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Episode 175

 変異ゾンビの群れの咆哮が、錆びついた金属の廊下全体に響き渡る。耳膜に戦太鼓を叩き込まれるみたいな音だ。赤い警告灯がチカチカ点滅し、煙と血の匂いが鼻を突き刺してくる。


 奴らはぎっしり詰まってる。目は燃える炭みたいに真っ赤、皮膚はただれ、手足はやたら長く、走る速さは残像しか残らない。


 オレは先頭を走り、十数人の女たちが必死についてくる。みんな顔が真っ青だ。ひとりが声を裏返して叫んだ。


「もう無理! 多すぎる! このままじゃ食われちまう!」


 オレは後ろを振り返り、奴らの咆哮をかき消すように怒鳴った。


「よく聞け! 前方に小型戦艦がある! あれが唯一の生き残るチャンスだ! 何としてでも乗れ、いいな?!」


 銀髪の女が唇を噛み、涙をにじませながら言う。


「じゃああなたは? あなた一人で残るつもりなの? 置いていけないわ!」


 オレは口元を歪め、腕を横に振る。塔みたいにデカいゾンビを真っ二つに裂き、まだ落ちる前に黒煙が立ちのぼる。


「言い訳はいらん! オレには手がある。お前らは生き延びるだけでいい!」


 赤髪の女が泣きながら走り、叫ぶ。


「嫌だ! 死ぬなら一緒に死ぬ! 誰も置いていかない!」


 オレは雷鳴みたいな声で怒鳴った。


「命令だ、走れ!!」


 その声で廊下がビリビリ震える。女たちは歯を食いしばり、また走り出した。


 オレは立ち止まり、群れに向き合う。拳を握る。


 ドン!ドン!ドン!


 ゾンビ三匹が爆散した。オレがただ、くしゃみをしただけで。血と脳漿が壁に飛び散る。オレは眉をひそめた。


「チクショウ、くしゃみだけで倒せるとか…」


 息をつく間もなく、さらにデカい群れが津波みたいに押し寄せる。


 前方で戦艦がエンジンを唸らせ、青い炎を吹く。オレは叫んだ。


「急げ! 船に乗れ!」


 赤髪の女が振り向いて怒鳴る。


「嫌! あなたが来なきゃ私たち行かない!」


 オレは歯ぎしりして腕を振った。


「先に行け! すぐ行く!」


 別の女がすすり泣く。


「でも…あなたは大丈夫なの?」


 オレは鼻で笑い、答えない。代わりに戦艦全体を掴み上げた。


 ドガァン!


 オレは米袋を持ち上げるみたいに、戦艦を台座から持ち上げる。女たちが絶叫する。


「嘘でしょ?! 戦艦を持ち上げたの?!」


 オレは氷みたいな目で睨む。


「いい加減にしろ。まだ騒ぐなら、一人ずつ…妊娠させるぞ」


 女たちは一瞬凍りつき、顔を真っ赤にする。オレは戦艦を思い切り宇宙へ投げ飛ばした。青い光跡を描いて流星みたいに飛んでいく。


 オレは息を吸い込む。


「ふん…久しぶりだな。本気を使うのは。0.001%で十分だ」


 左腕を上げる。ネクサステルニティの指輪から銀の光が溢れ出す。ゾンビたちが迫る。オレは指を鳴らした。


「パチン」


 ドォン!!


 銀光が走り、全てを呑み込む。ゾンビどころか隣の惑星まで消し飛ぶ。


 オレは手を払って口元を歪めた。


「おっと、ちょっと強すぎたな」


 …


 オレは船に転移する。中で女たちが呆然として、目を見開いている。ひとりが震え声で訊いた。


「ねえ…さっきのって…本当にあなたがやったの?」


「まあな、指パッチンしただけだ」オレは肩をすくめる。


「指パッチンで惑星消滅?! 」女たちが一斉に叫ぶ。


 オレは冷たく笑う。


「ちょっと力入りすぎただけだ」


 女のひとりが光る指輪を指さす。


「その指輪…いったい何?!」


 オレは真顔で、ゆっくりと説明する。


「ネクサステルニティ。至高の界器のひとつだ。単なる強化じゃない。鍵であり、門だ。オレの本当の力を封じるためのな。そうしないと…息するだけで銀河が吹っ飛ぶ。さっきのは0.001%。分かるか、なぜオレが抑えてるか」


