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ワールドオーダー  作者: 河和時久
パトリア編
65/70

64:流水行雲

帝国の兵を一蹴したキッド一行は子供達を鍛えつつ、ついにパトリア王都へと到着し、ドクはついに家族との感動の再会を果たす。

王都に到着したキッドは長期間依頼を行っていないことに気づきギルドへと向かう。

そこでアイリ達もついでとばかりにハンター登録を行い、パーティーメンバーでクランを作ることとなった。

ここに世界でも類を見ない程、過剰な戦力を持つクランが誕生する。

 試験会場を後にした俺達は受付に戻り、早速クランを作成することにした。クランとは所謂メンバーの集まりである。ハンター用語でいうと実際に狩りや依頼に出かける時のメンバーをパーティーと呼び、同じリーダーの下に集まったメンバーをクランと言う。ゲーム等でよくあるが、やってない人にはわかりにくいかもしれない。まぁ小さな会社というかそういう感じだ。要は会社がクランでパーティーはその中にあるプロジェクトチームみたいな関係と考えるとわかるだろうか。


「それではこちらの用紙にご記入願います」


 そういって受付嬢から用紙を渡された。中を見るとまず最初の記入部分から書くことができなかった。


「クラン名か……何かいい案はあるか?」


「私はご主人様にまかせます」


「私もキッドさんに」


「旦那のクランなんだから旦那が決めるべきだろ」


 一応、聞いてはみたがやはり俺に命名権があるらしい。しかし一体どんな名前がいいものか……。今まで聞いたことがあるクランといえば、ドクが以前いた吹きぬける風。それとやたらピーキーな弓女がいた所……なんだったか、たしか栄光の道だったか? その二つくらいしか覚えていない。やはり普通は行動指針やメンバー、目的なんかからとった名前にするんだろう。そう考えると俺の行動指針は……一言でいうなら自由気まま。風に流れる雲のように自由でいたい。となると行雲流水……そのままだと捻りがないので反転しようか。


「流水行雲……でどうだろう」


「どういう意味だ?」


「空を流れる雲、川流れる水のように自然の成り行きに任せて行動すること……かな」


「何物にも縛られず自由にってことか。旦那らしいな」


「私もいいと思います!!」


「さすがご主人様、すばらしいお名前です!!」


 何故か大絶賛だ。ということで俺達のクランは自由に生きるを主な目的とする『流水行雲』となった。メンバーは今日試験を行った者にドクとミルと俺の3人を加えた6人だ。ちなみにミルは元々ずっとソロだったらしい。魔物退治というよりは遺跡巡りのトレジャーハンターといった感じだったそうなので、特にソロでも問題がなかったようだ。このクランのメンバーだと戦力的に役に立たないんじゃないかとミル自身は懸念していたが、パーティーメンバーに斥候職が居ると居ないのでは、安全度が全く違うので是非にとお願いしてメンバーになってもらった。未だに俺はカードの能力無しでは気配を探る術においてミルの足元にも及ばないのだ。

 

 とりあえず今はクランを作るだけで、依頼の方はまた明日から受けることにして今日の所はドクの家に戻ることにした。帰り道。馬車の通りが多くて行きには気がつかなかったが、大通りの反対側にギルドも真っ青な大きな建物があるのを発見した。何の気なしに視線をやると、ちょうどその建物から2人の男が出てくる所で、そのうち目つきの鋭い男の方と偶然目があった。そいつは今まであった人間の中でも、ダントツにヤバい気配を纏っていた。ついこの間、戦った帝国のやつらなんかの比ではない。強さ的な気配というよりも……一言でいうならやはりヤバいという言葉が思い浮かぶ。何がヤバいのかはわからない。だが奴は危険だと肌が、本能が感じる。

 

 実際には数秒だろうか。だが感覚では数十分、数時間、お互い立ち止って睨みあっていた。馬車が間を通ったことによりお互い視線が逸れてそれまでとなったが、あのままだと何も理由が無いままバトルが始まったかもしれない。

 

「あいつらは……」


「知ってるのか雷で……ドク?」


「雷? あいつらはラトロー奴隷商会の頭とその護衛だ」


 ラトローといえばたしかコウ達を買った奴隷商会だったか? 帝国の関与があるんじゃないかと疑っていた所だが……。あの2人はどう考えても唯の商人なんてものじゃない。どちらかというと血で血を洗う戦場にいたという雰囲気を纏っていた。一般人の俺からしてここまで感じとれるヤバい気配なんて相当だろう。特に俺と睨みあっていた目つきの鋭い方は、殺し屋といっても違和感が感じられないくらいだ。というか護衛というより殺し屋じゃないのかあれ? 極自然な動作に全く隙を見せないその姿は、戦闘中のドクに近しいものを感じさせる。ああ、そういえば前身は盗賊団だったか。団ごと雇われたのか、元々そうだったのかはわからないが、別にどうでもいいことだろう。結果は同じだから。

