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ひきわり  作者: 夏乃市
第四章 八千穂事件
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八千穂事件 27

 八千穂が途方に暮れた顔をしていた。

「ひとりひとり施術するのは無理だよ。まとめてやろう。最初からそのつもりだったんだから」

 毅瑠には、それができる確信があった。確信の元は、奥義〈髪逆〉に込められた〈霊鬼割〉たちの〈魂糸〉だ。

「チホの〈霊鬼割〉の力。俺の〈夢飼い〉の力。そして、この剣の力があれば大丈夫だ」

 八千穂はまだ半信半疑の顔をしていたが、それでも頷いた。

「施術の前にきめなくちゃいけないことがある」

「何?」

「みんなの記憶をどうするか」

 八千穂の表情が強ばった。

「俺の力は人の記憶を操る。たぶん、今回の記憶を消すこともできるし、残すこともできる。始業式でのチホのことも、全員の記憶から消すこともできる」

 口には出さなかったが、全員が八千穂の友達だ、という記憶を植えることもできるだろう。しかし、それは八千穂が望まないだろう。

「俺としては、細かなことは消して、チホに助けられたって記憶だけ残すのがいいと思うんだが」

 八千穂は首を振った。

「今回みんなが見たことは普通のことじゃない。でも……消してしまうと、記憶や意識に障害が出るかもしれない。だから、夢だったことにできないかな」

「夢ね。〈夢飼い〉の真骨頂だ」

「でも……」

「わかってる。生徒会のみんなの記憶はいじらない」

 八千穂はほっとしたように頷いた。

「じゃあ、やるか」

「あ、待って」

「?」

「あのとき、毅瑠は鬼に何をしたの?」

「全員の意識を、俺経由で鶴牧に繋いだんだ」

「全員の?」

「そうだ。ここにいる全員が、チホを応援していたからね」

「あ……」

 八千穂が驚いたような顔をした。何かに耐えるように、唇をかんで下を向く。

「チホ?」

 八千穂は小さく何度も首を振ると、始めようと言った。

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