03:スキル
長すぎたので分けました。
どこの世界も信仰というものはあるらしい。この世界ではアルシュナという女神を信仰しているらしい。人間以外の獣人(いわゆる獣耳の人間と交流のある種族ではなく魔物よりの種族)は邪神を信仰しているんだとか。
まぁなにをもって邪神としているのかは知らないが、神様なんてその人の価値観や立ち位置によってそれぞれ変わるもんだからなぁ。無宗教、無信仰の日本人からしたらどうでもいいことだ。
教会につくとそこは荘厳な雰囲気のあるなかなかに広い建物だった。屋根が平らで十字架はなかった。
中に入るとそこには敬虔な信者だろうか、多種多様な人達がいて女神の像に祈りを捧げていた。その横をとおり奥にすすむとシスターっぽい人が現れた。歳の頃はおっちゃんの奥さんと同じくらいといったところか。顔もなんか似てるな。
「あら、ロキさんおひさしぶり。めずらしいわねあなたが教会にくるなんて」
「おう、こいつの洗礼の付き添いにな」
「はじめまして。キッドといいます」
「これはご丁寧に。私はこの教会の修道女をしていますナザリーといいます。修道女といってもお手伝いなんですけどね」
「ナザリーはナリアの姉なんだ」
「あぁ、なんか似てると思ったんですが姉妹だったんですか。姉妹そろって美人ですね」
「あらやだお上手ね」
そういって頬に手を当てて照れているようだ。仕草もナリアさんに似ている。
「それじゃこちらにいらしてください」
そういってさらに奥へと進む。なんか建物の中に水路があるんだけど…
「ではそこの水晶に触れてください」
奥にいくと豪華な部屋の中心に直径30センチくらいの大きな水晶が厳かに置かれていた。恐る恐る触ってみる。特になにも起きない…あれ?っと思った時に急に眩しい光が辺り一面を包んだ。
「ぐ……いったいなにが……」
おっちゃんが目を押さえながら呻く。
「すごい光でしたね。こんなことは初めてです」
驚いたようにナザリーさんがつぶやく。俺はというと水晶に手を当てたまま特になにかかわったことがあるわけでもなくただ突っ立っていた。
「あっもう手を離してもいいですよ」
そういいながらナザリーさんは水晶を覗き込む。
「えーっと、どれどれ……え!?」
そこに書かれていたのは
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スキル1:世界の理
スキル2:身体補正
スキル3:魔力補正
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「まさか……トリプル!? しかもユニーク持ち!?」
「嘘だろ……」
「名前から補正の2つはなんとなくわかるんですけどこの一番上のはなんなんです?」
「ってなんでそんなに冷静なんですか! トリプルですよ! ユニークですよ! 初代シグザレスト王以来のことですよ!」
なんかナザリーさんが非常に興奮しながら熱弁している。当の本人の俺はへぇとしか思ってなかった。だってよくわからないし。
「こ、これは王宮に報告したほうが」
「ちょ、ちょっと待ってください!それは困る!」
「なぜですの?」
「そんなことしたら……目立っちゃうじゃないですか!」
「はぁ……まぁそうなりますね。まず王宮から呼び出しがくると思いますよ」
「ただ3つ持ってるってだけで!?これがすごいスキルならまだしも微妙なスキルだったらどうするんですか!?」
「たしかに世界の理なんてきいたことないスキルですけどユニークスキルなので非常に強力なスキルだと思いますよ」
「ユニークスキルって?」
スキルというのはなんか個人の固有スキルと一般的なスキルとに分かれるらしい。普通の人は一般的な~補正だとかそういうスキルがつくんだが極希に全く違う独自のスキルが付くらしい。それはユニークスキルと呼ばれ非常に強力でかつて初代シグザレスト王の持っていた神剣が有名なんだとか。
神剣とかなにその厨二病全開のワードは。一人で魔物の軍団殲滅するくらいだからとんでもない最終決戦兵器みたいなチートなんだろうな。このユニークスキルというのは遺伝で継承されることが多く、ユニーク持ちは非常に重宝されるとのこと。
後、アクティブスキルはほとんどがユニークスキルらしい。なのでアクティブスキル持ち=ユニークスキル持ちとして略してアク持ちなんて言われてるんだとさ。
「スキルの詳細については念じれば自然にその使い方なんかがわかるはずですよ」
言われたとおりスキルについて考えてみる
身体補正:肉体的に強化される。
魔力補正:魔力量が増える。
シンプルすぎんだろうが! 情報なんにも増えてねえよ!
