その1
6月1日 自宅にて・・・
がさごそがさごそ
僕は両親のたんすを漁っている。何故?WHY?それは簡単、妹の花蓮ちゃんから素晴らしいことを聞いたのさ。
「お兄ちゃんの長年探し続けてきたアレが入ってるかも・・・・・?」
アレ!僕の願望!!夢のアレ!!!
がそがそがそ
「あれ?」
指が下に着いちゃったよ?アレは大きくて、こう、夢一杯な感じなのに・・・・・おかしいな?そんな僕になにやら声が聞こえてくる。
「ぷっ・・・・・バカだ・・・バカ兄だ・・・・」
嗚呼、いとしの花蓮ちゃんの声だぁ・・・・・・・・・って、何で不敵な笑みを浮かべてるの?それに何て言った?バカ兄?
「あああああああっ!!騙したね花蓮ちゃん!?今日という今日は絶対許さないよ!!!正座!!!!」
物凄い剣幕で迫る僕に対して花蓮ちゃんは、ああ、ああああ、きゅっと握った手を口元に持っていって目を潤ませはにかみながら・・・・・
「お兄ちゃん・・・ご、ごめんなさい・・・・・」
ズッキュウウウウウウウウウンンンン!!!
「ぬはぁぁぁぁ!!!僕が悪かったよ花蓮ちゃん!!!!!!くはぁ、もうたまらん。お詫び に抱きしめてあげりゅぐるぼぅウェあ!!!!」
ガシャアアアアアアン!!
解説しよう。花蓮ちゃんに飛びつこうとした僕に対して彼女は何処からともなく取り出した百科事典『某辞苑』で僕を窓の外の庭まで叩き飛ばしたのだ!!ちなみにここは2階です。庭の地面が遥か下に見えるよ?そして手に持ったままのたんすの中身も・・・・・・・・・・・ん?
「ああ!これはぼくのさがしてたアレとはちがうけれどもとってもきになってたぼくのなぼる む!!」
地面に突き刺さっていい感じにプラプラし始めた僕の体・・・・。でも大丈夫!なんてったって僕は欲望の神様『欲望er』の化身なんだから!!!!すごい、すごいよ僕!!あっという間に大復活!!!!!
・・・・・・・花蓮ちゃんが窓から僕を見下ろして舌打ちしたのは気のせいですか?
僕の名前は『中野・J・舌(なかの・じょーぜつ)』。何でこんな名前になったのか僕は今知りました。たんすの中にそれはあったのです。
「この子は良くしゃべるから名前をジョーから饒舌に変えたいです。 中野・T・上|(なか の・ちちうえ)」
「素晴らしい!私にはそれを却下する必要性が感じられない。承認!! 裁判官」
・太鼓・
「なんだよ太鼓って!?太鼓判かよ!!!っていうか何でこんなメチャクチャな改名が通ったの!!!?裁判官とか何考えてんだよ!!!!それ以前になんでジョーなんて名前付けてたの さ?何でカタカナ?僕日本人!!!教えてよ父さん、母さん!」
「ぷっ・・・・・・・・・・・・・クククククククククク・・・・・・」
いつの間にか僕の隣に来ていた花蓮ちゃんが笑います。もう完全に僕をバカにしています!!
「なんだよ!花蓮ちゃんだってフルネームの『中野・J・花蓮』のJの部分はにゅわーーーーーーーーーーーーー!!!肉が、肉が千切れる!!ごめんなさい!!!もう言いませんから万力のような力で肉をつまむのはやめて!!!!許して?ね??あ!ほら!!某辞苑なんか出しちゃだめだよ?ちょっ!待って!!!!目がすわってるって!!!恐いよ!!!!!」
「ふんっ!!」
ガスッ!ドガッ!ボギャ!!
花蓮ちゃんがありえないくらい野太い声で乱打開始。気分はダブルなキャストのヒロインに殴り殺される主人公です。でも・・・・・でも僕は!!!
「復活!!欲望er!!!!!!!!!!!!!!!!!無駄だよ花蓮ちゃん!!なんてったてぼぐるぁ・・・・・・ぼくぱぎゃ・・・・・・・・・欲ぼるぎゃん・・・・・・・・・ちょっと花蓮ちやべるぼぉあ・・・・・・・・花れべるぼぎゃん・・・・・・・」
ぼくはしにましぇん!!あなたをあいしているから!!!!
・・・うん、生きてます。
「花蓮ちゃん!僕がホントに死んじゃったらどうするの!!!神様にも限界はあるんだよ!・・・・多分」
黙々と本を読み続ける花蓮ちゃんに僕は訴えかけます。ちなみに彼女が読んでいる本は、ドロドロ昼ドラ『パール婦人』・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・って、何てもん読んでるの!!花蓮ちゃんには早すぎるよそんなにドロドロしたの!!!」
その時!
「ここには・・・・・」
突然花蓮ちゃんが小さくて可愛いお口を開いて音読を開始しました。
「ここには萌鬼(もに)がいるといいます。悪いことは言わないのでさっさと帰りやがれオタ野郎!剥ぐぞコラ!!」
「何それ・・・・?」
聞いた事もない物語です。
「萌生門(もしょうもん)。ha.河 ピュウ之輔平(へくたがわ ぴゅうのすけべい)のデビュー作・・・・・・・」
聞いた事もない物語です。ついでに、聞いた事も無い作家です。
「からかわないでよ!カバーはパール婦人じゃん!!っていうか萌生門なんて聞いた事ないよ!!ha.河ってだれさ!?」
「うるせぇな・・・・・クソ兄が・・・・」
「花蓮ちゃん!クソ兄ってなんだよ!!いくら僕でも怒るよ!!!もう怒ってるけど。でも、すっごく気になるからカバー取って中身を見せて欲しい・・・・」
花蓮ちゃんはすっと服の前を押さえるときゅっと体を固くし震えながら潤んだ目で僕を見つめます。撃沈しそうです。が、ここは堪えなければ!萌生門が何たるかを確かめ・・・・・・
「お兄ちゃん・・・・だめだよ・・・・中身を見せろなんて・・・・・・・・私たち兄弟なんだよ・・・・?・・・・でも・・・・・・」
ふっと笑顔を浮かべる花蓮ちゃん。だ、だめだ・・・・・萌生門が何たるかを・・・・・・
「お兄ちゃんなら・・・・・・・・・・・・・」
ズギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンンンンン!!!!!!!!!!!
「確かめたい!!花蓮ちゃんの中身を確かめたいぃぃぃぃぃぃぃぃ!いくぞ!!必殺・ルッパーンダイヴるべぁ!!!!!!」
逝きました。花蓮ちゃんの某辞苑は推定60キロだと言ってもいいですか?ウソだけど・・・。
嗚呼、僕の花蓮ちゃんへの愛は届きそうもありません。ちなみに今更ですが我が家から僕の熱望するアレ・12妹姫(じゅうにまいき)は見つかりませんでした。英語訳しちゃダメだよ?