で、差し伸ばされた手を定規でペチッと叩くと、速攻で押し入れの戸を閉めた。


戸を閉めるとき、おっさんが手を差し伸べたまま呆然とした表情を見た。

まあ、イケメンだったからな。普段こんな仕打ち受けたことないのではなかろうか。

すまん、俺は男だから、その手を取るわけにはいかないんだよ。そんな趣味もないし。


全くどうやって入り込んだのだろうか。ここのアパートは、見かけは古いけど、セキュリティはしっかりしてる。監視カメラと警備会社がきちんと繋がっていて、いざとなったら゛いざ鎌倉゛と、馳せ参じてくれる、筈なんだけど、一向に来る気配ない。

待っていても仕方ないので、取り敢えず警察の方に電話を入れようと、スマホをとる。だが、



圏外


はぁ? どういうこと?


家から一歩も出てないというのに、スマホの画面は圏外を示していて、電話をすることができない。


その内、押し入れの戸が内側からトントンと叩かれる。開けるわけにはいかない。

あの変なおっさんが出てくるのは、勘弁してほしい。


願いも空しく、内側からのノックとさらにボソボソ会話する音が響いてきたのにはビビった。

待って、そこおっさん以外にも誰か居るの?!

おっさんに、警戒してるのを忘れて押し入れの戸を勢いつけて開ける。


そこは、何故か別世界になっていた。


ありがとうごさいます

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