 

「2人ともかなり強いな」


「ああ」


 レアンの呟きにドクが頷いて答える。頭ということはつまり奴隷商会のトップ。それならもっと護衛が居てもいいはずなのに、実際には1人だけ。それは裏を返せば襲われてもあの男1人、もしくは自身を含めた2人で十分に対処できるという自信の現れなのだろう。

 

 俺の勘だと商会は帝国とつながっている可能性が高い。調査するにもあいつらが相手では骨が折れそうだ。だが、この国から帝国の影を取り払わないと、獣人達に安寧の日は訪れないだろう。どうしたものかとしばらく考えながら帰路についていると、ふといい案が思いついた。そうだ!! 適任がいるじゃないか!! 変身能力のあるクロならカードを消費せずとも潜入捜査くらい簡単にこなせるだろう。そう思い声をかけようとするもクロの姿が見えない。確か朝までは肩に乗ってた気がするんだけど……。どこに行ったのかと考えているうちにドクの家へとたどり着いた。

 

「おかえりなさい」


「にゃー」


 玄関でドクの奥さんとクロが出迎えてくれた。お前留守番してたのかよ!! 従者のはずなのについてこないとか、フリーダムにも程があるだろ。と思ったが後で聞いた所、シロが俺についてきた為にかわりにコウ達子供の護衛をしてくれていたそうだ。実は相当出来る従者だったのか?

 

「ところでドク」


「なんだ?」


「クランを作ったはいいけど、俺はここに骨をうずめる気はないんだが、お前はどうするんだ?」


「旦那はどこを拠点にするんだ?」


「今のところシグザレストの王都を考えてはいる」


 今までいった所では、シグザレストの王都が一番良い環境だったからだ。おっちゃんの家の近くで、人種差別も特には見当たらない。王女がアレだった気がするが、王族とそうそう会うようなこともないだろう。ギルドの本部があることで、色々と面倒を押しつけられる可能性もあるが……。

 

「そうか……」


「じゃあ一家で引っ越しね」


「ローナ?」


「ついていきたいんでしょ? 確かにこの家に愛着はあるけど、貴方が選んだ道ですもの。それにそんな生き生きした貴方を見るのは、一緒にハンターをしてた時以来よ」


「……すまないローナ。苦労をかけるな」


「竜と命がけで追いかけっこしてた時に比べたら、こんなの苦労でも何でもないわよ」


 どうやらドク一家はついてくるらしい。

 

「いい嫁もったな」


「ああ、最高の嫁だ」


 普通に惚気られた。後で殴っておこう。

 















☆☆☆












「お引っ越しするの?」


「すぐじゃないけどな」


 夕食後、ドクは娘に今後の事を話す。といっても難しいことはわからないだろうから、俺達についてくるということだけだ。


「お姉ちゃん達と一緒?」


「ああ」


 お姉ちゃんとは恐らくリナとレナのことだろう。今日はずっと一緒に遊んでいたようで、随分と懐かれたみたいだ。

 

「メリルちゃんも?」


「ちゃ……」


「ププッし、師匠がメリルちゃん!!」


「あははっ!! め、メリルちゃんだっヒィィ!?」


 大笑いする弟子二人はメリルのひと睨みで石のように固まってしまった。きっと明日からの修行がとても素敵なことになるだろう。

 

わたくしこう見えても貴方の父親と対して変わらない歳なんですのよ。ちゃんはやめなさい」


「ええっ!? メリルちゃん大人なの!? うっそだあ!?」


「嘘じゃありませんわ!!」


 ドクの娘、エミリアは全くメリルの言うことを信じていないようだ。まぁ身長はリナ、レナの金髪双子姉妹と大して変わらないし、外見も子供のようにしかみえないのでしょうがないだろう。

 

「まぁまぁ、見た目が子供なんだからしょうがないだろメリルちゃん」


「そうだな。誰だってコウと変わらないくらいの子供にしか見えねえだろうぜ、メリルちゃん」


「……ぶち殺す」


「!?」


「ちょっ!? ちょっと待て冗談だ冗談!!」


「それが遺言でいいですの?」


 俺とドクのからかいに魔法をぶち込もうとメリルが手に魔力を溜め始めた。この拳大のエネルギーは以前みた……。フレアノヴァ!! やばい死ぬ!! と思ったが視界に入ったエミリアを見て落ち着いたのか、その魔力は一気に霧散した。

