Episode 151
俺は立っとった。
あの化け物の頭、まだクネクネしとる。まるで逆流する川に浸かっとるガガブタの茎みたいにな。
…まだ死んどらん。
…まだ分かっとらん。
…まだ知らんのや、自分が何に相手しとるかを。
ちょうど、俺が初めて拳を上げたあの日みたいや。
誰も信じとらんかった。
なんで、こんなヘラヘラ笑っとる顔した奴が、一つの文明をぶっ壊せるんかってな。
> 「粘るなあ…」
って、俺は息吐きながらつぶやいた。
まるで、昔の感覚が…ふと蘇ってくるみたいに。
---
肩に積もっとった砂をパパッとはたきながら、横で浮いとるドローンカメラに目を向けた。
おそらく、まだ中継しとる。
地球のどっかで、顎震わせながら見とる連中に向けてな。
> 「まだ撮っとるんか? ほな……最後までちゃんと撮っときや。あとで……編集いらんようにな。」
---
化け物は、まだ倒れとらん。
半身が、無理に熟れたドリアンみたいにバッキバキに割れとる。誰も食いたがらんやつや。
その目を見た。ギラギラしとるのに、どこか空っぽやった。
問いかけてくるみたいやった。
> 「お前……何者や?」
俺は、薄く笑うだけで、何も言わんかった。
> 「もう、時間がない。」
そう心の中で呟いて、空を見上げた。
黒雲が、ぐるぐると渦巻いてきとる。
まるで空そのものが顔隠して泣いとるみたいや。
これから……何かが世界から消えることを知っとる顔で。
---
俺は軽く頭を下げて、膝を沈めて、バネみたいに跳ね上がった。
空へ――真っすぐに。
この感覚、久しぶりやな。
空気が薄ぅて、風が頬をムチで打つようにビシバシくる。
心臓も、凍りそうやった。
雲の層に突っ込んで、両腕を広げる。
深く、心の奥底――そこにはもう怒りも悲しみもない。ただ、ひとつだけあったもんを引っ張り上げる。
「責任」っちゅうもんや。
口から、古びた呪文がポロっとこぼれた。
まるで、田舎のじいちゃんがため息混じりに言う言葉みたいやった。
> 「天書奥義……雷牢爆星撃。」
---
雲が渦を巻き始める。
銀の龍みたいな稲妻が、天でじゃれあっとる。
俺の手のひらに――雷が凝縮してくる。
紫と灰の混ざった電気の塊。
速すぎて形すら見えん。
感じとった。
心臓の一拍ごとに、力が集まる。
一度集まれば、一つ記憶が閃く。
> 「この技はな……“終わり”っちゅうもんを信じとる時にしか使えん。」
---
下を見た。
化け物はまだ這うとる。
でももう、最初みたいに獰猛ちゃう。
ただ……本能だけで生きようとしとる。
俺は少し首を傾けて、氷張った湖みたいな目で見下ろした。
> 「俺が降りたら、這うこともできんようになるぞ。」
---
俺は落ちた。
いや、落ちるっちゅうより……火柱のごとく、突っ込んだ。
スピード?そんなもん、もはやどうでもええ。
自分が何かを“感じる”っちゅう概念さえ、もう置いてきた。
地面まであと一秒――
目と目が合った。
その目は、もはや敵の目ちゃうかった。
それは、かつて俺を見た“あの人たち”と同じ目やった。
俺に殺されたんやない。
“俺のことを、最後まで理解できんかった”ことに気づいた時の目やった。
> 「……じゃあな。」
俺はボソッと呟いた。
> 「ほんまは朝飯食いたかったけどな……まあ、しゃーないか。」
---
ドガァァァァァンンンンンン————!!!
