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ひきわり  作者: 夏乃市
第四章 八千穂事件
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八千穂事件 22

「チホ!」

 毅瑠の声に振り返ると、胸を血で染めた毅瑠がいた。

「毅瑠?」

「生徒たちの分を俺によこせ!」

 毅瑠の右手には、小さな白く輝く剣が握られている。あれは――剣〈髪逆〉と同じ? 今の今まで気配がなかった。いや、今でも気配はしないが――しかし、毅瑠が変わったことはわかった。自分と同じ気配がする。〈魂糸〉を使う者の気配だ。

 八千穂は即座に自分の髪を切った。鶴牧との闘いで、この髪が邪魔だと感じていた。毅瑠もそう見たに違いない。

「〈かみさか〉はそれで一対だ!」

 毅瑠が白い剣を投げてよこした。受け取って初めて、それが剣〈髪逆〉とついの存在であることが確信できた。これは、気配が内へと向いている剣だ。いったい、今までどこにあったのだろう――二刀で剣を振るいながら、八千穂は考えた。決して見てはいけないと言われていた神坂神社のご神体だろうか。

 鶴牧の攻撃には、体がほとんど無意識に反応した。しかも、奥義〈髪逆〉のくびきから抜けた。八千穂は幾分余裕を取り戻していた。

 鶴牧の〈魂の要〉は、やはり右目に違いない。ただ剣〈髪逆〉に耐性があるのだ。ただでさえ位置が違う。それ以外にも他と違いがあってもおかしくはない。

 ならばどうしたら良いだろうか。

〈魂糸〉が麻痺していなくても施術は可能だ。しかし、それは相手が大人しくしている場合に限る。これだけ抵抗されては、そう簡単にはいかない。

 ならばいっそ、物理的な打撃を加えてみようか。剣〈髪逆〉は物理的な攻撃を行うこともできる。しかし、鶴牧の〈魂糸〉攻勢の前に、打撃を与える間合いまで入ることができない。飛び込めたとしても、今度は殺さずに打撃を加えるのが難しい――

 やはりいつものやり方しかないか――と、八千穂は結論付けた。ならば、凌ぎきるしかない。そして、〈魂の要〉をもう一度貫く。何度でも、上手くいくまで――

「チホ! 二刀で使っちゃだめだ!」毅瑠の声がした。

「なに?」

「繋げて一本にするんだ!」

「繋げて?」

 一瞬気がそれたために隙ができた。躱し切れなかった〈魂糸〉に弾かれ、八千穂は舞台上に倒れ込んだ。

「どうした、終わりか?」鶴牧がほくそ笑む。

「まだ」

 八千穂は体を起こすと、舞台から飛び降りた。

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