 

「まぁいいですわ。子供に間違えられるのは、今に始まったことじゃありませんし」


「……ふう、助かった」


 ドクが汗をだくだくと流しながらそれを拭って溜息をついた。その隣にいた俺もやばかった……あんなもの撃たれたら、この家どころか近所一帯が更地になるところだ。近くに子供達がいなければ問答無用で喰らっていただろう。俺達ならたぶん死なないだろうとの判断で。いや、死ぬからね? まぁ俺なら大丈夫だろうけど……たぶん。

 

「何やら賑やかだね。一体、どうし……ドク!?」


 久々に命の危険を感じていると、誰か来客のようだ。見知らぬ偉丈夫が玄関に立って固まっている。


「フェア!!」


 ドクがファールぎりぎりでヒットになった時の審判のような大声をあげる。長打コースのようだ。

 

「何故お前……」


「ああ、そこに居る旦那に助けられてな。何とか戻ってこれたって訳だ。旦那、紹介するぜ。俺の親友で元クランメンバーのフェアラートだ」


「旦那?」


「ハンターのキッドだ。今はドクの親分をしている」


 訝しげな表情をする、フェアと呼ばれた騎士に自己紹介をする。ドクより若干高い身長に騎士のような甲冑を纏っている金髪のイケメンだ。


「私は近衛騎士団第10部隊隊長を任されているフェアラートという者だ。以前ドクのいた『吹き抜ける風』に所属していた」


 ふむ。どうやらドクの後任の隊長のようだ。怪我をしていない所を見ると、ドクのクランにいた怪我をしていない方の戦士という訳か。


「フェアは貴方が居なくなってから、何かと私達の世話を焼いてくれていたのよ」


「そうか。世話になったなフェア。恩に着るぜ」


「親友の家族なんだから当然だろう。恩に感じる必要もない。それよりこれからお前はどうするんだ? 団に戻るのか?」


「今更戻れんだろう。とりあえずはまたハンターに復帰することになった」


「危険だからと家族の為にやめたお前が、またハンターに戻るのか……」


「誘ってくれた団長には悪いと思うが決めたことさ。それに元が貴族のお前と違って、俺が戻るとしたら前みたいに大会で優勝する必要があるからな」


「お前なら簡単だろう? 剣王」


「魔導師がいたらさすがに厳しいぜ。まぁ今の俺なら旦那が出なきゃ何とかなるかもしれんが……」


 今のドクはチートな刀と居合があるので、近接戦闘なら相当強い。元々強かった者がさらに凶悪になっているのだから、普通のやつでは手に負えないだろう。


「それでは出てみましょうか」


「ごめんなさい。貴方も無理です」


 メリルのぼそっとした呟きにドクは即座に反応する。魔導師は厳しいっていってるのに……メリル、恐ろしい子。

 

 その後、フェアは仕事に戻り、残された俺達で夕食を摂る。その際に聞いた話によると、フェアと呼ばれる男はドクがいなくなってからも、度々この家を訪れていたらしい。

 それによって人見知りをするエミリアも段々と懐いて来ているらしい。それを聞いたドクから凄まじい殺気を感じたが、気持ちはわかるので放っておいた。


「それより他のメンバーは今何してるんだ?」


「1人はリグザールに行ったのは知ってるが、後の2人は連絡もとれてない。故郷に帰るとは聞いたがな」


 『吹き抜ける風』の残りメンバーは前衛1人と後衛2人。そのうちの1人がリグザールで残り2人は消息不明か。優秀な人材みたいだからスカウトしようとも思ったが、さすがに消息不明では諦めるしかないか。まぁ今のままでメンバーは事足りているが。というか既に戦力過多な気がしないでもない。

 

「ところで旦那はこれからどうするんだ? ここで依頼を受けるのか?」


「そうだなぁ。これ以上放っておくと流石にまずそうだから、少しは受けてみるか。お前はしばらく駄目だぞ」


「なんでだ?」


「折角久しぶりに家族が揃ったんだから、しばらくは一家団欒を楽しんでおけよ」


「……そうだな。久しぶりに家族で遊びに出かけるのもいいか」


 折角九死に一生を得たのだから家族サービスくらいはしておけという俺の案を受け入れ、ドクは奥さんと子供を連れて出かけることにしたようだ。

 