最後のスキルも同じ様な説明だったらどうしよう……そう思い最後のスキルを思い浮かべてみる。
世界の理:アクティブスキル。世界の理をカードにして使用することができる。
①:カードは1日に6枚までドローすることができる。
②:展開のワードでデッキを展開することができる。収納のワードでカードをデッキにまとめてしまうことができる。
③:使用するカードはデッキから取り出していないといけない。
④:使用する際はカードNoとセットのワードが必要になる。
⑤:デリートでカードの効果をキャンセルすることができる。
今度は情報多すぎだろ! 一応絵が好きなだけでいろんなトレカ集めてたりしたけど実際プレイしたことねえのになんでカードなんだよ!? 心の中で色々つっこみをいれつつとりあえず使ってみることにする。
「展開」
すると目の前にリング状に連なったカードが現れた。12枚程あるようだ。これはいわゆるスターターデッキというやつだろうか。カードの大きさは普通のトレカサイズだ。非常に精巧で緻密な絵が描かれている。やべえ使わないで集めたい!
「おおっなんだこれ綺麗だな」
「なんでしょうこれは……非常に神秘的ですね」
あっ2人がいたこと忘れてた。
「2人とも俺のスキルのことは秘密にして下さいね」
情報が他人に知れると言うことは非常に危険なことだ。こんな世界じゃまさに命に関わってくることになる。
「わかったよ」
「わかりました」
そうして俺は目の前のカードをよく見てみる。タップするとスライドしてくるくる回るようだ。これは便利だ。スマフォみてえ! 俺持ってなかったけど! カードの内容をみてみると
No081C:応急措置 軽度の傷を治す。
No100C:火球投射 火の玉を発射する。
No101C:圧縮水流 水の玉から圧縮された水を発射する。
No102C:風刃投射 風の刃を発射する。
No103C:土石投射 石の礫を発射する。
No104C:光源作成 明かりをつくる。
No113C:範囲探索 半径5Kの生物反応を探る。
No114C:物質解析 対象を解析する。
No115C:地図投影 半径5Kの地図を写す
No120C:夏下冬上 火種を作成する。
No121C:冷水生成 冷水を生成する。
No122C:温水生成 お湯を生成する。
どうやらいわゆるRPGの基本的なことが集まっているようだ。スターターデッキというやつなんだろう。しかしなんで火種を生成するのが夏下冬上なんだ!? 火種生成でいいじゃん!
しかしCってなんだ? ひょっとしてCってことか!? まさかのレアリティ方式!? やっべ俺こういうの集めるの超好きなんだよね! とりあえず1枚使ってみるか。一番いらなそうなのを……
「122セット!」
俺は122のカードを手に取りそう叫んだ。するとカードが輝きそこからお湯が出始めた。
「おおっすげえすげえほんとにでた!」
「なっ!?なんですのこれは?こんな魔法聞いたこともないです」
「おおっすげえな、おまえ魔法も使えたのか?」
「たしかに魔法みたいだけどこれスキルなんだろ?魔法と厳密には違うんじゃないか? っていうか魔法ってあるの!」
魔力がどうとかいうスキルがあるんだからあることは期待していたがほんとに魔法もあるらしい。ただし普通は使えず魔導師の弟子になるか隣国のリグザールの王都にある魔法学校に通うかしないといけないらしい。まぁどっちにしろすぐには無理なようだ。
しかしお湯がどんどん出続けている…これどんくらいでるんだろ……まぁ追々検証していくことにするか。
「デリート」
そういうとお湯はとまりカードは光となって消えていった。
「クローズ」
そういったとたん目の前にあったカードのリングは中央に収束していき消え去った。これは非常に便利そうだ。カードの能力にもよるけどコレクター魂もくすぐる超優良スキルだな!
「それじゃ次はギルドにいくか。ハンター登録って誰でもできるんだろ?」
「あぁ特に規定はないな。それじゃいくか。姉さんまたな、たまには遊びにこいよ」
「えぇそれじゃまた。妹によろしく伝えておいてね」
そういって俺達は水浸しになった教会を後にした。普通に部屋の中に水路っぽいのがあったから問題はない。知らないけどきっとそう。