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99.神は三界を見渡す

私はふたりを抱きかかえながら、銀河を吹き抜ける風の中を一歩一歩、ゆっくりと進んだ。

足元には、銀霧の糸で織られた雲の絨毯。朝露のように軽く、乙女の手のひらのようにひんやりとした感触だった。


私たちは向かっていた——神殿で唯一、金や宝石ではなく、

無数の古代生命の記憶と魂で鋳造されたソファへ。

それは、究極の“やすらぎ”を守るために存在していた。



---


龍香絶美は私の肩に身を預け、瞳を潤ませながら微笑む。

その目は、夜露のようにきらめいていた。


雷夢妃は胸に頭を寄せ、神の鼓動を聴く。

静かに。

だが、それは地下に潜む太陽のように、熱く激しいものだった。



---


目の前の巨大なスクリーンが静かに光を灯す。

それはテレビなどではない。

神眼明鏡しんがんめいきょう」——三界のすべての命を映し出す、究極の真視装置。


映るのは——

◆ 迷妄なる山河の「凡界ぼんかい

◆ 神殿と宗門が浮かぶ「霊界れいかい

◆ 殺戮・憎悪・輪廻・永滅が交錯する「魔界まかい



---


場面がゆっくりと切り替わる。

まるで神話の映画を観ているかのように——


飢えに泣く人間界の幼子。

自らの血で禁術を練る魔族の少女。

百年の閉関を経て、ただ一節の天書を解こうとする老道士。



---


ふたりは息を呑み、静まる。


私はただ、微笑んだ。


> 「もう、俺たちはあいつらの遥か彼方にいる。」

「三界を滅ぼすのに、大技なんて要らないさ。

屁のひとつでも…かましたら終わりだ。」





---


ぷすっ。


最初に笑い出したのは龍香だった。

その顔は朝陽のように眩しかった。


> 「あなた…覇道を極めすぎて、もはや無恥ね。」




雷夢妃はそっと腰をつねってきた。

その瞳は揺れる星屑のように煌めく。


> 「あなたの力…接吻ひとつで私を壊すくらい、危険なのよ。」





---


私は表情を引き締めながらも、口元はかすかに上がる。


> 「冗談だ。……だが、もし本気を出せば——

ただ一つの“思念”だけで、三界は《再構成型終焉状態ハイメタ・リインストール》に入る。」




> 「なぜなら、私は命を握っているだけではない。

“ルール”そのものを、支配している。」





---


その時だった。

霊界の一角が震えた。

異常な天罰が、ある宗門に直撃したのだ。


画面が閃光で満ちる——


私は歩みを止め、目を細める。


……これは、私のせいではない。

災厄生成システムも作動していない。


……“予測不能の乱数”か?



---


龍香が顔を寄せ、小さく問いかける。


> 「ねえ、何を感じたの?」




私はすぐには答えなかった。

なぜなら——


銀河統括システム《Galaxy Universe 365》の奥底に、かすかな警告が浮かんだからだ。


> 【警告:NPCが自発的意念で運命スクリプトを書き換えようとしています】

【名前:趙玉ちょうぎょく

【修為:不明】

【意念タイプ:自覚的感情起動型】





---


私はゆっくりと目を閉じ、笑みを浮かべる。


> 「三界が……反逆を始めたのか?

