序章
「私は絶対、許さない! 貴方達を絶対、殺す!」
華やいだパレードが行われていた。それは、魔王を倒した七人の英雄の凱旋パレード。人々は喜び浮かれている、その中にパレードの主役、英雄達を涙ながら睨む幼女がいた。
その後、七人の英雄達はそれぞれ国を建国し、この世界を統治された。
「「「マナよ! お主には、魔法・剣・拳の才能は無い、復讐など諦めるがよい。お主は、まだ若い憎しみを忘れ生きよ」」」
「断る!」
とある山間の隠れ里。そして、三人の賢老・ 剣老・拳老の三権の前に一人の少女がいた。髪は白に近い淡い桃色で後ろで二つに結び、瞳の色は黒く大きく全てを見透かす様な目、目鼻立ちがはっきりした美少女。
「お師さま達の言う通り、私には才能無いのはわかっています。誰よりも血の滲む努力をしても、人並みです。これ以上は望めないのも知っています。あの七英雄いや、ろくでなし異世界人達に遠く及ばないのも。ですが、復讐は諦めません、憎しみは消えません!」
賢老・剣老・拳老は言う。
「お主の境遇は知っておるつもりだ。だがな、誰もお主に敵討ちなど望んでおらぬはずじゃ」
「姉も街の皆も、お主の幸せを願っておる」
「復讐など何も産まん」
少女は少し考え。
「お師さま達にお伺いします。もし今、お師さん達の最愛なるお人が、辱しめられ殺されたら、どの様になさいますか?」
「「「殺す!! 」」」
「答えは出ました」
「「「あ!」」」
そして少女は言う。
「街の皆は、とても優しく愛をくれました。両親を早くに無くした姉と私を、街の皆は家族同様に扱ってくれました。何不十無く。なのに……」
賢老は悲しそうに。
「だがな、わしらの最愛な者達の中には、お主も入っているのだ」
剣老・拳老が頷き、マナは言葉に詰まる。
「それは……嬉しですが……」
「話は終わりだ。帰って休みなさい」
「お師さま……わ、わかりました」
マナを返し三権は話し合う。
「能力の成長限界を感じ焦っておるのじゃな」
「知識・閃き・指導は歴代のケンオウを超えるが、格闘に必要な体格・魔法に必要なスフィアが足らん」
「復讐などさせる為に育てたわけではないのに」
「賢い子じゃから、復讐など止め憎しみ忘れると思っていたのだがな」
「「「困ったものだ……」」」
マナは帰り道、マナを待っていたかの様な男達が、落ち込んでるマナを見るや慰めるように話し掛けてきた。マナは話を流しながら帰宅する。そして、その日の夕方、現ケンオウが旅から帰って来た。
里の入り口は、人で賑わっていた。そして、三権が出迎える。そして、ケンオウが帰りの挨拶をする。
「「「只今、戻りました」」」
賢老はケンオウを労いながら。
「よくぞ戻ったケンオウよ! 今宵はゆっくり休み、明日にでも話を訊こう。皆の者、宴の準備じゃ!」
賢老の話が終わるとマナは、ケンオウに飛び付く。
「兄様達、お帰りー」
「「「おぉー、マナ帰ったぞー」」」
拳王がマナを抱き締めなから言う。
「マナ~少し見ぬ間に、また美しくなったな~」
「ありがとうございます。嬉しいのですが……締め付けが少し痛いですよ」
剣王が拳王をマナから引き剥がし抱き締める。
「マナが痛がってるだろうが! 脳筋、離れろ! 次は俺だ!」
「何をする剣王!俺の癒しの時間を!」
「知るか!脳筋!」
ガバッ!
「マナ、元気だったか~兄は寂しかったぞ!もう、離さないぞ~!」
「剣王、兄様も痛いよー」
賢王が剣王を杖で叩きながら、マナから引き剥がすし抱き締め。
「まったくお前らは、ケンオウなんだぞ!しっかりせんか!」
ゴン!
