表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/58

第三章 真夏の夜の悪夢〈31〉

挿絵(By みてみん)


「あの、よくわかりませんけど、すいません。トマトさんって睡眠時間けずられるとスッゴク不機嫌になるものですから……」


(なんだそりゃ?)


 意味不明の弁明にあきれる雷華(らいか)を尻目に千草が疑問をかさねた。


酒真里(しゅまり)って人は、国家の密命をうけてうごいていると云っていました。陰陽師……陰陽局は酒真里(しゅまり)とあなたたち、どっちについているんですか?」


「国家の密命? シュマリのヤツ、大きくでたな。本気にするな。そんなのただのハッタリさ」


 十一御門(といみかど)当麻斗(とまと)酒真里(しゅまり)大言壮語(たいげんそうご)一蹴(いっしゅう)した。


「国も陰陽局も彼らとは無関係です。朱都理(しゅとり)酒真里(しゅまり)のバックにいるのは〈赫砲(せきほう)隊〉。ごく少数の過激派にすぎません」


赫砲(せきほう)隊〉は戦術的呪術研究をおこなっていた旧陸軍の残党によって秘密裏に結成された数十人規模の狂信的集団である。


赫砲(せきほう)隊〉には「積極的平和主義」をかかげる政府与党・自由民政党議員や宗教関係者も属していると云う。酒真里(しゅまり)は〈赫砲(せきほう)隊〉へ与する政治家をさして「国家の密命」と(かた)ったのであろう。


 敵である酒真里(しゅまり)の組織が小規模で、国や陰陽局とのつながりもないと知って、退儺師(たいなし)たちはひとまず安堵(あんど)した。


「さっき蕨生(わらび)山周辺をかぎまわっていたシュマリの手先から押収した武器だ。わかるか?」

 当麻斗(とまと)から手わたされた拳銃に雷華(らいか)が顔をしかめた。


〈シグ・ザウエルP220……じゃねえな?〉


「シグ・ザウエルP226。かつて数年度にわたって国が調達した機種不明とされる拳銃がこれだ。それが〈赫砲(せきほう)隊〉へ流れているってコトは、小規模組織とは云え、けっこう根がふかいかもしれねえ」


 ザウエル&ゾーン社製のシグ・ザウエルP220であれば自衛隊装備だが、これは型番や仕様が異なる。アウトレイジ御用達のトカレフみたいに素人(しろうと)がやすやすと国内へもちこめる代物ではない。


赫砲(せきほう)隊〉関係者が国家の中枢に巣くっている可能性もあると云うことだ。


「アハン。……で、だれの意向をうけてうごいてるわけ、あんたたちは? 陰陽局直属ってわけじゃないんでしょ?」


 雷華(らいか)の疑念を真知保(まちほ)が陰陽師たちへ通訳した。


「お察しのとおり、私ら〈十一御門(といみかど)機関〉は独立愚連隊さ。陰陽局は関係ねえ」


 当麻斗(とまと)がこたえた。


「私の祖父・十一御門(といみかど)刻仁(ときひと)は〈905〉さいごの所長だ。遺言は「〈905〉のすべてを闇にかえせ」〈十一御門(といみかど)機関〉はそのためにうごいている」


「ちょ、ちょっとなにそれ? 消すってこと? 私たちも?」


 狼狽(ろうばい)する真知保(まちほ)当麻斗(とまと)がくちびるを小さくゆがめて笑った。


「お望みなら、な。だけど、おまえら退儺師(たいなし)が私らの敵にまわるとは思えねえ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