Episode 103
【ご報告とお願い】読者の皆さまへ
いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます。
Dukku Tien Nguyen です。
この作品は、何もないところから始まりました。
拙い文章ながらも、ここまで続けてこられたのは、ひとえに読者の皆さまのおかげです。
毎日の感想、ブックマーク、評価ポイント…ひとつひとつが、何よりの励みになっております。
そして今、ひとつの夢があります。
それは――
この物語を、いつか書籍化、コミカライズ、あるいはアニメ化という形で、多くの方に届けることです。
もちろん、それが叶うかどうかは分かりません。
ですが、この「小説家になろう」という素晴らしい場所で、多くの方に支えられながら一歩一歩進む中で、
「もっとこの世界を広げたい」
「このキャラたちを動かしたい、声をつけたい」
そんな気持ちが、日に日に強くなっています。
もし皆さまが、この物語に少しでも心を動かされたのなら――
ぜひ、感想や評価、レビューを通じて応援していただけたら幸いです。
あなたの一声が、物語の未来を変えるかもしれません。
どうか、今後ともこの物語をよろしくお願いいたします。
心より感謝を込めて。
Dukku Tien Nguyen
空がざわめいていた。
私は──いや、“天龍”の意識が目覚めた私は、数百の視線と息遣いが渦巻く中心に立っていた。
三歩──そして一瞥で。
王家の若武者たちは、全員地に伏した。
その瞬間、時が凍った。
胸の鼓動が響く。
──あるいは、彼女の胸の鼓動か?
ヴィン… 王小賢。
王有林の一人娘が、片膝を床につき、荒い息を吐いていた。
目を見開き、敗北という現実をまだ受け入れられない。
なんて、美しい……。
まだ誰にも摘まれていない──剣気の森に咲いたばかりの、野生の花。
そして、私は近づいた。
右手を伸ばし──迷いも遠慮もなく、彼女の身体を軽々と抱き上げた。
まるで、それが羽衣であるかのように。
> 「この美人──
未来、国を傾けるぞ。
奪わねば、天下に奪われる。」
---
ざわっ──
誰かが息を呑んだ。
風さえも、一瞬黙った。
小賢が私の腕の中で暴れる。
しなやかな身体、白い足が私の太ももを蹴った。
だが──
私はあえて感じないふりをした。
彼女の体温が、熾火のように熱いことも。
太ももに触れた布の湿り気が、汗だけなのか、それ以外なのかも。
> 「お、おろしなさい!この──この変態っ!」
そう叫びながらも、
彼女の腕は──恐怖か、それとも本能か──
そっと私の肩にすがっていた。
---
心の内、私は叫んだ。
> 「バカか天龍!ここは道場だぞ!
みんな見てるんだ!
彼女の父まで──!」
だが、脳内に返ってきたのは、低く濁った笑い声。
> 「小僧……
なぜ一生平凡か、教えてやろう。
“欲しいものを奪わない”からだ。
女も──“奪う”ものだ。
世界が奪う前に、な。」
---
私は一歩、また一歩──
小賢は抵抗し続けた。だが、抜け出せない。
彼女の白い武道着が揺れる。
太ももに感じる布の柔らかさ。その奥の湿熱が──たまらない。
手を離すべきだ。
だが、私は──離したくなかった。
---
我らは、長老席の前まで歩み寄る。
王有林の視線が私を突き刺す。
私は頭を軽く下げたまま、彼女を抱いたまま言った。
> 「後輩・楊滅人──
将来の義父上に、ご挨拶申し上げます。」
---
爆発音が響いた。
──いや、内力ではなく、周囲のざわめきだった。
> 「な、なに言った今!?」 「義父!?」 「まさか…結婚する気か!?」 「頭おかしい!」
---
小賢が私の襟をつかみ、顔を真っ赤にした。
> 「おまえ…最低!絶対に…許さない!
おろして!顔が…熱いっ!」
> 「それは…俺に抱かれているから?
