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「最弱に転生したので、最強のハーレムを作って身を守ることにした」  作者: Duck Tienz
第一章:無敗を極めるための修練
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6.伝説の秘境 3

 

 薄暗い洞窟は、まるで俗世から隔絶された異界のようだった。

 ごつごつした岩壁からは不気味な冷気が立ち込め、かすかに呼吸しているかのように揺らめいていた。


 中央には、巨大な岩壁がそびえ立ち、そこには龍が舞い、鳳凰が踊るかのような古代文字がびっしりと刻まれ、淡い銀色の光を放っている。


 天龍は静かに岩壁の前に立った。

 黒髪が冷たい風に揺れ、鋭い眼差しには燃えるような渇望が宿っている。


「これが……陰陽混玄経なのか?」

 彼は心の中で呟き、無意識に掌を固く握りしめた。


 すると、岩壁から陰鬱な気が足元にまとわりつき、同時に、肩先には優しい水流のような柔らかな気がふれてきた。


 ゴゴゴゴ……


 足元の地面がわずかに震えた。

 その瞬間、虚空から太古の彼方より響くような声が鳴り渡った。


 ——「☯ 陰陽混玄経を学ぶには、万物の交わりを理解し、変化を捉え、不変へと昇華せよ。」


 その声は、まるで数万年前から時空を越えて届いたかのように、天龍の魂に深く刻み込まれた。


 天龍は迷わなかった。

 彼は静かに座禅を組み、ゆっくりと目を閉じ、呼吸を落ち着かせながら、渦巻く気流と一体となった。


 ドクン……ドクン……


 心臓の鼓動が虚空に鳴り響き、まるで戦の太鼓のようだった。

 陰と陽の気が交互に身体にぶつかり、まるで猛る金槌が経脈を打ち砕こうとするかのようだった。


「痛い……!」

 天龍は歯を食いしばり、全身が震えた。

 汗が滝のように流れ、衣服を濡らし、冷たい石床に滴り落ちた。


 身体は今にも砕け散りそうで、嵐の大海に揺れる小舟のようだった。


 しかし、天龍は一歩も退かなかった。


 ——「☯ 陰は陽を生み、陽は陰を養い、盛衰を繰り返し、生死は絶えぬ……」


 彼はかすかな声で呟いた。

 その言葉は風のようにか細いが、鋼鉄のように揺るがぬものだった。


 一言一言を発するたびに、周囲の気流はさらに勢いを増していった。


 左手には、氷雪のように冷たい気がゆっくりと凝縮し、

 右手には、六月の太陽のように熱い気が沸き立った。


 そして両手の間に、銀黒に輝く小さな光が微かに震え始めた。

 最初は風前の灯火のように弱々しかったが、次第に力強さを帯びていった。


 ドンッ!


 意識の中で爆発音が轟いた。

 全身が混沌の渦に呑み込まれた。


「耐えろ……絶対に倒れるな!」

 天龍は奥歯を噛みしめ、瞳に不屈の光を宿した。


 彼の脳裏では、陰と陽が追いかけ、ぶつかり合い、ついには——


 調和へと至った!


 天龍は両手をゆっくりと持ち上げ、胸の前で完全な円を描いた。

 体内の陰陽の気が同時に動き出し、銀黒に煌めく混元の球体を生み出した!


 ——「☯ 陰陽を合し、混元を凝らし、無極を成せ!」


 あの古代の声が再び雷鳴のごとく轟き、彼の血脈の奥底に潜む潜在力を叩き起こした。


 ゴゴゴゴゴゴ!!!


 魂の奥底で天地を震わすような轟音が鳴り響いた。


 痛みはすべて消えた。

 混乱もすべて消えた。

 内なる世界は、風一つ立たぬ湖面のように静まり返った。


 天龍はゆっくりと目を開いた。

 その眼差しは——底知れぬ深淵のように静かであり、広大な宇宙を映し出していた。


「俺は……成功した。」


 微かに微笑み、誇りと満足感がその口元に滲んだ。


【陰陽混玄経——第一層:達成!】


 ——「最初の武功……これが、不滅への道の始まりだ!」


 天龍は心中で静かに誓った。

 胸の奥で、激しい波が打ち寄せた。


 これから待ち受ける未来は——

 燃え盛る道。

 永遠の栄光。

 すべてが、彼の前に広がっている!