空と大地が触れた瞬間。
雷の槍が、天から突き刺さった。
空は……真っ白になり、
地は……砕けた。
時さえも……音を失った。
---
一拍――
それだけ。
それで充分や。
「ボガアアアアァァァァン————!!!」
衝撃波が海面を引き裂き、
砂の層を、紙切れみたいに吹き飛ばす。
雷の花が咲いた――名もなき空の真ん中で。
世界中の放送は……真っ白になった。
音は途切れた。
残ったのは、息を詰まらせる視聴者の呼吸音だけや。
---
誰にも分からん。
何が起きたかなんて。
ただ、こういうことだけは言える。
ひとりの男。
ひとつの一撃。
ひとつの鼓動。
ひとつの星が、墜ちて――そして、消えた。
---
俺は……まだ、ここにおる。
無事とは言えんけどな。
けど、生きとる。
> 「天書奥義……」
俺は静かに息を吐いて、独り言みたいに呟いた。
> 「……強いのは強いんやけどな。毎回使うたびに……なんか、ぽっかり空いた気分になるんや。
誰も耐えられへん。一番弱い技ですら、や。」
俺は手のひらを見下ろす。まだ、ぬくもりが残っとった。
> 「ほんまはな、一撃食らっても、生き残ってくれる奴が……いてほしかっただけや。
それだけやのに……たぶん、それは……欲張りすぎたんやろな。」
爆発の音はもう消えたのに、耳はまだジンジンしとる。
まわりが……怖いくらい静まり返っとる。
目の前の海は、もう海やない。
煮え立っとる。煙立っとる。
黒い泡がぷかぷか浮いて……まるで灰が水の上に降っとるみたいや。
砂も色を失って、血と、焦げた埃と……肉が混ざり合っとる。
あいつの肉や。
もう形なんてない。
呼吸もない。
何も……残っとらん。
俺は立ち尽くしとった。
嬉しくもない。悲しくもない。
昔みたいに勝った喜びも……湧いてこん。
ただ、空っぽ。
そして……疲れとる。
---
俺は目を上げた。
海も空も見ん。
もっと向こう、雲の裏側……ずっと先を見た。
普通の人には見えんけど、俺には見える。
大気圏の外に浮いとる、ひとつの影。
冷たい影。
こっちを見下ろしとる……まるで、ゲームでも観戦しとるかのように。
> 「ついに……あいつが出てきたか。」
そう呟いたのは、きっとあいつらの通信機の中や。
俺には聞こえんけど……感じたんや。
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分かっとった。
実は、ずっと前から分かっとった。
俺が何かやるたびに、誰かが記録し、分析し、そして……次の何かを準備しとる。
人かもしれん。
……人じゃないかもしれん。
でも今は、そんなこと考えとる暇ない。
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ヒールの音が、びちゃびちゃの板の上を「コツコツ」と鳴らして近づいてきた。
聞き覚えのある声や。
ちょっと怒っとる、ちょっと震えとる、でも一番強いのは……心配の色。
> 「ディエット!何突っ立っとるのよ!?早く中に入って!!」
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振り返った。
アンザクラやった。
髪はボサボサ、目も赤い、顔も赤い――
恥ずかしさやない。
あれは、俺を探して走り回ったからや。
この焼け跡の中を。
俺は苦笑いして、片足を上げるような素振りした。
> 「いや、今ちょうど……戻ろう思うたとこ。」
……けど、足は根っこでも生えたみたいに動かん。
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風が吹いた。
雷の焦げた臭い、焼けた肉の臭い、火の残り香……
全部まだ、空気の中に漂っとる。
俺は息を吸った。
……苦ぇ。
---
遠くで、何人かが隠れとった場所から這い出してきよった。
カメラのクルー、通信兵、あのオレンジ髪の助手も……
誰もかれも、地面にへばりついたみたいやった。
まるで死んでて、生き返ったばっかりみたいに。
どの顔も、目を見開いて、幽霊でも見たかのような顔。
そして、スピーカー越しに声が響いた。
震える声で。