それとも、誰かが——夢を見る方法を学んだのか?」

私の身体は、ふたつの“地上の花弁”に挟まれていた。

柔らかすぎて、この空間すらも甘やかな光へと溶けていくようだった。


左には夢妃——その体からは、まるで魔界の残響がまだ冷めぬような、特別な温もりが漂っていた。

右には香絶美——その肌に漂う香りは、どの花にも属さない。“神格化された無垢”そのものの匂いだった。


ふたりは私を強く抱きしめていた。

それは、不死鳥の両翼のよう。

まるで、このまま手を離せば、三人ともどこかの虚無へ消えてしまうとでも思っているかのように——



---


> 「ねぇ、あなた…」

夢妃の囁きが耳をなぞる。

その吐息だけで、私の心は銀河の風に舞う柳のように揺れた。




> 「あなたのそばにいるだけで、世界の終わりすら怖くない…

雷が落ちようと、戦が始まろうと…ここにいるなら、それだけでいいの。」




私は首を傾け、そっと額に口づけた。

それは軽やかでありながら、万層の神力を込めた聖なる接触だった。



---


香絶美も肩に顔を埋め、深い茶の瞳で私を見つめる。


> 「あなたさえいれば…この世界が夢でも現でも、どうでもいい。」





---


私は微笑む。

その吐息の振動に、ふたりの身体が微かに震えた。

安全の悦楽に酔いしれるように。


指先がふたりの背を撫でる。

その触れ方は稲妻のように軽やか。

布地は破れず、まるで光へと溶け込むように消えていく。

そして現れる、光と影のコントラスト——ふたつの女神の身体。

だが、中心には常に“私”がいた。

欲望と安寧の、原点にして終点。



---


一度撫でるごとに、ふたりの魂が太陽に向かって咲く花のように開かれていく。


急がない。

神の愛には焦燥はいらない。

一息、一呻き、一口づけ。

すべては宇宙と肉体の統合の儀。



---


私は夢妃の首筋に唇を落とした。

その味は、嵐の夜に熟成された葡萄酒のような、甘くも深い闇の香りだった。


彼女は小さく喘ぎ、私の腕にしがみつく。


> 「もう…無理…あなた…」




同時に、もう片方の手で香絶美の腹下に触れる。

そこはすでに、長く求められていた場所——濡れて、熱く、震えていた。


> 「あっ…ひどい…夢妃を愛しながら、私にもなんて…」




> 「私は神だ。選ぶ必要などない。ふたりとも、私のものだ。」





---


ふたりの喘ぎが重なり、呼吸が乱れ、波のように私を包みこむ。


私は、同時に、ふたりに入った。


説明は不要だ。

ここは神殿——

時間も空間も、そして肉体も、私の意志次第で定義される。



---


夢妃は脚を私の腰に絡め、愛の鎖と化す。

香絶美は私の首に腕を回し、耳を軽く噛む。

まるで、私の魂そのものを食らうかのように。


一突き——深く、ゆっくりと。

ふたりの身体は弓のように反り返り、

神の矢に張られた二張の弦となる。


熱く、震え、密着し、混じり合う。



---


私は声を聴いた。

もう言語ではなかった。

それは恋する者だけが交わせる、原初の“音”——



---


出入りのたびに、ふたりの魂がとろけていく。

神殿の天井にちりばめられた宝石たちも、我らの律動に合わせて煌めき始めた。


> 「もっと…もっと欲しいの…お願い、止めないで…」

「あなたと、この揺れる宇宙の中で——ずっとこうしていたいの…」





---


私はふたりを抱き上げ、自らの上に座らせた。

ふたりの小さな女神が、王女の姿で私の上に踊る。


唇は唇を求め、指先は互いの身体を優しく撫で、

私を深く抱いたまま——絡み続ける。


私は止まらない。

世界が止まっても、私は止まらない。



---


…そのときだった。


操作卓から、静かで確かなアラート音が響いた。


私は動きを止める。

だが、抜けない。

離さない。

ただ、顔を上げる。



---


> 「Galaxy Universe 365 – 生命信号を感知。

空間領域042:自己生成エネルギーが加速中。

意識形成プロセス、開始——」





---


ふたりは顔を上げた。

まだ私の上に座ったまま。

額には汗が滲み、髪は星の雨に濡れた天上の花びらのように垂れていた。


> 「あなたの“小宇宙”…目覚めようとしているのね?」——夢妃




> 「じゃあ…本当に誰かが、生まれようとしてるの?」——香絶美




その瞳は、浮かぶコードの光に引き込まれていく。



---


私は笑みを浮かべながら、指先でふたりの太腿のあいだに触れる。

