第五話 明香転入する!
毎朝、ベッドに忍び込まれて起きて学園にいくのがもう習慣になってしまった秀久。
そんな中でも夕べのことが思い起こさせる。
もうわけがわからなくてこんがらがるとはこのことなのかもしれない。
そんな、時に教師で美人で有名な椎名さんが教卓の前にたち、全員を見て口を開く。
「はい、静かにしてね! 今日は転入生を紹介するわ! 入ってきて!」
「ハイ!」
そう声をかけると秀久には聞き覚えのある声が聞こえてきて教室へと入ってくる。
リコと同じ制服で歩くたびにアホ毛が揺れているが気にしない。
『おお~~~!!』
男子たちから歓喜の声があがり、秀久はずっこけそうになる。
「HA-型じゃなくて吉川明香デス! ミナサン! よロしクお願いシマス☆」
と、言いながら笑顔で自己紹介をする。
普段の彼女にぼへーと見とれてしまうのは秀久も同じであった。
親しみがあるというのが今の彼女にはあるからなのだろう。
『外人さんだね~!』
『男子たちが騒ぐのもわかるよね~』
とわいわいと騒ぐ女子も明香を見ている。
「それじゃあ、席は」
「センセイ! カミオイ ヒデヒサの隣がいイです!」
きょろきょろと周囲をみて言うと明香は笑顔で指名する。
すると、教師はちょっと難色をしめす。
よけいなひどい知識を与えないか心配なのだろう。
「上狼くん、わかってると思うけど。 変な知識だけは教え込まないでね?」
「あ、はい」
先生に睨まれて思わずうなずく秀久をよそに嬉しそうに近寄り、隣に座る明香。
「エヘヘ♪ こレでクラスメイトですネ☆」
「ちょ、そんなにくっつくなよ」
『おのれ上狼!』
『俺たちの天使を独り占めするなんて!!』
『なんて羨ましいんだ!!』
ぴっとりとくっつく明香に困った顔をする秀久。
リコの視線が気になり、見てるとにこにことこちらを見ていた。
それを見て落ち込む秀久を不思議そうに見つめる明香。
あと、そんな秀久をみてひがむ男性陣がいたのはいうまでもないだろう。
それから昼になると、屋上にちょっぱやで向かい明香に問いただすのだった。
なんでここに来たのかとどうやってクラスメイトにまぎれこんだということだ。
「優しいコーチョー先生がしテくレまシたヨ?」
「あの校長~~~~っ!!!」
きょとん、と頭をかしげて答える明香に頭を抱えるのであった。
「そンなコトよリ! ヒデは自分の危機をリカイしテまス?」
弁当を広げながらじと目で見つめる明香。
それを言われて視線をそらす秀久にため息がもれる。
「ワタシたちはイチレンタクショーなンでスよ! ヒデになにカあれバ心配ニなリます!
だカらセンニューするコトにしマしタ! こレなラヒデを守れマス!!」
「自分のことなら自分で守れるって」
「ワカッテまセん! 相手はフツーのヒトじゃナいンでスよ!」
にこにこ笑顔で胸を張る明香につづいてぽよんと胸が揺れる。
秀久は自分のことは自分でできるというと怒った顔でいましめる。
「ヒデはもうワタシの契約者なンでス。 だカら狙わレることは間違いナイでス」
拳をつよく握ってそう話す明香。
それはとてもまじめな顔であるのは理解できる。
「だから、この契約をキレば!」
「ダメです! そレだけはダメなンでス!! ワタシが嫌なダケじゃナくて、つながりヲきリたクないデす!!」
秀久が首輪をつかみながら言うと同じく首輪につながっている明香は頭を振って拒否する。
それはもうかたくなに。
「明香……」
「イマのワタシにデきルことは精一杯シマス。 不甲斐ないデす故障品でスけど」
じっと見つめて困ったように笑い、卑下する彼女は弱弱しい。
「なあ、あの時のはいつも出せるわけじゃないのか?」
「あれハ、必要な時ニだケでス」
秀久の問いに明香はお茶を注ぎながら手渡す。
「必要っていうと、あいつらみたいな?」
「………そう、デスネ」
秀久の再びの問いに困った顔でうなずいた。