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第1話 そして転生へ

 これからよろしくお願いします。

「あ! オタク君」


 その声を聴いた時、大滝葛彦おおたきくずひこ、16歳、ひきこもりのニートはビクンと肩を震わせた。



 彼をこの呼び方で呼ぶのは学校の関係者。

 いじめという嫌な記憶がよみがえる。




「君は……、藤沢か!」



 相手を見て、葛彦はほっと胸をなでおろした。



 学校で唯一仲が良かった相手だったからだ。




 女の名前は藤沢良子ふじさわよしこ

 葛彦と同じクラスの女子だった。



 身長は160くらいで、ほっそりとしつつも、女性的な体付きを持っている。



 軽くウェーブのかかった、黒髪に大きくぱっちりとした瞳から分かるように、ギャル風の恰好をした美少女だった。




 そんなスクールカースト最上位の存在が、葛彦のようなスクールカースト最下位とつながりがあるかというと。




「それって、もしかして、エレメンタルサーガの最新ゲーム!」



 良子もまたオタクだからだ。




 エレメンタルサーガ。

 引きこもりの葛彦が有り余る時間をオタク活動に費やしているさなかハマった、Web小説、アニメなどのメディアミックスコンテンツである。



 その作品初のゲームが葛彦の手にはあった。



 原作の人気が高いせいか、多数の絵師と、隠し要素など。

 ファンからすれば眉唾物の一品である。



(さっさと帰ってゲームしたいんだよな)


 なので、偶然出会った旧友などどうでもいいというのが本音だった。





「私も気になってたんだけど、買えなかったんだよね。

 ねぇねぇ、オタク君の家にいって、ちょっくらプレイさせてもらってもいい、というか、させろ!」



「やだよ。

 買ったばかりだから、やりこんだ後、最低でも50時間くらいプレイした後なら渡してもいいけど」


「まって、最低限で50時間」



(あ! やべ)


 熱が入り、変なことを口走ってしまったことを後悔した。



「最低でもやりこんだと言い張るなら70時間はプレイしなさいよね!」


「そっち!」


 予想外の返答に、葛彦はツッコミを入れた。


(オタクだってことは知っていたけど、俺以上のゲーム廃人だ)



 それはいうなれば魂の共鳴。

 自分がクズだと自覚している葛彦ですら、良子のやばさに敬意を感じた。


 はたから見れば、ゲーム廃人同士が共鳴しあい、さらなるダメ人間になろうとしているだけなのだが。





「そもそもの話さ、男の部屋に若い女が立ち入るなんて、どういう意味を持つかくらいわからねぇか!」



 やばさを持ち前の嗅覚で感じ取ったからか、葛彦は別方面からの説得に切り替えた。




「別に、そっちの意味でとらえてくれても構わないわよ」


「……そっち、でも?」


 理解できない現状。困惑がさらに深まる。




「憶えてる。私の机の上に落書きされた時のこと」


「あんな派手な事件忘れないよ」



 葛彦にとっては忘れられない事件だった。

 何せ、その事件のせいで彼は不登校になったのだから。



『オタク』

『メルヘン星人』

『学校に来るな』

『プリギュア』


 良子の机上には、大量の罵倒が並んでいた。



「君のためじゃないよ……。

 ただ、俺が許せなかったから怒っただけだ」



「そうそう、オタク君はさ、愛と勇気の戦士を罵倒に利用するなって叫んで……」



 良子はくすくすと笑いだす。



「あの時はテンションが無駄に高くなってて……」


 本人からしても黒歴史なので、葛彦は気まずそうに頬をかいた。




「その時のオタク君は最高にかっこ悪かったけど、かっこよかったよ」


「褒めるならさ、オタク君呼びはやめてくれない」



 今回、良子は苦笑した。




「あれ以来、私へのいじめというか、嫌がらせがなくなったんだよね」


「偶然だよ」


 だから、気にすることはないと葛彦は断言した。



「知ってるわよ。全ては単なる結果オーライだってことも。

 でも、私は救われたんだから恩着せがましくしてもいい、というか恩着せがましくしろ!

 調子が狂うから。あんときのあんたは最高にかっこよかったんだから」



 今度は素直にお礼をいえた。

 一見、元気いっぱいに見えるが、そこには隠し切れない後悔の色があった。


 葛彦のフォローによって、確かに良子は救われた。

 しかし、別の被害者を生んでしまった。

 その被害者こそが彼だった。





「それってつまり」


 だが、そんな微妙な感情の変化をくみ取るにはまだ若すぎた。



(もしかして告白! いや、ギャルの言葉だ。真に受けないほうが……。でも……)



 脳内がパニックを起こして、ショート寸前。



 どうにか返答をしようしたところで、葛彦の唇に白く長い指が添えられた。




「何、本気にしてるのよ」


「だ、だよねぇ」



 彼の脳はすでに許容オーバー。

 冗談と言われて、がっかりよりも安堵が勝ってしまった。




「あんたがひきこもりである間はお断りよ。

 ほら、オタク君がいないと趣味が合う奴がいなくて寂しいから、早く学校に戻って来なさいよ」


「そんな事だろうと……」




 そこで、葛彦は言葉に隠された裏の意図を察した。


「まさか……、俺が引きこもりでなくなれば……!」


 それはつまり……。



(そうでなくなれば可能性があるってことだよな!)



 期待を込めた視線に、あいまいな笑みが返された。





(もう一度、頑張ってみてもいいかもしれないなぁ)



 小悪魔の導きに、葛彦は前に進むことを決めた。




 このまま物語が進めば、閉ざされた道に光がさし、明るい未来を進める可能性もあっただろう。



 だが、そうはならなかった。




「なんだ!」


「これって!」



 地面が大きくゆれ、2人はその場に倒れこんだ。




「ああ、もう、こんなの俺の柄じゃねぇぞ」


 とっさに、葛彦は良子におおいかぶさった。



 空からはキラキラと雨のようにガラスの破片が落ちてくる。



「あ、ありがとう」


「そんな事よりも……」



 ガラスの刃が、葛彦の背をざっくりと切り裂いた。

 赤い血の雫が、良子の顔を塗らし、暖かいというのに顔が真っ青だ。



 それでも今は、助かったという喜びが先に来た。



 しかし、さらなる悲劇が彼らを襲う。


 地震によって制御を失った車が2人に突っ込んだのだ。



 ――ブチンッ。


 視界がブラックアウトした。



 ――ピッ!




「はじめまして、不知火信二さん」



 そして、葛彦が目を覚ますと、そこには美しい女神がいた。


 これからしばらく新作を投稿します。

 もう一つの作品は今日の19:00時頃に投稿します。

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