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ひきわり  作者: 夏乃市
第三章 夢喰い事件
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夢喰い事件 8

 日はとっぷりと暮れていた。夜の神社には特別な雰囲気がある。暑さに紛れて、暗がりから何かが湧いて出てきそうだった。

 神坂家の居間で、毅瑠は小さくなって座っていた。目の前には弦悟と八千穂がいる。今、七穂が麦茶を出してくれたところだ。

 弦悟は腕組みをして毅瑠を見据えている。しかし、まだ一言もない。八千穂は途方に暮れている。携帯電話で八千穂に呼び出された毅瑠もいわんや、である。

 見かねた七穂が口を開いた。

「あなた。向井毅瑠さんよ」

 毅瑠はとりあえず頭を下げた。八千穂と知り合って四ヶ月以上経つが、父親の弦悟に会うのは初めてだった。弦悟はむっつりとしたまま頷き、麦茶に手を伸ばした。しかし、相変わらずの無言。

 また沈黙。そして――

「まだ子供のこと心配している」

 ぼそっと八千穂が呟いた。

 不意を突かれた弦悟は盛大に麦茶を吹き出し、咳き込んだ。

「ば、馬鹿! 何を言い出すんだ」

 さっきまでの威圧感はどこへやら、弦悟は慌てふためいた。

「あなた」

「な、なんだ?」

「そんな馬鹿な心配をなさっていたんですか?」

「馬鹿とはなんだ! お前がボーイフレンドなどと言うから……」

 呆気に取られている毅瑠に、七穂が言った。

「みっともないところをお見せしてごめんなさいね。この人、向井さんに焼き餅を焼いているのよ」

「はあ……」

「大方、ボーイフレンドと聞いて、短絡的に孫の心配でもしたんでしょ」

「まご?」

 今度は毅瑠が慌てた。八千穂を見て、見る見る自分の顔が赤くなるのを自覚する。そんな毅瑠の様子を、八千穂は小首を傾げて眺めていた。

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