 空気が鉛みたいに重くなる。女のひとりが囁く。


「あなた…人間じゃないのね…」


 オレは壁にもたれて溜息をつく。


「人間だったことはない。人間みたいに生きることも許されなかった。でもその話は長い。今はまず安全圏に抜ける」


 オレは横目で、ぼそっと言う。


「ところで…お前ら胸張ってるな。母乳でも出るのか?」


 女たちの顔が一斉に赤くなり、声を揃える。


「もし望むなら、あげるわ。もっと…それ以上でも」


 その直後、十数人が服を脱ぎ捨てる。オレは呆然とする。肌に古代文字の光が浮かび、冷たい輝きを放つ。


 オレは言葉を失う。


「まさか…銀河女域…お前ら…」


 彼女たちの目が赤く光り、野獣みたいな欲望を滲ませ、低く唸る。


「おめでとう、あなたは捕まった。これから死ぬまで私たちと交わるの」


「なんてこった、逃げられたと思ったのに…」オレは顔を固まらせる。そうして、自分がとんでもない罠に飛び込んだことを悟った。



 奴らはじりじりと迫ってくる。目は飢えた獣みたいに真っ赤。金属の床に「コツ…コツ…」と靴音が響き、オレの心臓に直接突き刺さる。紫髪の女が通信ボタンを押し、レーダーに艶めかしいかすれ声が流れる。


「最高母神さま…ディエト・ニンを発見しました。今、女域へ連れて帰ります」


 オレは一歩後ずさる。だが背後は冷たい艦内ドア。鋼に背中を押し付け、汗が滲み、顔が真っ青になる。オレは叫んだ、泣き出しそうな声で。


「なぁ…勘弁してくれ! オレが処女を奪えるとか、妊娠させられるとか知ってるんだろ? でもな、あんたらみたいな大群の欲を全部満たすなんて無理なんだよ!」


 金髪の女がゆっくりと歩み寄り、そして突然オレを床に押し倒す。耳元で荒い息を混ぜながら囁く。


「そうよ。私たちは無限の欲望を抱えている、決して消えない淫らな渇き。女域銀河では男なんて弱い種で、誰ひとり私たちを満たしたことがない。でもあなたは違う、ディエト・ニン…」


 彼女の舌がオレの首筋から顎へと長く這い上がり、唇の端で止まる。手はオレの股間へ滑り、まだ勃ってもいないのに50センチのそれに触れる。


 女は震える声で、崇拝と渇望が入り混じった調子で囁く。


「あなたはもう証明した…最高母神の末娘、セリナ姫の処女を奪い、受胎させた唯一の男。偶然じゃない…運命よ」


 オレは身震いし、歯を食いしばる。


「やめろ…デタラメ言うな! セリナは…あんたらと関係ない!」


 金髪の女は笑い、口元を耳に寄せ、刃のような言葉を吐く。


「違うわ。セリナこそ生き証人。あなたは誰も成し遂げなかったことをやった。あなたこそ女域の預言にある“全二千兆の女を処女喪失・受胎させる唯一の男神”なの。分かった? あなたなのよ!」


 そう言いながら彼女はオレの服を一枚ずつ引き裂き、硬くなり始めたものを凝視する。冷たい手でオレの睾丸を掴み、そっと握ると全身が跳ねた。


 オレは歯ぎしりし、唸る。


「クソッ! 無理だ…お前、そいつを起こしてるんだぞ!」


 その時、艦内に鋭い声が響き渡った。


「おい! 至高貴族の夫に手を出すつもりか? 彼に触れるな! まず私たちが先よ、その後にしなさい!」


 その声…セリナだ!


 艦内が一瞬で静まり返る。金髪の女はハッとして手を離し、震えながら頭を下げる。


「も、申し訳ありません姫様…欲望に目がくらみました…お許しを…」


 7Dホログラムのセリナが一歩踏み出し、瞳が光る。声は威厳を帯び、少し嫉妬も混じる。


「分かればいい。彼は私たちのもの。誰にも奪わせない」


 彼女はオレを見下ろし、口元をわずかに歪めた。


「ディエト・ニン…今度こそ逃げられないわよ。私たち、あなたが帰ってくるのを待ってた」


 リサンドラ・フォーゲルも続ける。


「ねぇ、早く戻ってきて、ダーリン。私たちの渇きを満たして…私たちに子を宿して、イカせて…」


 ピッ!ピッ!ピッ! 投影が消えた。


 オレは呆然とし、心臓がドクドク鳴る。目の前には女域銀河の十数人の女が囲み、背後には「至高貴族の夫」と呼んだセリナの7Dホログラムが揺れている。


 世界全体が巨大な罠に変わったみたいだ。そしてオレの旅はまだ終わっちゃいない。


この章は少し短いようですが、生活のためにまだお金を稼ぐために外出しなければならないことをご理解ください。ストーリーの公開頻度が不定期であるため、遅れが生じています 相互作用が失われました。

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