> 「……我々は今、ひとりの男が、素手で……惑星級の異獣を殺した瞬間を目撃しました。」
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俺は背中を向けて、水に飛び込んだ。
一歩ずつ、桟橋に向かって進む。
水は冷たかった。
波が太ももに当たり、腹に当たり、胸まできて……
それでも俺は、普通に歩いて岸に上がった。
ゆっくり、静かに。
まるで悪夢から抜け出すみたいに。
いや……もっと言えば、自分自身から抜け出すような足取りで。
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アンザクラが駆け寄ってきた。
目はまだ潤んどる。
俺の手をぎゅっと掴んで、震えながら言うた。
> 「アンタ、無事なん!?……何考えとるの!? そんな技、もし死んどったらどうすんのよ!!」
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俺は少しだけ見つめた。
汗で濡れた髪。
けど、あの香りは……変わらんかった。
俺はそっと手を伸ばして、頬を撫でた。
まだ、指先に電気が残っとった。
> 「死なんさ。
……あんたと結婚するまでは、な。」
---
アンザクラの顔、真っ赤になった。
怒っとるんか、照れとるんか……たぶん、両方やろな。
---
その背後から、拍手の音が聞こえてきた。
最初はまばら……
それがだんだん大きく、強く、重なっていく。
歓声ちゃう。
生き延びた者たちの……静かな共鳴や。
---
誰かがスマホでニュース流し始めた。
> 「西側の海岸からの映像が現在、世界中に生中継されています……」
「“ディエット・ニン”とされるSランクの個体が、たった一撃で宇宙生命体を討ち倒しました」
「そのエネルギー値は、あらゆる基準を遥かに超えています――」
---
俺は息を吐いた。
> 「……もうバレたな。」
---
また風が吹いた。
空にはまだ黒雲が残っとる。
焦げた匂いは、まだ空気の中に染み付いとる。
海面はもう波ひとつ立たん。
静か。冷たい。
でも……
俺の中には、今……嵐が生まれようとしとる。
なぜなら……
今日を境に、
――もう何も、普通ではいられんのやから。
まったくなあ……
この世には、いくら生きとっても分からんもんがある。
たとえばな……
死ぬか生きるかの修羅場をくぐり抜けた人間が、最初に欲しがるもんが……
権力でも、金でも、名声でもないっちゅうこと。
……一番に欲しいのは、
誰かの腕の中で、ただ寄りかかれる……そんな場所なんや。
---
地球から何百万光年も離れた、遥か彼方の空の向こう――
何かが……うごめいた気がした。
目には見えん。
でも、心がそれを感じとった。
それが、目を開けた。
人の目でもない。獣の目でもない。
それは……《始原の目》。
この宇宙が「終わり」っちゅう概念を知ってから、
たった二度しか開いたことのない目や。
一度目は、すべてが古代ブラックホールに飲まれたとき。
二度目は……
さっき俺が、あの異獣の心臓に拳を突っ込んだ瞬間。
---
物理も哲学も、別に得意ちゃう。
けど……その時、心臓の鼓動がズレた。
まるで、どっか遠い場所から、誰か――いや、何かが
俺を見とる気がしたんや。
「秩序を変える存在」としてな。
---
……まあええわ。
そんなこと考えとったら、頭痛くなるだけや。
---
海風が首筋をなでていく。
俺は割れた岩の上で息を整えとった。
手にはまだ、生々しい血のぬめりが残っとる。
雷の焦げた匂い、生焼けの肉の臭い……髪一本一本に染み込んどる。
そしたら、アンザクラが隣にすっと座ってきて、
肩に頭を預けてきた。
何も言わん。
けど、鼓動が……いつもより速い。
しばらく経ってから、小さな声で囁いた。
> 「ねえ……結婚、早めにしちゃおっか。」
---
俺は顔を向けた。
あの目――冗談でもないし、重たくもしすぎてない。
ただ、まっすぐで……正直な目やった。
---
> 「戦争のあと、血のにおいのあと、死のあと……
人が一番求めるものって、結局“誰か”なんだよね。」
