05:ギルド
ギルドは街の中央にあるかなり大きな建物だった。洋風な作りで入り口も大きい。あの超有名な狩りのゲームみたいなでかい武器を背負ったまま入るやつがいるからだろうか。
中に入るとポツポツと武器をもった男達がいた。どうやらこの時間にはあまり人がいないようだ。カウンターがいくつか並んでいる中で一番左のカウンターにいく。
「あら、ロキさんお久しぶりです。ついに復帰されるんですか?」
「おうひさしぶりだな嬢ちゃん。今日はこいつの登録にな」
おっちゃんと話している受付嬢はそばかす茶毛のツインテールな素朴な感じのかわいい子だ。あんな美人の嫁さんがいるくせにこんなかわいい子と知り合いとか死ねばいいのに。
「おめえ、またろくでもないこと考えてるだろ」
「ソ、ソンナコトナイデスヨ」
「なんでどもってんだよ!」
「あんな美人の奥さんがいるのにこんなかわいい子と知り合いとか死ねばいいのになんて少しも思ってないですよ」
「やっぱりかよ!」
「かわいいだなんてそんな……」
受付嬢は真っ赤になって照れている。頬に手を当ててくねくねしている様はとてもかわいらしい。
「ところでかわいいお嬢さん、ハンター登録してもらえるかな?」
「はい、わかりました。ではこちらの用紙にご記入下さい」
「えーとこの国の文字はわからないんだけど俺の国の字でいいの?」
「はい、これは魔法で作られた用紙ですので、ちゃんと本人が認識している意味のある文字でしたら問題ありませんよ。書かれた紙を手に取ると他人にもその意味が伝わるようになっています」
魔法世界すげえ! 自動翻訳機能付きとか!
「この武器とか魔法の欄はどうかけばいいの?」
「そこはご自身の扱われる武器の種類と使用できるようでしたら魔法の属性をお書き下さい」
俺武器なんて使ったことないんだけど…まぁナイフはもってるから短剣とでも書いておくか。魔法は空欄にしておこう。
「えーとお名前はキッド様、使用武器は短剣、魔法は無し、年齢は…30!?」
「がはは、驚いたろ嬢ちゃん、こいつこんななりして30なんだぜ?」
「まさか年上だったなんて……」
「どうでもいいけど早く登録してほしいな」
「あっすみません。カードをお作りしますのでしばらくお待ち下さい」
そういってツインテールさんは奥へといってしまった。
「すぐできるからその辺に座って待ってるか?」
「そうするか」
そういって俺達は近くの椅子へと座った。
「あの受付のお嬢ちゃんは知り合いなのか?」
「ああ、俺が引退した年に新人で入ってきた子でな。おっちょこちょいって言うか天然ていうか結構ドジなところがあってな。そこがまたいいってやつもいて結構人気があったんだ」
まさかのドジッ子属性だと!? そばかす、ツインテール、ドジっ子……あと1つで満貫じゃないか!
「お待たせしました」
くだらないことを考えていたら5分もしないうちに受付嬢が帰ってきた。
「これがキッド様のギルドカードとなります。紛失されると再発行に銀貨10枚を頂きますのでお気をつけください」
銀貨10枚の価値がわからんがフォレストウルフ3匹分くらいってことだな。
「ギルドランクについてのご説明は必要ですか?」
きた! お約束のギルドランク! 是非聞いてみたい。
「はい、お願いします」
そこからギルドランクの説明を受けた。要約するとギルドランクは大まかにわけて上から金、銀、銅に分かれているらしい。それぞれのランクはさらに10分割されており一番下が銅の1、一番上が金の10らしい。
一般的に銀になれば一人前、銀7以上は一流、金は超一流なんだそうだ。大抵金になるような人は国に士官してしまうらしく、そのままハンターを続けているような人は希なんだそうだ。それでもこの国には3人も金ランクがいるんだとか。そして銅5以上のハンターにはギルドの強制依頼に対しての参加義務があるらしく、断るとギルド脱退させられるらしい。しかし強制依頼は滅多にないことらしく、おっちゃんがハンターになってから1回も聞いたことがないんだと。ちなみにおっちゃんは銀7で一流の部類だそうだ。ほんとにすごかったんだなこの髭。
「しかし30歳で新人とかギルド始まって以来じゃないか?」
「そうなのか?」
「普通は早ければ10代、遅くても20代前半までに登録される方がほとんどですね」
やっぱ三十路でハンターデビューとか異世界でも異常らしい。まぁ最近結構歳とったなぁなんて思えることが増えてきたしな。
「ランドが村に行くまで3日、4日あるからなんか依頼受けていくか?」
「そうだな、なんか簡単なやつを受けてみるか」
それから壁に貼ってある依頼書をながめる。どうやらこれも魔法の紙で書かれているらしく知らない文字だけど内容は分かる。最初のクエストの王道といえば採取だろう。
「この薬草採取にしようかな」
「まぁ妥当なところだな」
依頼書をはがして先ほどのツインテールさんの所に持って行く。
「薬草採取ですね。依頼はトリコネ草10本とリアリク草10本の採取となっていますがそれより多くてもかまいません。その場合1つに付き銅貨5枚報酬が上乗せされます」
「その草がどんなのか知らないんだけど教えてもらえるかな?」
「はい、あちらのほうにギルドの貸し出している図鑑がありますのでそれでお調べ下さい。あくまで図鑑はギルドの所有物ですので汚したり破ったりしないで下さいね」
「了解です。ありがと」
そういってギルドの奥にある図鑑を調べた。トリコネ草はどうみてもネギだった。解熱作用とか書いてあるが尻に刺すのか首に巻くのか…
リアリク草は赤い小さなたんぽぽのような草だ。依頼はこれの葉の部分らしい。
「それじゃ今日の宿をとってそれから買い出しだな」
「依頼で稼いだらまとめて返すから」
「おう、期待せずにまっててやるよ」
そういって俺達はギルドを後にした。