そこには、まだ私がいた。

原初の門を守る、ふたりの扉。


私は感じる。

エネルギー。

呼吸。

香り。

そして、形になろうとする“命”の震えを。


> 「そう。これは、新しい宇宙。

新しい命。

そして——新たな始まり。」





---


だが、制御盤に向かう前に——


私は再び、ゆっくりと、深く、確かに突き上げた。


> 「宇宙は待てる。

だが、君たちは——待てない。」





---


ふたりの声が、ひとつになって響く。


その瞬間——時が、止まった。


神は、まず世界を救わない。

神が優先するのは、

いつだって——己の心の上にいる者たちだ。


私は操作パネルの前に立った。

それは人の背丈ほどの円柱状の水晶体で、古代の星が誕生した瞬間を閉じ込めたように、静かに、だが確かに輝いていた。

指先で軽く触れるたびに、数千もの光の文字が宙を舞い、まるで虚無の中に棲む微小生命体のように浮遊する。


部屋の光が変わる。

知性の胎動を象徴する――深い青へ。



---


> 「成長には…まだ時間が必要だな」

光の記号が回転し続ける様子を見つめながら、私は独りごちた。

「原始の物質から、内省する自我へ…最低でも一週間分の『精神集中』がいる」




私は感じていた。

まだ“私”すら知らぬ存在たちが、小さな宇宙の中で――生きようとしていた。

これはシミュレーションではない。

本物の、創造だった。



---


背を向けると、彼女たちはまだソファに座っていた。

銀河水晶でできたその椅子の上、髪は肩にかかり、目は星夜の泉のように澄んでいた。


私はその瞳の中に読み取る。

肉体を超えた、承認の渇望。

この果てしない宇宙で、彼女たちは「神の掌に咲く唯一の花」だった。



---


私は口角をわずかに上げただけ。

それだけで、二人の身体が小さく震えた。


> 「待ち時間のあいだに――」

低く、空の底から響くような声で囁く。

「復習でも…するか?」





---


雷夢ライム・モンニは頬を染める。

耳がピクリと動き、まるで狭い隅に追い詰められた獣のような目をした。


> 「昨日だけじゃ…足りなかったの…?」




私は思い出す。

昨夜、彼女は三度「悪魔…」と喘ぎながらも、三度私の首を抱いて「やめないで…」と囁いたのだ。



---


龍香りゅうか絶美ぜつびは小さく笑った。

だがその脚は自然と閉じ、手が着物の裾を握っていた。


> 「まだ…満たされてないけど…」

「でも身体が…まだ火照ってる…ほんとにまた、やるの…?」





---


私はゆっくり歩を進める。

指で、絶美の顎を優しく持ち上げ、もう一方の手でモンニの首筋を撫でた。

その肌はまるで秋風に舞う金の葉のように微かに震えた。


> 「無理にとは言わない」

私はそっと耳元に息を吹きかけ、彼女の鳥肌を感じた。

「拒むなら、それもまた美しい」





---


二人は視線を交わす。

言葉はない。だが呼吸がすでに全てを語っていた。


二人の唇に、同時に微笑が咲く。

それはまるで、太陽に向かって咲く双子の花。


> 「その微笑みで…」

「断れるわけ…ないじゃない…」





---


私は触れない。

だが彼女たちは自ら立ち上がり、ゆっくりと私の方へ歩いてくる。

引き寄せられるように。



---


最初に服を脱いだのはモンニだった。

その身体は闇の中で燃えるような赤い光を放つ。


続いて絶美が私の首に腕を回し、囁いた。


> 「たとえこれが現実でも幻でも…」

「私たちの愛だけは…真実だから…」





---


その一言が、私の内側を震わせた。


本物と幻想。

私は証明したいのだ。

仮想宇宙でも、愛があれば「命」は生まれる。


そして、今この瞬間。

彼女たちこそが、私にとって――宇宙の意味だった。



---


私は二人を抱き上げた。

一人ずつ、片腕に抱え、羽のように軽く、魂のように重い。


部屋の中央、星屑の光が六角形を描く地面に彼女たちをそっと横たえた。

ベッドも布もない。

あるのは、光の大地――絹より柔らかく、血より温かい。



---


私は一人には首筋から肩を、一人には胸から腰までキスを落とした。

指先は彼女たちの曲線をなぞりながら、世界地図を再び描く。

その地図の神は、私だ。



---


急かさない。焦らない。

一回の挿入が、一つの「誓い」となる。


一つの喘ぎが、神と人の恋経こいきょうとなる。



---


> 「愛している」

私は囁いた。