 俺は迷宮に一度行ってみたかったのだが、その前に色々とやることがある。依頼を受けておくのもそうだが、まずは奴隷商会の調査とこの国上層部の調査だ。とはいっても俺自身がやる必要は無い。適材適所という言葉通り、そういうのが得意な者に任せればいい。

 

 というわけで現在クロに偵察に行かせている。行き先は先程遭遇した奴隷商人の所だ。丁度出かける所だったようなので、現在の位置はわからないが、商会に行けば何かしらの情報は得られるだろう。


 その後、どこに行くのかとわいわい相談をしているドク一家を尻目に俺は先に寝ることにした。クロだけを働かせたままというのは心苦しいところではあるが、まぁ俺の手下な以上しかたがないだろう。


 翌朝になってクロが戻ってきた。報告によるとなにやら組織そのものが慌ただしい様子らしい。深夜、黒装束の男達と会話しているのを盗み聞きした結果、どうやら何かしらの作戦が失敗したとのこと。誰かと連絡が取れなくなったという話だが、その人物の名前は出てこなかったそうだ。恐らく近日何かしらの動きがあるだろうから、変化があるまで見張らせることにした。

 

「全く、マスターは人使いが荒いですね」


「お前人じゃねえだろ」


 ぐちぐちと文句を言いながらクロは鳩のような鳥の姿に変化し、飛び去って行った。この世界で雀はみたことがないが、鳩のような鳥はよく見かける。ただ日本の様に人によってくることはない。何故なら人に捕まると普通に食べられてしまうからだ。どちらかというと中国に近いのかもしれない。中国では確か結婚式の撮影用に白い鳩を放ったら、あっというまに地域住民に全て捕獲されて、全部食べられたということがあった。あの国は椅子と机以外の足が付いたものは全て食べるという噂があるが、それをあながち嘘と否定出来なくて怖い。この世界があそこまでいっていないことを期待しよう。


 朝食後、ドク一家とルナ親子、そしてメリルとコウを除いてギルドへと向かった。クロの調査中に依頼を受けておこうと思ったからだ。さすがに一ヶ月以上ほったらかしはまずい。まぁ色々と忙しかったのだからしょうがないのだが。

 

 ギルドに到着すると昨日と同じ受付嬢がこちらを見つけると同時に白い目を向けてきた。

 

「やっと依頼をお受けになる気になりましたか?」

 

「まぁな」


 受付嬢の棘のある言葉にアイリがいらっとした感情を見せるもフェリアに抑えられた。


「でしたら北のはぐれ火竜でも討伐されたらいかがですか? 剣王の所属するクランなんですからそれくらい簡単でしょう?」


「火竜?」


 何気ない受付嬢の一言に思わず頭に疑問符が浮かぶ。火竜……つまり竜、ドラゴン!? おいおいそんなのいるのかよ。銅7ランクが受ける依頼なのかそれ。でも……。

 

「おもしろそうだ」


「え?」


 そう言うと俺は依頼ボードから依頼書をはぎ取り、件の受付嬢の前へと叩きつけた。

 

「え……本気……ですか?」


「お前がやれっていったんだろう? 依頼の決定権を持っている受付嬢が直に薦めたんだ。今更、冗談でしたで済むと思うなよ?」


 俺のその言葉に受付嬢は青ざめた顔をして固まってしまった。依頼というのは受付嬢の裁量により、受諾を一方的に拒否することが可能だ。それは受付嬢に依頼の受諾決定権があるということになる。つまり受付嬢から勧められた依頼というのは、そのハンターにとっては最適な依頼ということに他ならない。故に受付嬢にはハンターの力量を見極める目が必須となってくる。その目の肥えた受付嬢が進めてくる依頼なのだ。ハンターはそれを信じて受けるに決まっている。たとえそれが無茶な依頼だとしても。だからギルドの顔でもある受付嬢は、例え冗談だとしてもそういう無茶なことを絶対言ってはいけないのだ。

 

 まぁ今回のは冗談で言っているのは分かっているが、意趣返しの為に敢て逃げ道を塞ぎつつ依頼を受けて見ることにした。俺が帰ってくるまでこの受付嬢は戦々恐々の日々だろう。なにせ自分が薦めた依頼のせいでハンターが死ぬかもしれないのだから。

 

 受付嬢は自分で言ってしまった以上引くに引けず、結局依頼を承認せざるをえなかった。

 

「ボスはあいかわらずえげつないな」


「ご主人様に喧嘩を売るからこうなるのです」


 随分と人聞きの悪いことをいう。それではまるで俺が何か悪いことをしたかのようではないか。日本政府お得意の遺憾砲発射してしまうぞ。

 