 ☯


 天龍はゆっくりと立ち上がった。鋭い刀のような眼差しを持ち、彼の心は、陰陽混玄経を修得したばかりの勝利感にまだ浸っていた。

 彼はしっかりとした足取りで洞窟の中を進んだ。歩みは軽やかだが、一歩一歩に揺るぎない決意が宿っていた。まるで彼が歩むたびに、大地さえも道を開けるかのようだった。


 不思議な感覚が、全身に満ち始めた。空気の中から、宇宙そのものから、見えない気が身体へと流れ込んでくる。


「乾坤太極倒化経……。」

 天龍は心の中で静かにその名を呟いた。

 これは、天地万物と人が一体となる、陰陽も光と闇も超越した極致の武学。そこに存在するのは、無極、空間、そして時間だけだった。


 洞窟の奥へ進むほどに、空気は重く、張り詰めていった。

 巨大な岩壁の前に立ち止まった天龍は、顔を上げた。

 そこには、宇宙の運行、星々の軌道、自然の融合、万物の渦動が描かれていた。


 その瞬間、またあの古代から響くような声が聞こえてきた。


 —「☯ 乾坤太極倒化経、宇宙を運行せしめる。世界の変転を感じ、天地と一体となるべし。」


 天龍は深く息を吸い込んだ。

 彼は理解していた。この乾坤太極倒化経を修めるには、ただの武技だけでなく、自然の無限なる変化と、宇宙の永遠なる運動を深く感じ取らねばならないのだと。

 これは単なる武術ではない。世界そのものとの調和、存在そのものへの感応だった。


 彼はゆっくりと座り、両足を組み、手を膝に置き、そっと目を閉じた。

 心を沈め、己を広大な宇宙へと溶け込ませる。


 耳に届くのは、空間の静寂。

 周囲のすべての音が消え去り、ただ宇宙を満たす気の流れだけが彼を包んだ。


 今回の修行では、激しい苦痛はなかった。

 代わりに、絶対的な静寂が彼を支配した。


 肉体の感覚は次第に失われ、己という枠も消え去った。

 彼はただ広大な宇宙の一部となり、存在の境界を越えていった。


 —「☯ 乾坤の変、万物これに従う……」


 その言葉が心に響いた。

 乾坤太極倒化経を修めるには、宇宙を感じるだけでなく、すべての環境、あらゆる変化に応じて自在に変化できる存在となる必要があるのだ。


 彼の体内の気が、徐々に全身を巡り始めた。

 それは無限に循環し、外界の空気は厚く、重くなり、彼を包み込む膜のように感じられた。


 まるで彼は空間の壁を越え、虚無を通り抜け、別の次元へと踏み入れたかのようだった。


 周囲の空間は揺らぎ始め、気流が渦を巻き、巨大な太極図のような波紋を描き出した。


 —「☯ 太極の道、無極の力……万変はただ一念の中にあり。」


 天龍は心の変化をありありと感じ取った。

 乾坤太極倒化経はただの武学ではない。

 それは宇宙の真理そのもの、時間と空間と人の魂が交差する絶対の教えだった。


 そして——

 全身を巡る気流が一点に収束した瞬間。

 気の一回転ごとに宇宙が動き、息を吐くたびに新たな宇宙が生まれ、再生していった。


 ――バンッ!


 軽やかな爆発音が彼の精神世界に鳴り響いた。


 天龍は完全に新たな宇宙へと踏み込んだことを悟った。

 乾坤太極倒化経が、彼の一部として完全に根付いたのだ。


「究極……すべてが成った!」


 乾坤太極倒化経 — 第一層、完成!