それとも──
他の“想像”をしてるから?」
私は彼女の耳元にささやいた。
風のように、甘く。
---
王有林が立ち上がった。
その気迫が、空気を震わせる。
> 「小僧ッ!貴様──よくもそんな口を!」
彼の怒気に、誰も息を飲んだ。
だが私は、彼の目を見て、薄く笑った。
> 「大それた勇気ではありません。
ただ──天命が私を選んだだけ。
それに、この娘…怒っているようで、顔が赤いのは──他の理由でしょう?」
---
沈黙。
深い、静寂。
私は感じる。
彼女の震えが、怒りなのか──
それとも、私たちの間に走る熱なのか。
> 「貴様に…王家の敷居は、またがせん!」
王有林の声が、地を揺らした。
私は肩をすくめ、背を向ける。
彼女を抱いたまま。
> 「ならば──王家は結構。
私は“龍家”を興す。
そのとき…王家のほうから、縁談を持って来るさ。」
---
道場の奥、応接の間へと戻る途中。
私は腕に力をこめた。
彼女は、もう抗わなかった。
そして──
彼女が小さく、息を漏らす。
> 「……ほんとうに、
私と…結婚したいの?」
私は答えなかった。
ただ、彼女をそっと下ろし、目を合わせた。
手を、彼女の衣の裾に沿ってなぞる──
一瞬だけ。
それだけで、彼女は震えた。
> 「結婚じゃない。
“お前が、嫁ぎたくなるようにする”だけさ。
そして──
初夜は、この天下を揺るがす序章となる。」
> 「ちっ…
あの抱き方、どこに手を置いてるのよ…っ!」
王小賢は、心の中で歯ぎしりしていた。
だが──
私は、何をしているのかよくわかっていた。
一歩ごとに、彼女の太ももの柔肌を「計る」ように歩く。
白い武道服の布地は薄く、湿り気を帯び、そして──柔らかい。
私の手は彼女の膝裏にそっと添えられている。
滑らかで細いそのラインが、彼女の小さな震えを伝えてくる。
そして腰──
私の掌は、彼女の下腹部にそっと触れ、熱を帯びた肌の呼吸を感じていた。
---
> 「ねえ…
もうちょっと、離れてくれない…?」
小さな声で、彼女が言う。
私はすぐには返事をせず、
かわりに耳元へと唇を近づけ、熱い吐息を這わせた。
> 「でも…離れたら、落ちるだろ?
そしたらその立派な胸が…俺の顔面を潰しちゃうかもな。
俺はまだ、快楽で死ぬ覚悟はない。」
---
> 「この…っ!!」
心では怒鳴っていても、彼女の唇は震えるだけ。
私は続けた。
> 「動くたびに──
へそから内腿へと、熱が流れていくのが分かる。
その武道着の下、今…下着、着けてるか?
もしそうなら、きっともう…肌に貼りついてるはずだ。
びしょびしょで。」
> 「…っだまれ!」
彼女は私の襟を掴んだが、もはや暴れなかった。
私は微笑んだ。
> 「ああ、王令嬢は下品な言葉がお嫌いか。
じゃあ──もっと上品に言おう。」
私はまた耳元へ囁いた。
> 「いつか、君の武道服を脱がせる日が来たら──
ただ見るだけじゃなく、
君の皮膚に浮かぶ全ての筋をなぞる。
首から、胸へ、腹部へ──
そして…“第二の心臓”が脈打つ場所で、指を止める。」
---
> 「わたし…殺してやる…」
小賢の声は掠れて震え、
頬は熟れた果実のように紅い。
> 「殺すのか?」
私は笑う。
「じゃあ、その腕の中で殺してくれ──
一度、二度、三度…
死ぬたびに、俺は君の中で生き返る。
そして九ヶ月後──
君はその“死の結晶”に、名前を付けることになる。」
---
彼女はもう、言葉を発せられなかった。
