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2話「検査」

 講習は広い部屋で行われるようだった。私はパイプ椅子に座る。なお、テーブルはない。

 まだ私のように手続きが済んでいない人が多いようで、意外と人が来ていた。私を含めて二十人くらいはいる。


 予約して来たので、全員そろったところで講習は始まった。

 およそ一時間ほど、説明が続いた。


 要約すると――元々、私たちの世界の研究者たちが「他世界の観測」に成功し、さまざまな世界を秘密裏に観測していたらしい。

 だがある日、世界は一斉に私たちの世界へと繋がってしまった。

 世界は自らの存在を維持するため、繋がってしまった他の世界にも適応できるよう、世界そのものの法則を書き換えたそうだ。


 その結果、私たちはスキルと魔法適性を持つ体質へと変化させられたのだとか。

 半年前は酷い混乱が見られたが、世界は人々の意識にも書き換えを行い、“スキルや魔法のある世界を自然に受け入れられるように”したらしい。

 だからこそ、世界的な暴動もなく、精神を病むほどの衝撃もなく、社会は今まで通り動いていられるのだという。


 スキルと魔法適性の確認が義務になったのは、使い方を誤ると大変な惨事を引き起こしかねないため。

 そのため、こうして講習と検査が義務付けられたらしい。

 さらに、スキルと魔法適性の証明は個人情報と紐づけられ、店舗や医療機関などでの支払いを手をかざすだけで行えるようになるという。


 説明にはなかったけど、スキルと魔法適性の有無がわかれば、犯罪の抑止や隠蔽防止にも使えるんだろうなと思う。


 私は口には出さないが、ある意味、新しい世界での“監視と管理の社会”が始まったようにも感じた。

 引きこもりの私でさえそう思うのだから、他の人も気づいているだろう。

 それでも、外の様子を見る限り、悪い世界にはなっていないようだと肌で感じていた。


 説明が終わると、一人ずつの検査が始まった。

 情報を見られないよう、衝立の向こう側で行われる。


 十人ほどが順番に呼ばれていくのを眺めていたが、皆どこか楽しそうな顔で衝立の外へ出てくる。

 私も少しだけ楽しみになっていた。


 やがて私の番が来て、席を立ち、衝立の向こうへ入る。

 そこにはパソコンが一台と、大きな紙が広げられていた。紙には複雑な魔法陣が描かれている。


 職員が言う。

 

「手を翳してください。これが最初の起動装置になります。以降、スキルや魔法適性があれば自動的に発動します。

  スキルと魔法適性を確認し、パソコンにデータを記録します。

  登録が完了すれば、以後すべての口座や情報が紐づけられ、手をかざすだけで支払いや身分証明が可能になります」


 ――便利なんだが、ある意味で怖いな。

 でも、私も一度は“手をかざすだけで支払いができる”体験をしてみたい。


 私は紙に手を翳した。魔法陣が光を放つ。


「では、スキルと魔法適性の有無を確認しますね」


 職員がそう言ってデータを確認する。

 すると、妙な顔をした。


 少し言いにくそうに、職員は口を開いた。


「えっとですね。魔法適性は普通にありますが……忍田可奈しのだ かなさんのスキルは、かなり特殊で見かけない類のものです。

  申し訳ありませんが、少しだけ居残っていただけますか?

  あ、お伝えしますと、スキルは“セーフティネット”、魔法は“生活魔法(小)”です」


 どんなスキルだ、それは。

 胸の奥で、嫌な予感がひやりと広がった。

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