「いて!何をする賢王」
「いいから、マナから離れろ! 次はわしだ!」
ガバッ!
「おぉ~マナよ~里には変わりは無かったかい?マナに言い寄ってくる男はいたか?」
「里も平穏無事で私に言い寄ってくる人は……い、いないよ」
「「「ん? 今の反応は? まさか!? 許さんぞ! 俺 (わし)の目が黒いうちは、マナに指一本触れさせんぞ! 触れた者は里の者でも許さん!」」」
「いないよ! いないから安心して!」
「「「ほんとか!? ほんとにいないんだな!?」」」
マナが大きく何度も頷く。
「うん! うん!」
里の数人の男達は冷や汗をかいていた。
その後、里の中心の広場に宴の準備がされ、里を上げての宴が夜遅くまで行われた。
夜が明け、お昼前にケンオウと三権が三権の間に集まり話が始まる。こういった場合は賢老と賢王が主体になっる
「では話を訊こか賢王よ」
「はい――では世界は七英雄の国により統治され数十年経ちました。その七ヶ国を見て回りましたが、酷い有り様で、貧富の差が激しく、旧国王軍との戦禍も残りその上、魔物の被害があり世界は、魔王が討ち滅ぼされ前よりも酷い状態とも言える――」
現在の世界情勢、国々の状態を細かく話すケンオウ。そして、一通り聞いた三権は。
「そうか、こうなる可能性は有った上で、各国に書状を出したのだが無意味じゃった。七英雄の力の前では国も、わしらがケンオウだった時は無力じゃった。――して、お主ら現ケンオウからして七英雄には勝てそうか?」
賢王は首を横に降る。
「それは無理かと思われます」
「理由は?」
「この目で七英雄を見てきましたが、力が強すぎる。今は七人別になり集まる事は無くなり、一人ずつならと考えたが、七英雄の力が異能で、我々に勝てる要素が無く感じます」
やれやれっと言った感じで賢老が言う。
「七英雄は魔王を討伐するためだけに、異世界から召喚した者達で、それぞれ異能を持つ。だが国を持ちバラバラになった今ならと考え、ケンオウに見立ての為に国を回ってもらったが、やはり無理か」
「やはり、還す方法を探すしか手立てはないと思います」
「確かにそうなるが、そのためには、どのような召喚魔法かを知る必要があるが、肝心の召喚魔法を使った国は滅び、召喚魔法の詳細が不明なのだ」
「ならマナを召喚魔法を行った地に行かせ、何か手掛かりでも見付けるのはどうかと?マナなら一度見聞きした事は忘れません。適任かと思いますが!? 勿論、我々ケンオウも同行する」
険しい顔で賢老が答える。
「それは駄目じゃ! あやつはまだ、憎しみに囚われておる。その状態で里を出て今の世界を見たら、暴走する」
「そうならない為に、我々も同行するのです! それに万が一……それは絶対無いですが、マナ自信で身を守る必要っとなっても、マナの技は里の中での人並みですしその上、銃を扱えます。銃の扱いは里一番とも聞いております」
「身を守れる理屈で、里から出しも良いと理由にはならん! 論点をずらすな。それに、マナを死なせたいのか?」
賢王は顔を曇らせる。反論をしようとしたが、グッと堪える。
「――わ、わかりました。里で魔法に秀でた者を数人つれて召喚魔法を行った地に赴き調査します」
「うむ、調査隊のメンバーは此方で選定しておく、それと里の外の状態と調査の話はマナには秘密じゃ!」
話し合いは終わり扉を開かれると、マナがお昼の準備を終え話し合いが終わるのを待っていた。
「話し合いは終わりですか? お昼の準備は出来てます、皆で食べましょう」
「「「おーマナの手料理!」」」
「昨晩は皆もいたので、ゆっくり話が聞けませんでした。なので、外の話を聞かせてください」ニコ。
「「「お、おぉう……」」」」
