テレパシー事件 13
毅瑠が生徒会室に戻ると、全員が自分の仕事をしていた。生徒会の面々は切り替えが早い。ねちねちと引っ張るような人間はいなかった。
「毅瑠。例の物、何とかなりそうだぞ」
そう言った道生の手に、何枚かのコピーが握られていた。
「三年生で、去年蛯原先生に教わった人にあたってみた。それがこれだ。卒業生にも何人か声をかけて調べてもらっている。覚えがあるらしいから、週末にはもう少し増えると思うよ」
「よく残ってたな」毅瑠は道生からコピーを受け取った。
「ノートやプリントを捨てずに取っておく人、結構いるからな」
「俺は捨てちゃうけどな」
「俺もだ」
わはははは、と二人して笑い、毅瑠は小さくガッツポーズをした。
「よし。これで何とかなりそうだな」
「落とし所が見つかったの?」
夏目が話に加わる。
「蛯原先生と、二年C組の生徒には別の回答を提示します」
「なるほど……」コピーの束を手に、夏目は納得した。「蛯原先生は、こっちの線で行けばなんとかなりそうね。でも、生徒たちはどうするの? 口裏を合わせさせるわけ?」
「そうですね。でも、それだけじゃあ納得……というか、満足しないでしょう。そこで、チホ……いや、神坂さんの出番です」
「八千穂ちゃんの?」
「彼女、神社の娘なんですよ」
「まさか、神坂神社?」と割って入ったのは作だった。「知ってるわ」
「ええ、そうです」
「つまり……祓うってこと?」と夏目。
「二年C組の事件はマスコット人形の呪いでした。だからお祓いをして終わりにしましょう。……科学的ではありませんけど、一区切りつけるにはいいですよね。四月の事件のときも、結局最後はそういう感じで終わったわけですし」
「ふーん」
今や生徒会室の全員が毅瑠の話を聞いていた。
「当然ですけど、当該の生徒たちが〈人形の呪い説〉を信じていればいるほど、結果も良好になるわけです。ということで……皆さんに、仕込みをお願いしたいんですけど……」
その後、毅瑠の計画を聞いた面々は、誰もが口をあんぐりと開けた。
「上手くいくかしら」と夏目。
「結果は百パーセントじゃなくてもいいんです。でも、悟られるのだけは避けたい。決行は来週の月曜日。面倒ですけど、あと三日で、この仕込みをお願いしたいんです」
誰もが押し黙った。不可能ではない――でも、大変だ。
「なんだ、みんなして額を付き合わせて」
扉を開けて、太一と希奈が入ってきた。風紀委員の委員会に参加していて、今戻ってきたのだ。
「二人とも、ナイスタイミングね」と作。
「?」
夏目が顔を引きつらせながら二人に言った。
「面白い報告と、大変な報告とがあるの。どちらから聞きたい?」




