表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/58

第二章 海と登り窯〈13〉

挿絵(By みてみん)



     7


 女子たちのカメラマンに(てっ)した明宏が詩緒里へスマートフォンをかえすと、千草がこっそりちかづいてきた。


「明宏ク~ン。はいこれ」


 千草が明宏へ手わたしたのは彼女のスマートフォンだった。


「なにこれ?」


 意味がわからず首をかしげた明宏へ、千草が悪代官の笑みをうかべた。


「さっきの話、のった。これでアスカの水着姿をじゃんじゃか撮りんさい。夏休みあけにクラスで売りさばけば、私たちちょっとした小金もちよ。大丈夫、分け前は6・4で手を打とう。私が6。明宏クンが4」


「……自分でやりなよ」


 明宏があきれて肩をすくめると、千草が抗弁(こうべん)した。


「私は目が見えないから、明宏クンに頼んでんじゃん」


「目の見えないことをたてにして、悪事の片棒をかつがせようとするなっ!」


「おやおや? 明宏クンはアスカの水着写真、ほしくないのかな~?」


「え? いや、それはその……」


 思わず赤面して動揺する明宏へ女悪魔(メフェストフェレス)がささやきかける。


「きっとアスカも明宏クンになら撮ってもらいたがると思うんだけどな~」


 もう一押し、とばかりにたたみかける千草の背後へ影がさした。


〈……チ・グ・サ・ちゃん〉


 水着の上からパーカーをはおった明日香が、こめかみにブッ太いドラゴン怒りの血管をうかびあがらせながら立っていた。


「おりょ? どどど、どったのアスカ?」


 背筋の凍るような明日香の気配に気づかぬふりで千草がたずねると、明日香の〈念話〉が冷淡にこたえた。


〈……千草ちゃん。いつものくせで〈念話〉だだもれ〉


 退儺師(たいなし)として明日香や明宏とチームを組む千草は、つねに自分たちの会話を明日香で〈念話〉で中継する習慣が身についている。そのため、千草のよこしまなくわだては、まるっと明日香へ筒ぬけになっていた。


「たはっ! ぬかった、しくじったああっ!」


〈千草ちゃんっ!〉


「たは~っ! ごめんアスカ、冗談だって!」


〈ゼッタイ、うそ!〉


 いきなり追いかけっこをはじめた千草と明日香の姿に詩緒里が小首をかしげ、明宏がヤレヤレと嘆息(たんそく)した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