彼女の太ももが、かすかに震えたのを私は感じた。
私の掌に当たる彼女の下腹──
熱くなっていた。
身体は柔らかく、もう抵抗しない。
彼女の首筋から漂う香りは、雨に濡れた木蘭の花のようで──
私は、首筋に甘く噛みつきたくなる衝動を抑えるのに苦労した。
---
> 「王令嬢…」
私は囁く。
「君の目…怒るたびに、光を放つ。
その光を見るたび──俺は、
君を“子どもたちの母”にしたくなる。」
---
道場の中央で、私は歩みを止めた。
彼女が何か言う前に、
私はゆっくりと彼女を下ろす。
だが──
私の手はすぐには離れなかった。
腰に添えた手──
親指が彼女の骨盤をそっと押す。
それは、理性よりも本能が導いた動きだった。
彼女が顔を上げた。
その瞳に浮かんだのは、
驚きと、そして…困惑。
---
> 「ほんとうに…私に子を産ませたいの…?」
彼女の声は、かすかで震えていた。
私は、まっすぐ目を見て答えた。
> 「望むだけじゃない。
そうするんだ。
武道が平和となり、戦乱が終わるとき──
俺は、君が丸くなったお腹をさすりながら、
乾いた唇と、少し痛む腰を抱え、
長男を胸に抱いて歩いてくる姿が見たい。」
---
小賢は顔を背け、袖で頬を隠した。
だが──
その瞳は、朝露のように輝いていた。
> 「…ほんとに、どうしようもない男ね。」
私は笑い、くるりと背を向けた。
> 「そうさ、どうしようもない──
でも、それは君のためだけの“どうしようもなさ”だ。
もしそれが気に入らないなら…
俺の子を産めばいい。
そうすれば、俺は…“父親”になるしかない。」
---
遠く、王有林はまだその場に立っていた。
もはや怒鳴らない。
だが、その眼光は──刃のように鋭い。
> 「小僧…お前、一体何者だ?」
私は答えず、
ただ静かに、小賢の手の甲に唇を触れた。
軽く、風のように。
すべての視線の前で。
> 「名は、楊滅人。
だが…もし名前が気に入らぬなら──
俺を、未来の“外孫の父”と呼んでくれても構わん。」
私の指が、彼女の手の甲に触れた──その瞬間。
ドンッ。
道場が小さく震える。
空気が、破れた水膜のように「裂け」た。
見えぬ威圧。
一流の武人が放つ“気”だ。
顔を上げると──
王有林が、立っていた。
その蒼い道着が微かに揺れ、
その眼光は──まるで天井を斬る剣意。
それは「娘を守る父」ではない。
「境界を越えたオス」を睨む──猛獣のような父親の目だ。
---
> 「もう十分だ!」
その声は、山腹を響く雷鳴のように重い。
「小僧……少し力があるからといって、好き放題できると思うなよ!」
私はそのまま、
彼女の手の甲に触れたまま、微かに体を傾けていた。
---
> 「拙者はただ…美を見て、離れられなくなっただけ。
この世に──
彼女のような美しさの前で、目を背けられる“男”がいるか?」
> 「本能なんだ。
男の──。」
私は微笑み、立ち上がりながら髪を指先で整えた。
> 「……とはいえ、将来の義父殿があまりにも厳しいのは困りますね。
もし娘を大切に思うなら──
早く、私のような男に嫁がせた方が良い。
勇気があって、誠実で、そして……精が強い。」
---
> 「お前ぇ……!」
王有林が一歩、踏み出す。
その足音は、魂に響く“打撃”だった。
空気が凍りつく。
> 「父上、待ってっ!彼は…冗談を…っ!」
小賢が青ざめて叫んだ。
私はゆっくりと彼女へ振り向いた。
> 「冗談か?」
> 「じゃあ、その赤い目と、頬の熱は何のせい?