二人が私の中に溶け込んでいく時、私は言葉ではなく存在で告げた。

「三界が崩れても――私たち三人のための世界を創り続ける」





---


モンニは泣いた。

苦痛ではない。温かすぎる涙だった。

彼女は私の背を抱き、耳元で囁く。


> 「約束は…守ってね…」




私は彼女を見つめ、額にそっと口づけた。


> 「私は神…私の言葉は運命だ」





---


絶美は微笑むだけだった。

目を閉じ、口を静かに開く。


> 「もし明日、あなたがいない世界で目覚めたなら…」

「その世界は…悪夢よ」





---


部屋全体が、音のないラブソングに包まれる。

ただ、吐息と肌と鼓動だけが流れる。


終わりはない。

絶頂という定義すら超えて、ただ永遠に高まる感情の波。

それは――終わることのない、膨張する宇宙。



---


そして私は、心の奥で呟く。


> 「Galaxy Universe 365 が知性を持つまでに一週間かかるかもしれない…」

「でも私は――もうとっくに、二人の女神を得ていたのだ」

私は額に手を当てた。


冷気が背骨を走り、霧のように全身へ広がる。その瞬間——


**《天幻滅世無極眼》**から放たれた無数の光糸が、私の創りし仮想宇宙《Galaxy Universe 365》の監視系へと絡みついてゆく。


肉眼には見えぬが、心念の視界でははっきりと感じられる。


金色のコードが——生きている。呼吸し、鼓動し、まるで春夜の土に芽吹く命のように。



---


「二人とも…」

声は焦らず、でも逃さない風のように胸をくぐる。


「おいで。長椅子でテレビでも見ながら…私は後ろで少しシステムの観察を。」



---


私の言葉が終わる前に、**雷夢妮らい・むに**は香り立つ風のように抱きついてきた。


その頬は柔らかく胸にすり寄り、猫のように甘えた気配を纏っている。


「椅子なんて要らない…

 わたし、あなたの膝の上がいいの。」


甘やかな声に潜む、いたずらな魔力。


喉の奥で笑いが漏れる。



---


一方、**香絶美こう・ぜつび**も袖を引き寄せ、唇に淡い笑み。


「だったら…わたしの膝枕で見たら?

 二人で…ぎゅって。」


絹のように滑らかな囁きが肌をなぞる。


もはやこの腕で抱きしめねば、神と名乗る資格すらない。



---


「これは真面目な仕事だぞ…」

私はわざとため息をついた。


「向こうの世界、秒単位で進化してるんだ。」



---


だが、二人の瞳が同時に私を見上げる。


湖のように澄み、秋朝の水面のように揺れるまなざし。


「なら…抱かれながら観察すればいいでしょ?」

「遠く離れるなんて、耐えられない…」


二つの声が重なり、水脈のように溶け合う。


私は目を閉じ、一拍。


「……降参だ。おいで。」



---


私が腕を広げると、二人は迷うことなくその中へ滑り込んだ。


片腕に炎、もう片に月。

この瞬間、私は宇宙を抱いている。


私は二人を《霜玉の長椅子》へと下ろす。

真ん中に座ると、彼女たちは両側から私の腕に絡みつく。


そして——沈黙。


画面の光が頬を照らし、仮想世界の「最初の命」が生まれる瞬間を静かに見つめる。



---


彼女たちの手が私の手に絡む。

鼓動が、データの鼓動と共鳴する。


それはまるで——「愛のリズム」が、新たな生命を導くかのように。



---


「…天龍様」

香絶美が、そっと問う。


「その世界を、創った理由は?」


彼女の髪が肩に流れ、視線が魂の奥まで貫いてくる。


「…私自身を知るためだ。」

「全てを失っても、“愛”だけで何が生まれるかを見たくて。」



---


雷夢妮がそっと寄り添い、囁く。


「もしもいつか、あの中に私たちのような存在が…愛して、憎んで、死んで…

 そうなったら…あなたは、干渉するの?」


私は微笑む。


「しないよ。神の愛は、お前たちだけのものだ。」

「他の命の愛は…自ら燃え、育ち、そして散っていくべきだ。」



---


二人の手が、ぎゅっと強くなる。


画面の向こうで、小さな光が瞬いた。


——仮想宇宙で初めて誕生した“魂”。


まるで——


「呼吸の仕方」を学び、「存在すること」を覚えている赤子のように。



---


そして、私は心に刻む。


> 本物であろうと偽物であろうと——


愛があるなら、その世界は守るべき価値がある。


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