第一章~出会い~
この世には残念系と呼ばれる人がいる、夕里高校2年の桐島琥珀も残念系と呼ばれる男子高校生である。
琥珀はスポーツ万能、頭脳明晰、そして何より容姿端麗である、ではなぜ残念系であるのか、それは簡単なことだった、なぜなら彼は«オタク»であるのだ。
ん?」
ラフ猫はこんな話をしょっちゅう振ってくる
「こんなオタクが彼女なんてできるわけがないだろう、だいたいリアルの女なんてたかが知れてるし」
それにこういったくだらない話をしながらゲームしてる方がよっぽど楽しいしなと思っていた。
「ま、アンは残念系男子だしな!」
そう、何度も言うが俺は残念系らしいのだ。
キーンコーンカーンコーン、放課後のチャイムがなり、クラスの皆は部活やらで忙しそうに見えた、
「皆さん大変元気なことで、」
と俺は思いながら着々と帰る支度をしていた、その時
「琥珀~、遊びに行こうぜぇ!!」
と、声をかけてきた男子がいた、彼は大竹侑真といい、俺の親友である、
「めんどいからパス、帰ってアニメ見てゲームするわ」
「おいおいまたかよー、そんなんだから女子から残念系とか言われるんだよ、お前は」
「るせぇなぉ、とにかくパスだ」
「しかたねぇ、なら別の日な」
侑真が諦めた後、俺はすぐに家に帰った。
家に着いたらすぐPCを立ち上げヘッドフォンを装着し、ネトゲを始めた。ネトゲ仲間も既にインしていて通話しながら一緒にプレイし始めた、
そのネトゲ仲間はラフ猫と呼ばれており、俺とは付き合いが長くリア友でもある、俺はラフ猫にアンと呼ばれている(琥珀の英訳amberに由来)
「アン、ゲームしとる暇あったら彼女つくったらどうな
俺はリアルの女に興味が無い訳では無い、ただ理想が高いのだ、その理想の女とは身長155cm前後、胸は大き過ぎず小さ過ぎず、
黒髪セミロングの美少女、そしてなによりオタクであること、そんなのいないに決まってると思うかもしれない、実際俺も思っていた、そう彼女が現れるまでは、、、
「初めまして、私、桃瀬千早といいます。親の都合でこっちに引っ越してきました。これからよろしくお願いします。」
おれは開いた口が閉まらなかった。
クラスの連中は「かわいい~」「ちっさ~い」など言っていたが、俺は見逃さなかった。
彼女のカバンについているあのストラップを、、、
「え~それじゃあ桃瀬の席だが、、窓際の一番後ろの開いている席に座ってくれ」
「わかりました。」
その席は俺の隣だった。
こっちに歩いてくる、あのストラップが近づいてくる。
俺は目が離せなかった、そして彼女が真横まで来たことにすら気づかないほどあっけにとられていた。
「あの~」
「え。あ。はい!」
彼女に急に話しかけられて驚き、声が裏返ってしまった。
「わたしになにか?」
「あ、いえ、何でもないです。」
何でもないことはなかった、今すぐにでも聞きたかった、なぜ君があの「きせその」の限定ストラップをつけているのかを、、
「きせその」とは「季節の変わるその瞬間」といって二年前に放送されたアニメで、そこまで売れたわけでもなく、
まあまあマイナーなアニメだが、俺の一番好きなアニメなのだ。
「改めて桃瀬千早です。お隣同士これからよろしくお願いします。」
「桐島琥珀です、こちらこそよろしくお願いします。」
こうやって当たり前のような自己紹介だけをして、あっという間に放課後になってしまった。1
俺はいつものように帰ろうとしていた。だけど帰らせてくれなかった。どうしてもいま隣にいる桃瀬千早があのストラップを持っているのかがずっと気になっているからだ。
「桐島さんはなにか部活動でもされているのですか?」
急に桃瀬が話しかけてきた。
「いや?何にもやってないけど。」
「そうでしたか、なにか運動をなさっているように見えたもので。」
「よく言われるけど、俺あんまり動くの好きじゃないんだよねー。」
「そうなんですか?」
「うん、家でグダグダとアニメ見たりゲームしたりしてるほうが、あっ」
思わず言わなくていいことまでしゃべってしまった。別にオタクであることを隠しているわけではないが、今日あったばかりの人に言うことでもないかと思ったのだ。
「そうなんですかっ!、桐島君もオタクなんですね!」
「も?」ってことは、まさか、いやありえるか、だって彼女は、
「そのきせそののストラップ、、」
「きせそのを知ってるんですかっっっっ!!??」
ものすごく前のめりになって聞いてきた。顔が近い、、
「知ってるも何も、俺の一番好きなアニメだし、」
「そそそそうなんですか!?、わた、わたしも。」
「そんなに慌てなくてもww」
「だって初めてきせそのを知ってる人会ったので、すみません。」
「桃瀬さんって面白いねww」
「もーからかうのはやめてください!」
このあとも俺と桃瀬はきせそのの話で盛り上がった。
放課後を楽しいと思ったのは初めてかもしれないと俺は思った。