声にはせんかったけど、
その想いは……胸に深く刺さった。
---
俺は口下手や。
でも、ひとつだけ、できることがある。
それは、
アンザクラの手をしっかり握ること。
まるで、手を緩めたら、また引き離されるみたいに。
> 「ああ。結婚しよう。
何が起きても、後悔せんためにな。」
そう答えた。
ふたりとも、それからしばらく黙っとった。
聞こえるのは……波の音。
遠くのヘリの音。
まだ更新され続けとるニュースの声。
> 「Sランク個体・ディエットニンが、宇宙生命体を素手で一撃にて討伐」
「計測されたエネルギー放出量は、現在の限界を超え……」
---
みんなが、少しずつ動き出した。
Zarisの兵たちが到着して、いろんな装備と書類を持って降りてきた。
黒服の高身長の男が、俺たちのところに来て、命令書を差し出す。
> 「ディエット・ニン、アンザクラ。政府の決定により、今この瞬間からZarisへの正式加入となる。」
---
俺はゆっくりと男を見上げ、息を吐いた。
> 「地位はいらん。必要なのは、チームや。」
---
男はうなずいた。
> 「新しい部隊にはまだ名前がない。
けど、君たちはダン・シュエン、リー・トゥアンと共に行動する。
四人で、“誰も受けようとしない任務”を引き受けることになる。」
---
俺はアンザクラを見た。
彼女は目を細めて、ふっと笑った。
> 「じゃあ……私たちの新婚旅行、Zarisってことね?」
---
俺は吹き出した。
けど、心の中は少し重かった。
あの異獣の目――
……あれが終わりじゃないって、分かっとるからや。
---
風が顔をかすめていく。
俺は空を見上げた。
誰も気づいとらん。
……でも、俺だけが見えた。
空に走るひと筋のヒビ。
鏡が割れたような、細くて危うい線。
爆発せん。
ただ……崩れ落ちてきとる。
ゆっくりと。
まるで、九層の雲から一滴の雨が落ちようとしとるみたいや。
---
> 「……来るぞ。」
---
アンザクラも、俺が見とる方向を見た。
> 「何? なにが見えるの?」
---
俺は、答えんかった。
言っても……誰にも理解されへん。
---
ただ、分かっとるのはひとつだけや。
これからの毎一秒が――
愛するための一秒。
生きるための一秒。
そして、“人間であること”を守るための一秒。
……だって、
俺たちは今から――
地球より遥かに大きな戦いに巻き込まれるんやから。
それはもう、
“愛”さえも試されるほどの規模で。
遠く──
想像したどんな場所よりも、もっと遠く。
光さえ逃げ出し、時間もため息をついて止まるような場所。
何かが…
身じろぎした。
---
神でもない。
魔でもない。
それはただ…宇宙で最も古い静けさに、
名がついたもの。
> 古代神獣──玄亀魔神
---
その名を…紙に書く者はいない。
紙は燃えるし、
口は裂け、
魂は砕けるから。
---
かつて、人間の少女の歌声を聞いただけで──
星座ひとつ、丸ごと飲み込んだことがあるらしい。
科学者たちは“原初の均衡力”と呼び、
神々は“光が生まれる前の闇”と呼んでいる。
でもオレは…
オレはただこう呼ぶ:
> 「心の鼓動を知ってるヤツ」
---
なぜなら──
あいつは、オレの心音を聞いた。
力じゃない。
血の流れでもない。
ただただ…誰かを想いすぎて、自分が溶けてもいいと思える、
そのときにしか出ない…震え。
---
その震えは、
アンタの寝息くらいにちっぽけだったけど──
あいつの中にあるネクサスター二ティの石を…そっと震わせた。
---
そして地球では──
ばあちゃん家の裏庭で、オレはパンツたたんでスーツケースに詰めてた。
横でアンタ、髪まだ濡れたまま、バスタオル巻いて…
なんと、透け透けの赤いレースブラを取り出してこう言った:
> 「ほら、昨日アンタが言ったセクシー下着。持ってくからね?」
---
オレ、目ぇまん丸にして笑った。
> 「持ってけとは言ったけど…まさか裏庭で披露するとはな」
> 「だってさー、サラクにレース禁止って書いてあったら困るでしょ?今のうち確認!」
---
オレ、また笑う。
この子な、春の陽みたいに柔らかいかと思ったら、