……まさか、天気?」
---
彼女は黙った。
胸の奥からこみ上げる熱が、唇を塞ぐ。
私はもう一歩近づいた。
まるで獲物を追い詰めるように──
いや、
彼女の“反応”を試すために。
> 「それとも……
“子を産ませたい”と言った瞬間──
君の胸がドクンと鳴ったのは、気のせいか?」
---
> 「楊滅人ッ!!」
王有林が轟いた。
私は手を差し出し、制するように言った。
> 「お待ちを、先輩。
もし今日、貴方の手で私が死ぬとしても──
せめて、その前に彼女の唇に触れさせてほしい。」
---
道場は静まり返った。
全員が息を止める。
小賢は、私を平手打ちするべきか──
それとも、逃げるべきか迷っていた。
王有林の拳が静かに握られ、
その掌から噴き出す気は…今にも爆ぜそうだった。
---
> 「死ぬのが怖くないのか?」
低く、重い声。
私は目をそらさず、答えた。
> 「死は怖くない。
だが──
彼女の裸体を見ずに生きるのは…地獄に等しい。」
---
ズドンッ!!!
気の爆発。
風圧が髪を逆立て、道着を揺らす。
わかっていた。
次の瞬間、彼は本気で来る。
それでも──
私は、前へ一歩進んだ。
---
> 「どうぞ、打ってください。」
> 「ですが、覚えていてください。
娘を、“汗を舐められる覚悟”のない男に嫁がせた時……
その時、真に後悔するのは誰でしょう?」
---
> 「楊滅人ーーーー!!!」
小賢の叫び。顔が炎のように赤い。
> 「黙れ。」
私は冷たく言い放ちつつも、声の底には柔らかさを残した。
> 「無礼だと責めるのか?
ならば訊こう。
俺の言葉で──君の内腿が震えていないと、言い切れるか?」
---
> 「……震えてない!!」
> 「じゃあ、証明してみろ。」
私は顔を近づける。
彼女の髪の香りが、鼻をくすぐる。
> 「俺の手を……その間に入れさせろ。
濡れてなければ──
一生、黙って生きる。」
---
> 「楊…滅…人……!!」
彼女が手を上げた。打とうとした。
私は、避けなかった。
だが──
彼女の手は、途中で止まった。
私は彼女を見つめる。
深く、深く。
> 「打たれても構わない。
でも……魂に触れたいという“欲”だけは、否定しないでくれ。
それは──
父親の前でも言えるほど、本気の男の渇望だ。」
---
沈黙。
沈黙。
私は静かに呼吸を整える。
鼓動が速くなる。
恐怖ではない。
欲望だ。
──その恥じらいの瞳が欲しい。
唇を噛みしめそうな緊張感が欲しい。
そして──
彼女を、自分の“血”の母にしたい。
---
> 「もう……よい。」
王有林がようやく口を開いた。
だが、怒りではなかった。
疲れた声だった。
---
> 「お前は……私の娘に何をしたいのか?」
私は深く息を吸い、答えた。
> 「正しく──愛したい。
肉体だけでなく、骨の奥まで融合するほど。
毎晩、彼女の喘ぎをこの胸で聞きたい。
風邪をひけば粥を炊き、怠けたら下着を洗いたい。」
---
小賢は顔を伏せ、
その頬は耳の奥まで赤かった。
私はそっと彼女に近づき、囁いた。
> 「もし今夜、父上が許すのなら──
今夜から、俺は……種を蒔く。」
私はまだ、唇が触れ合う寸前の余韻の中にいた。
少女の香りが、掌にうっすらと残っている──その瞬間。
> 「誰か!この無礼者を縛り上げろ!」
……背骨に雷が落ちたようだった。
> 「貴様…この私を“義父”と呼んだだと…!?」
やっっっっっっっっっっっっっっっっべぇ!!!!!!