マナとケンオウは食事をしながら、当たり障りの無い外の世界の話をしていたが、マナが微笑みながら言う。
「兄様達は、私に何か隠し事ですか? まるで、お師さま達に口止めされたような感じますね?」ニコ。
「「「そ、そんな事は無いぞ……料理美味しいなー」」」
「そうなんですか? てっきり私は、里の外は異世界人が好き放題やって無法地帯になって、旧国王軍との戦禍残り世界が混乱していて、異世界人だけでも、どうにかしようと考えたが、兄様達では太刀打ち出来ないから、異世界人を還す事にし、そのために召喚魔法を調べる為、調査隊を編成する話が聞けると思ったのですが!?」
拳王と剣王が驚きながら言う。
「「――き、聞いていたのか?」」
二人を止めるように賢王は言うが。
「馬鹿、お前ら……」
「いいえ、冗談で言っただけですよ。まさか、本当だったとは思ってもいませんでした」
ケンオウがあちゃーって顔をする。マナは瞳を潤ませ言った。
「勿論、調査隊に私も連れってもらえるのですよね? 置いてきぼりされるなら、私は兄様達を嫌いになります!」
「「「うぅぅーーーー」」」
賢王が弁解とばかりに言う。
「わしはマナを連れていくっと主張はしたぞ」
「兄様、過程を仕事にしてはダメですよ。結果を仕事にしてください。主張だけなら、里の五歳児でもできます! でないと私、兄様達を……」
「ま、待て! 実はだな食事の後に再度、三権にマナの同行の許可を貰うための話をしようとしてたんだよ! な、拳王!? な、剣王!?」
「「そ、そうだよー」」
微笑むマナ。
「そうだったんですね! 早とちりして、ご免なさい」ニコ。
「「「お、おぉう……」」」
食事を終え、ケンオウは三権の間の前に来ていた。そして、意を決して扉を開け賢王が言う。
「失礼します。調査隊のメンバーですが、マ――」
「駄目じゃ!」
言い切る前に賢老が答えた。
ケンオウも此処で引いたら、我々に明日はないと考え食い下がる。
話し合いは、平行線を辿るなか剣王が提案した、三権がマナを試し合格を条件として話し合いが纏まった。そして、それぞれの思惑が交差する。
(これで、万が一連れていけなくても、マナに嫌われないで済む)
(これで、里の外に出さない理由ができた)
賢王がマナに報告していた。
「すまないマナ、後日、三権がお前を試し合格が条件になった」
「ありがとうございます。兄様達にしては、上出来ですよ! でっ三権は私に何を試されるのですか?」
「それが教えてもらえなかったが、無理難題ではないはずだ」
「そうですね、きっと私の精神を試しにきますね。憎しみにと復讐心で暴走しないかどうかとを」
――そして、試験の時が来た。三権の間にケンオウとマナは来ていた。
「マナよ、これから調査隊に参加に問題ないか試すがよいか」
「はい、よろしくお願いします」
マナの返事を聞き賢老は一つの箱を手渡した。
「それで、お主の心と精神を図る。その箱にスフィアを流すと反応し自ずと開く魔法道具じゃ、憎しみや憎悪等に囚われた者では開かぬ仕掛けじゃ。その箱を開けたら合格とする。但し、箱を開けられない場合は今後一切、里を出ることを禁ずる、よいな!?」
ケンオウが抗議する。
「「「不合格だからと言って、そこまでしなくても!」」」
「大丈夫ですよ、兄様開けられますから」
マナは微笑む。
拳王がマナに迫り言う。
「万が一開けられなければ、お前は里から一生涯、出れなくなるんだぞ!それなら、今回は諦めて……」
「兄様」と言って首を横に降り言う。
「今やらなければ、里を出るチャンスは有りません。このまま居ても、里から出してはもらえないでしょう。止めても失敗しても同じことなら、兄様が用意してくれた可能性に、私は賭けたいと思います」
