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ひきわり  作者: 夏乃市
第三章 夢喰い事件
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夢喰い事件 プロローグ

 彼はそこをよく知っていた。

 いつも、姉や友人たちとの待ち合わせに使っているからだ。

 しかし、今日の待ち合わせはいつもと違う。今日は特別な日だ。

 広場の時計を見ると、ちょうど待ち合わせの時間だった。でも、待ち人はまだこない。いいのだ。彼女はいつも十分ほど遅れてくるのだ。

 ――いつも?

 今まで、彼女と待ち合わせたことがあっただろうか?

 彼は思い出せなかった。でも、気にすることはない。これから、楽しいデートが待っているのだ。

 まず、この駅前広場の噴水前で待ち合わせ。

 彼女は十分ほど遅れてくる。真っ白なワンピースと、麦わら帽子、籐のバスケットで駆けてくるのだ。

 それから、映画を観る。映画の後は、公園で彼女の手作りのお弁当を食べる。午後はウインドウショッピングを楽しんで、夕暮れ時には海が見える公園へ。二人はいいムードになるのだ。

 彼は時計を見た。待ち合わせの時間から九分が過ぎていた。

 駅の改札から人がはき出され始める。あの中に彼女がいる。そうだ――彼女は遅刻は九分だと言い張り、自分は十分だと主張する。

 白いワンピース姿が駆け寄ってきた。

 ――ごめんなさい。九分の遅刻ね。

 ――大丈夫だよ。でも、遅刻は十分だ。

 ――細かいのね?

 ――細かいのは君だろ?

 二人は見つめ合い、笑った。

 空は一点の曇りもなく晴れ上がっている。

 彼女との初めてのデートは、きっと絵に描いたように楽しいに違いない。

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