表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひきわり  作者: 夏乃市
第四章 八千穂事件
93/106

八千穂事件 18

 金曜日。八千穂が、毅瑠が、綾音が、夏目が、それぞれに授業をサボった翌日。六時限目に緊急の生徒集会が組まれた。

 四月の〈銅像生け贄事件〉のときも、同じように緊急の生徒集会が開かれたことがあった。事件の噂話に拍車がかかり、八千穂に対する嫌がらせがあったことで、夏目がキレたのだった。

 しかし今回は、中途半端で終わってしまった始業式の続き、という位置付けだった。体育祭と文化祭について、生徒会からの説明が行われないままになっている。

 この日毅瑠は、朝からまじめに授業を受けていた。そして休み時間には、教職員たちへの生徒会からの連絡に奔走した。

 今回の生徒集会で、学園始まって以来の提案をします。是非、学園中の人に聞いて欲しい――

 今日も八千穂は登校していなかった。

 学園は穏やかで、何事もなかったように六時限目を迎えた。



「今日の集会は向井君の提案よ。だから、あなたに預けるわね」

 体育館の舞台袖に集まった生徒会のメンバーを前に、夏目が言った。

 始業式で伝え損ねた生徒会からのお知らせ、それは本来、わざわざ集会を開くほどの内容ではなかった。体育祭と文化祭の日程。それに伴う、準備や予行演習の日程。そして、各実行委員の紹介――その程度なのだ。後日プリントでも配布すればそれで終わってしまうような内容だ。

 毅瑠は昨晩、夏目に電話をかけた。そして、この臨時の生徒集会を開催したい旨を相談した。夏目は毅瑠の意志が固いことを確認すると、了承したのだった。

「一時間もやることがないぞ」道生が言う。

「連絡事項が終わったら、俺に任せて欲しい」

「神坂と鶴牧先生の件か?」と太一。

「はい」毅瑠が頷く。

「八千穂ちゃん、大丈夫かしら」希奈が心配げに呟く。

「今日も休んでいるのよね?」と綾音。

「鶴牧の奴許せないわ。あいつになら何をしても許す」と息を巻いたのは作。

「停学になるようなことは避けろよ」と締めたのが力だった。

 毅瑠は全員の顔を見回すと頭を下げた。

「一昨日は、戸時会長を含め、皆さんを信用していないようなことを口走ってすいませんでした。俺、話していないことがいっぱいあります。いつも助けてもらって、なのに全部一人で背負い込んでいるみたいな気分になっていて……これが終わったら、ちゃんと話します」

 ばんっ、と太一が毅瑠の背中を叩いた。

「話せないことぐらい誰にだってある。それに、男は細かいことは気にしない。一昨日のことだって、もう過去のことだ」

「私たちは女なんですけど」

 作が突っ込み、どっと全員が笑った。

 ぱんっ、と夏目が手を叩いた。

「さ、始めるわよ」

 毅瑠はもう一度深く頭を下げると、ゆっくりと舞台へと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>現代FTシリアス部門>「ひきわり」に投票
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