次の瞬間には台風12号。
一緒にいたらオレ死ぬわ…でもいなきゃ生きてられん。
---
二人でスーツケース持って車に乗り込む。
目的地:サラク──組織ザリスの本拠地。
でもオレたちにとって、あそこは…
「愛する」と「生きる」の間にある、つなぎ目みたいなもんや。
---
サラクは、都市なんかじゃない。
あれは──
人間がまだ夢にも見たことない、“何か”。
---
空を飛ぶビル。
空中を歩く人々。
サトウキビジュース運ぶロボット。
透明なスクリーンには、空の向こう側が映っとる。
まるで昨日、100年後から落ちてきたような場所や。
---
新兵区に入れられたオレたち。
配属もまだ。役割も不明。
ただ、4人の新兵が同じ班にされた。
---
陽炎──いや、今は「ドクター・ダウン」と呼ばれてる。
医務室で、胸にコード差し込まれて寝とった。
オレ、そっと覗いた。
手が…わずかに動いた。
> 「生きとるな…」
オレ、ぼそっと言った。
---
医者いわく、彼の神経機械が自分で修復し始めとるらしい。
あいつはな、簡単には死なん。
地獄の門番みたいな奴や。
殺されても、「あと三分遅く死なせろ」って言い返すタイプ。
---
隣の部屋。
李・ツアンは、設計図やらコードやら、
まるで先祖の腹から落ちてきたようなボロ本に囲まれてた。
額に汗。手が震える。
けど目は…火星みたいに燃えとった。
> 「オレは速さなんかいらん」
あいつ、目も上げずに言った。
「誰にも、追いつかれたくないだけや」
---
本のタイトルは:
> 『開放──李一族の核心』
李家の中で失われた何百年の秘書。
血に眠る“加速遺伝子”を全開放する方法が記されとる。
けど、試したやつは皆、燃えた。
---
オレは彼を見て、不思議な気持ちになった。
羨ましさでもなく、不安でもなく。
ただ…
星が昇る瞬間を見た人間の、あの感覚。
---
そして残るは──
オレと、アンタ。
図面もない。
機械もない。
神様みたいなご先祖も、おらん。
でもオレたちには──「お互い」がある。
---
で、その「お互い」がな──
夜になると布団の中で…どれだけ大きいか思い知るんや。
---
その夜、新兵寮の604号室。
カーテンが揺れ、
卵の黄身みたいな灯り。
オレは手を枕にして寝転んで、アンタはオレの腹の上に頭のせてた。
> 「明日から訓練やね」
小さく、アンタが言う。
「怖い?」
---
オレ、髪をそっと撫でる。
グレープフルーツみたいな香り。
> 「怖くない。でもな、ちょっとドキドキするわ…
訓練は越えられる思う。
でも…毎晩こうして一緒に寝てたら…乗り越えられるかはわからん。」
---
アンタ、くすっと笑って──
そっと手を腹に滑らせて、
指で遊ぶみたいに円を描いた。
> 「……越えてみる?」
---
オレ、唾を飲む。
部屋中が、オレの心臓の音になった。
---
その夜は…
ほんまの意味で、オレたちが「ひとつ」になった初めての夜やった。
触れるたび。
吐息が混じるたび。
沈黙の間すら…何か大きなものの序章みたいで。
---
言葉は、そんなにいらんかった。
ときに…二つの口が必要なのは、言葉やなくて──
同じ声で、あえぐことや。
---
アンタが寝落ちて、
額に汗。髪は乱れて。
唇がほんの少し開いて、まだオレの名を呼びかけとるとき──
オレ、ふと思った:
> 「あれ?オレたち…まだ、危機が始まったこと知らんかったよな?」
---
サラクの空に──
微細なひび割れがひとつ。
誰にも見えん。
どんなカメラにも映らん。
でもオレの背骨が、それを感じた。
---
玄亀魔神──目を開けた。
---
怒ってもいない。
喜んでもいない。
ただ…
「ディエット・ニン」っていう、
鼓動を響かせたちっぽけな生き物に──興味を持っただけ。
---
オレは、自分が何者か知らん。
どこへ向かうかも、わからん。
でも、ただひとつだけ──
> 明日は訓練初日。
愛する人が、オレの腕の中で眠ってる。
そして…宇宙が、ゆっくりオレに顔を向け始めている。
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