拳王は言葉に詰まり返せないでいた。
賢老がマナに問う。
「始めるがよいか?」
「はい、始めます」
マナは目を閉じ両手で箱の底を持ち、持つ手に集中しスフィアを流す。すると、箱とマナが淡い光に包まれる。
「――声が聞こえる」
目を開けると私は森にいた。そして、姉と小さい私もいた……そう昔の記憶――
街が燃えているのが見える。
「マナいい!? 此処に居なさい。動いちゃ駄目よ! お姉ちゃんが戻って来るまで、此処で大人しく待ってて」
そいう言ってお姉ちゃんは街に向かったんだ。そして、私はお姉ちゃん言い付けを守らず、お姉ちゃんの後を追ったんだ。
『行くな! 行っちゃ駄目だ!』
私は叫んだ。
――お姉ちゃんは私を庇って。そして、お姉ちゃんの身体の下で、私は震え泣きながら動けずにいた。その中で、お姉ちゃんの温もりが消える感じと鉄臭い血が私の体を伝うのを感じていた。
あの時、お姉ちゃん言い付けを守っていたら、お姉ちゃんは死なずにすんだかもなど考える。
「そうよ!あの時、貴女が来たから、私は死んだ。だから、私の仇を討って。そして街の皆の怨みや無念を晴らして。マナにはその義務はあるのよ!」
「「「「怨みを悲しみを憎しみを晴らしてくれー」」」」大勢の声
『お姉ちゃんご免なさい。あの時、言い付けを守らないで追いかけて、ご免なさい』
涙が頬を伝う。――世界が軋み歪む。
『でもね、お姉ちゃんは言わない、私に仇を討てなど言わない。勿論、街の皆も!ま、数人はいるかもだけど。敵討ちは私の気持ちでケジメなだけで、憎しみが全部じゃないんだな。しかし、わかりやすい精神攻撃ですね。トラウマを抉るのが一番効率的だけど、それを知ってれば対象可能だし。この程度ならスペルハック使うまでもなかった』
――マナを包んでいた光にヒビが入り砕け散る。それと同時に箱が開く。
それを見ていた賢老が驚き。
「何が起きた? 何をした!?」
微笑みながらマナ言った。
「抉じ開けました」
「「「「「「抉じ開けた!(じゃと!)」」」」」」
「それに、開いたには変わりませんので、合格ですよね」
賢老は苦い顔をしなから合格を承諾するのであった。
「合格じゃ。――マナよ聞きたいことがある?」
「はい、何でしょう?」
「いつから準備をしていた?」
「あれ?ばれました?」
「ここ最近、違和感があったからな。なのでこの試験を設けたのだが、それさえも計算に感じてな」
「そうですね、準備は数年前からですかね。お師さまに拾われ、育ててもらった恩がありますから、里の掟を破ってまで外に出るのは忍びなく思い、里の掟を守り外に出る方法を考えましたよ」
――私が里を出るには三つ。
1、無断で出る。
2、ケンジャ、ケンオウになる
3、ケンジャ、ケンオウのお供
1は論外です。2は血が滲むほど努力しましたが無理でした。そうなると3しか有りません。
次の問題は、お供で着いていくとなると、必ず三権は反対すると思ってました。なので、反対を手早く説得するために試験が最適解と判断。
で、続いての問題は試験内容、私の有利な内容になるよう誘導しました。
ケンジャのお供の場合は、力が必要とのことで模擬戦の可能性が高く、三権が相手になると言った最悪な状態になります。なので、あまり力が求められないケンオウのお供なら心と精神面の試験になりやすいと思い準備しました。
後は、時期を待つだけです。
「――ま、魔法道具を出された時は、焦りましたけど、そのせいで準備していた精神のプロテクトとトラウマが無駄になりましたが、魔法道具ごときの精神攻撃では負けませんよ!」
それを聞いた三権は苦笑いしかなかった。