「でもキッドももうクランのリーダーなんだから、これからはもうちょっと考えてギルドと応対したほうがいいよ。あっ!? リーダーって呼んだ方がいい?」


「別に好きに呼んでいいぞ。まぁ応対には気を付ける……多分」


 ミルが案外まともなことを言って驚いた。思いの外、脳筋ではなかったようだ。たしかにクランメンバーに迷惑がかかることを全く考慮していなかったな。反省しなくては。


「別にキッドさんはそのままでいいと思いますけど」


「何があってもご主人様はご主人様ですから」


 フェリアとアイリのフォロー? もあったが、やはりリーダーとしての立場を考えるべきなのは確かである。日本人は責任という言葉に弱いのだ。一部の政治家みたいに無責任なやつも多いが、基本的には責任感が強いやつが多いだろう。


 そのままギルドを出て依頼の準備をしてからドクの家へと戻る。ドク一家は家族で既にどこか出かけているようで、メリル達だけが留守番をしていた。


「で、今度はドラゴン退治をすると。何がどうなってそうなったのかはわかりませんが、まぁ貴方みたいな化け物なら、むしろ相手のドラゴンが可哀そうですわ」


 随分と酷いことを言う。

 

「精々素材がちゃんと取れるように原型を残して倒すことですわね」


 その言葉に何故か周りのみんなが同意している空気に、俺はそれ以上言葉を紡ぐことができなかった。


























 夜になりドク一家が帰ってきた。どうやら近場で日帰りピクニックをしてきたようだ。ドクの娘、エミリアは随分とはしゃいでいたようで、家に帰る頃には力尽きて既に眠っており、ドクにおんぶされて戻ってきた。

 

「なんか久々に羽を伸ばせた気がするぜ」


「そうね。エミリアのあんなにはしゃいだ姿は久しぶりにみたわ」


 平和そうでなによりだ。

 

「それより旦那。さっきレアンに火竜退治に行くって聞いたがホントか?」


「ああ、受付嬢がドクがいるクランなんだから大丈夫っていうからさ」


「……それ絶対受付嬢に対する嫌がらせで受けたろ」


「……」


「なんで目を逸らすんだよ!? はぁ、確かに鋼殻竜すら無傷で制圧できる旦那なら、下位竜くらいならそれこそ鼻歌交じりで倒せるだろうけど……」


「そんなに弱いのか?」


「弱くはねえよ。だけど少なくともドラグラガルトを素手で倒す、旦那の相手にはならねえよ」


 ドラグラガルトといえば確か以前倒した、炎以外なにも効かない銀色のでっかいトカゲだったか。あれクラスならまぁなんとかなるだろう。

 

「まぁ今回はドクは留守番だな」


「はあ? なんでだ?」


「お前が帰ってきたことを奴隷商人が見ている。つまりそれはお前をはめたやつも、その情報を持っている可能性が高いってことだ」


 俺のその言葉に珍しくドクから鋭敏な殺気が漏れた。それは歴戦の戦士が放つ濃厚な死の香りだ。眠そうにしていたコウが、思わずビクっと反応して飛び起きて警戒する程には強烈な殺気であった。

 

「落ち着け」


「あなた」


「あっ……悪い」


 レアンと奥さんの声に反応して、殺気が一瞬で霧散する。ドクにしても思わずといった感じだったのだろう。ドクがこうまでして明確に殺気を放つのは珍しい。どれほど娘を狙われたことに怒りを感じているのかが良くわかる。

 

「とりあえずお前は、しばらく家族と一緒にいろ。向こうから動く可能性があるからな。何かあったら俺に言え。大抵のことはなんとかする」


「……わかった」


 とりあえず万病に効くという、鋼殻竜の角の粉末を渡しておく。毒に効くのかまではわからないが、無いよりはマシだろう。まぁ以前と同じ手を使ってくるかどうかはわからないが、念の為、用心に越したことは無い。恐らくドク一家に直接害をなすようなことはしないだろう。何故なら相手はドクを手に入れようと動いている節があるからだ。つまりその為には娘や嫁に死なれてはまずいはず。まぁどちらか一方でも生きていればいいという外道なやつかもしれないが……。それにしても直接襲うなんてことはしないはずだ。何らかの間接的な方法で害を為すだろう。それを防ぐには常にドクが傍にいることが、何よりの予防策となる。


「今回は俺達だけで行ってくるよ」


 まぁ本来は俺だけでもいいのだが、みんなランクが一様に低いので一緒に上げた方が効率がいいだろう。そういう訳で翌日、今回ギルドで登録したドクを除くメンバーだけで一路、火竜のいるという山へと向かうのだった。


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