ノーマルエンド
「桜くん、おはよう」
私は仏壇の前で手を合わせた。
「利ー沙ー速くー」
「うん」
毎朝元気な友人の声に苦笑しつつ、鞄を持って玄関まで行く。
「あら、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
今日も、私は元気に学校へ向かう。
―あれから二年経ち、私と美希は大学生になった。
桜くんが消えてからは死んだように過ごした。一時は本当に死にたかったが、それでも大学まで行けたのは一重に事情が分からずも支えてくれた友人や家族のお陰だ。皆辛抱強く待ってくれた。弟が泥だらけの花―嫌がらせとも取れるからやめたほうがいいと思うが―を部屋の前にこっそり置いていくのを見たときは思わず泣いてしまった。それに、私が死んだら桜くんはきっと悲しむのだろうなと思ったから。そう言えば、あいつも励ましてくれたな。「辛かったら俺のところにこい」「あんな男、忘れろ」「やっとお前の良さに気がついたんだ」「だから、付き合ってやるよ」……やはりクズはクズか。あの男への気持ちは多分恋ではなかった。あのようになりたい、そういう憧れだろう。桜くんが本物の初恋の君だったのだろうな。
「利沙ー?今日合コンにこない?」
「いや、私はいか…いや、やっぱり行く」
「え!?マジで!?利沙最近表情がちょっと出てきたから絶っっ対モテるよ!じゃあ連絡しとくね!!」
私はいつもにも増してハイテンションな美希に苦笑し、夕暮れ色に染まった空を見上げた。
―さようなら、私の初恋―
すいませんごめんなさい許してください。最後のがやりたかっただけです。