 天龍は静かに立ち上がった。

 その身体は羽のように軽く、もはや重力すら感じない。


 彼はもはや、ただの一個の人間ではなかった。

 彼自身が宇宙の一部——

 無限なる宇宙そのものとなったのだ。

 天龍が最初の二つの絶技を完成させたとき、体内に強大な波動が湧き上がった。 宇宙に対する新たな理解と力強さの感覚により、彼はただ肉体だけでなく、静寂と目に見えない力をも掌握する領域に踏み込んだかのように感じた。


 突然、洞窟の静けさの中で、冷たい気配が満ち始めた。 天龍は振り返り、朧げな人影が徐々に現れるのを目にした。

 それは鋭い眼差しと、冬風のように冷たい表情を持つ男だった。

 しかし、その存在からは、まるで誘うかのような気配が漂っていた。


明星吸血道ミョウジョウキュウケツドウ

 男の声が静寂を破るように響き渡った。

 天龍は直感した。これが、自身の究極武学を完成させるための第三の試練であることを。


 明星吸血道――

 それは、敵の生命力を吸い取り、自らの血気に変えて養い、不死に至ると伝えられる禁断の絶技。


 通常の武技とは異なり、明星吸血道を修得するためには、生命と死、精気と死気、それらが交錯し循環する真理を理解する必要があった。


 突如、岩壁が動き、光り輝く円が姿を現した。

 その中では無数の星々が煌めき、まるで銀河のように広がっていた。

 これこそが、明星吸血道の始まりの地だった。


 天龍は円の中へと足を踏み入れた。

 身体は内面から高揚し、全身の血流が流れ、回り、果てしないエネルギーの循環を感じ始めた。


 ――「生命と死は、同じ硬貨の裏表に過ぎない。」

 再び頭の中に声が響く。そこには疑いも迷いもなかった。ただ、厳然たる真実だけがあった。


 ――「明星吸血道を極めるには、死気と生気が互いに転化しうることを受け入れよ。」


 この言葉は、天龍の心に雷鳴のように打ち鳴らされた。

 その瞬間、彼は万物の生命を感じ取った。草木、獣、人間、そして広大な宇宙そのもの。


 天龍の体は、周囲の精気を何の抵抗もなく吸収し始めた。

 彼の一呼吸一呼吸が天地の精華を取り込み、見えざる力をさらに増していった。


「明星吸血道は単なる敵の生命を奪う術ではない。」

 天龍は心の中で思った。

「それは...生命の交換。敵の力を己のものとする道だ。」


 だが、そこにはもう一つの試練が待っていた――

 それは「血気」の制御だった。


 血気は恐ろしいエネルギーであり、戦争の狂気と死の枯渇を孕んでいた。

 過度に血気を吸えば、自ら虚無に堕ち、二度と戻れない深淵に引きずり込まれてしまう。


 天龍は右手を掲げ、目を閉じた。

 掌から黒い血気が立ち昇り、渦を巻きながら集まっていく。

 やがてそれは、燃え盛る赤い星のような輝きを放つ球体へと姿を変えた。


 その瞬間、天龍はエネルギーの高揚を感じた。

 血気を吸収するたびに、彼の肉体はさらに強靭となり、怒涛の海を越える剛船の如く変わっていった。


 だが彼は理解していた。

 明星吸血道を使用するたびに、細心の注意が必要だと。

 そうでなければ、力に飲み込まれ、自らを滅ぼすことになる。


 ちょうどその時、冷たい感覚が天龍の心を貫いた。

 彼は、自らが生命のない、死のみの門をくぐろうとしているのを感じた。


 これは、天龍がこれまでに直面した中で最大の試練だった。

 だが、それこそが不死へ至る道だった。


 ――ドン!


 洞窟全体が震えた。

 天龍は、死の門をくぐり抜けた瞬間、完璧な明星吸血道を体得した。

 それは彼にとって、絶対無敵の武器となった。


 天龍はゆっくりと目を開き、無限に広がる天空を見上げた。

 胸中には揺るぎない自信が満ちていた。


 明星吸血道、完成――

 彼は今や不死に等しく、もはや何者にも阻まれることはないのだった。

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