08:魔法
実は書きためとかなく全部リアルタイムで書いているのです。
魔道具で火をおこし、鍋に魔道具で水を張り、おっちゃんはてきぱきとシチューを作る。調味料とか出汁とか関係ない、適当にぶっ込むまさに男の料理だった。
灰汁が酷かったがシチューはなかなかの味だった。しかしこんなことならインスタントラーメン持ってくればよかった。カレールウとかも持ってきてたのにおっちゃんの家にナイフと携帯以外みんなおいてきちまったからなぁ……
「俺が見張りをするからおまえは先に寝てていいぞ」
「わかった」
地面が固いがマントを下に敷き、バッグを枕にして俺は寝ていた。ちなみに特に描写はなかったがマントはずっと付けていた。旅の必須アイテムらしい。
元々俺は小さい頃はどんな状況でもどんなとこでも寝られる子供だった。うちの父親はまだ小学校にあがったばかりだった俺をつれてよくパチンコに入り浸たっていた。俺はそんな状況でも普通にパチンコ屋で熟睡していた。それが今では枕がないだけで寝付けないとは弱くなったものだ。遠い過去のことを思い出しながら俺の意識は遠のいていった。
「おい、起きろ、交代だ」
声を掛けられて俺はすぐに起きあがる。なぜか俺は人に起こされた場合の頭の覚醒がすこぶる早いのだ。これが自分自身で起きた場合はあと5分モードが発動してなかなか起きることができない。
「火は絶やすんじゃないぞ」
「わかった」
そういっておっちゃんと夜番を交代する。夜の森は薄気味悪くてなかなかに怖い。木と木の間の真っ暗な空間に人の顔とか浮かんできたらどうしようとか考えたら超怖い。なんてことを考えていたらなんか光るものが見えた。とっさに構えて様子をうかがう。それはどんどん数を増やしていく。
「おっちゃん!」
叫ぶとおっちゃんはすぐさま飛び起きた。
「ウルフか?」
暗くてわからないがどうやら狼っぽい。以前倒したフォレストウルフか。ちょうどいい、攻撃カードの実験をしてみよう。そして懐からカードを取り出す。
「ナンバー100セット!」
No100C:火球投射 火の玉を発射する。
ちなみに叫ぶときにナンバーなんていわなくてもいいみたいだが100だとなんかゴロが悪そうなので付けてみた。
目の前に火の玉が現れる。おおっ魔法だ!などと感動してたがなんかだんだんおかしなことになってきていた……火の玉がどんどん大きくなっていきそれが止まらないのだ。直径10m程の超巨大火球になったあとそれは飛んでいった。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
全てをなぎ倒し、燃やし尽くしながら……遠くからまだなんかまだ轟音が聞こえてくる。後ろを振り向くと顎がはずれんばかりに口を開いておっちゃんが唖然としていた。
「なんかやりすぎちゃった!てへ♪」
「てへじゃねええ!!どうすんだこれ!!」
「だいじょうぶ、生木なんてそうそう燃えないから!」
「そういう問題じゃねええええ!」
なんかメラだと思ったらメラゾーマだったようだ。実際は今のはメラゾーマではない。メラだ! 状態なんだが。どこかの大魔王様もびっくりだ。あーこれが魔力補正ってやつかとなんとなくわかった。しかし一番弱いのでこれじゃこれより上のやつとかあったらおっかなくて使えねえよ。10発も撃ったらここ更地になっちまうぞ……
「はぁぁ……おまえは規格外にも程がある。人前でこんなの絶対使うんじゃねえぞ。ましてや絶対人に向けて撃ったりするなよ」
「まぁよっぽど俺を怒らせない限りだいじょうぶだ……と、思う」
「絶対おまえは怒らせないようにするよ」
「まぁ安全になったことだしまた寝たら?」
「もう目が冴えちまって寝れねえよ…」
しかしこれは他のカードも一回テストしておいた方がいいな。
「展開!」
デッキを開きそこから1枚のカードを取り出す。
「ナンバー104セット!」
No104C:光源作成 明かりをつくる。
頭上に1mくらいに10cmくらいの光の玉がでてきた。しかし先ほどの火の玉のようにだんだんと光が強くなっていく。
「まぶしっ!」
「うおい!! なんだこれわ!」
その一帯だけまるで昼になったかのように明るくなってた。暗くなれと念じてみるとどんどん暗くなっていく。どうやら意志で操作可能なようだ。5分程掛けてようやくちょうどいい明るさになった。
これはさっきの火の玉も調整できたということか。なにも考えないと最大級になってしまうと…これなら攻撃カードも調整すれば十分使えるな。上に上がれと念じると光の玉はどんどん上昇していく。おおっ結構使えるんじゃねこれ? 50mくらいあがったところで強く光れと念じると完全に昼間のようになってしまった。
「……」
「どったのおっちゃん?」
「もうなんていっていいのかわからん……」
あまりのでたらめすぎる能力におっちゃんは心底疲れたようだ。明るくなったところで火の玉が通過した所をみてみる。
「うはぁ……」
火の玉が通過した場所の土がえぐれて遙か先までつづく道ができていた。終わりは見えない。木々は所々焦げているが燃えてはいないようだ。
「なんか道できちゃったね!」
「できちゃったねってお前……」
たしかこの道の方角は最初に来た方向なんでこの道を伝っていけば森をでれるな。
「木々をかき分けなくてもネギのあるここにこれるし、これで今度から採取が楽になるね!」
「木々をかき分けるっていうかもう直接馬どころか馬車でこれちまうだろこれ……」
「明日の帰りは楽になるね!」
「もういいよ……」
そういうとおっちゃんは疲れ切った顔してこちらをみていた。が、しかし数瞬後にすぐさま険しい顔をして後ろを振り返った。
「気をつけろ! でかいのがくる!」