---
鎖の音。床板の震え。
起き上がる間もなく、クマのような弟子二人が突進してくる。
一人は縄を持ち、もう一人は鉄棒を握っていた。
逃げたい。叫びたい。消えたい。
その瞬間──
「パチン。」
世界が、一時停止した。
意識がズレる。視界が揺れる。
---
「ティン…」
耳元に、あの眠たそうな声が響く。
──天龍、私の体から離脱。
---
結果として…
私は──楊滅人、
王小賢を胸に抱え、
頬を彼女の胸に埋め、
腕を腰に回し、
脚まで…彼女の太腿に乗っているという格好に──
「プシュウッ!!」
道場、全員が凍りついた。
そして私は……感じた。
> 「彼女の胸、まるで豆餅のように柔らかくて…」
「太ももは…高級絹布のように滑らかで…」
目が……鼓のように開いた。
---
> 「な…なんじゃこりゃああああああ!!?」
叫んで、跳ねて、転げ落ちた。
---
> 「ちがう!ちがうんだ!!俺じゃない!!これは──憑依だ!!魔が入ったんだぁ!!」
後ずさりながら叫ぶ。
犬が池に落ちたかのように暴れ、
服は乱れ、髪はボサボサ、汗だくだく。
---
> 「貴様……父の前で私を誘惑する気だったのか!?」
王小賢が怒鳴る。
その頬は、まるでフライパンで焼いたように真っ赤。
私は膝をつき、涙が出そうだった。
> 「ちがう!ちがうってば小賢お姉さまァァ!!
目が覚めたら、胸が鼻先にあって…
手がその…えっと…その……!!
本当だってば!
どこかの男が!
俺の体を勝手に操作したんだあああああ!!!」
---
弟子たちの間から爆笑が起きた。
ある男は椅子から転げ落ち、腹を抱えて笑い──
> 「アイツ、運は最強やな!しかもまだ抱えてるとかw」
もう一人は涙を拭きながら:
> 「演技まで完璧とか…そりゃあ姉弟子たちも落ちるわな…!」
---
私は、今すぐ自分の首を折りたかった。
なんだこの地獄!?
道場全員の前で、
未来の義父の前で、
私は…変態扱いッ!?
---
> 「本座を…愚弄しているのか?」 「憑依だとしても…淫魔だろうが。」
王有林が、歯の間から言葉を絞り出すように低く唸った。
その言葉は、まるで刃で皮膚を裂くかのようだった。
---
私は穴を掘って逃げたかった。
> 「ちがう!!淫魔じゃない!いや…うん…いや!
心魔だ!いや、ちがう!
あれは…友達なんだ!!
名は──天龍っ!!」
---
縄をかけられる寸前──
「ふぁ~あ…」
脳内に響く、どうしようもなく気だるい声。
> 「終わったぞ、坊主。
あとはお前の番だ──
レンガで殴られてこい。」
---
> 「天龍ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
喉が裂けるように叫ぶ。
> 「お前のせいだ!
お前が勝手に体に入って!
善良な令嬢を弄んで!
今になって俺に全部押しつけるってか!?
このクソ野郎おおおお!!」
---
> 「ふっ…男なら責任を取れ。
それに……彼女、結構その気だったぞ。
あの場所、もう……湿ってた。」
> 「だまれええええええっ!!」
私は絶叫。
道場、再び爆笑の渦。
---
私は土下座。
顔を地面にこすりつけ、土まみれ。
> 「ごめんなさいぃぃ……
全部、全部、間違ってました…
でも…罰を受けるのは、
“やった本人”にしてくださいぃい!!」
---
王小賢はまだ頬を染めていた。
手は震え、唇はかすかに噛まれていた。
怒り──
と同時に、羞恥が混ざる。
---
> 「あの男……
あんな下品な言葉で私を落とせると思ったのか?」
> 「……でも…
落ちかけた……くっそ、落ちかけたのが一番ムカつく!!」
---
王有林は長いため息をつき、
手を軽く振った。
> 「下へ連れて行け。
道場地下の牢に三日閉じ込めろ。
三日後…まだ舌が動けば、また語らせればよい。」
---
私は泥棒猫のように引きずられていった。
顔は青ざめ、
心は…完全に崩壊していた。
---
> 「天龍……てめえは…!
俺が今、少女の香りに包まれてたのに、
なんで次の瞬間、牢獄の臭いに落ちるんだよおおお!!」
> 「これが……これが“天命”なのかああああああ!!?」
バアアアン!!!
竹棒が私の尻に炸裂した音は、春の雷のように響き渡った。
> 「あああああああっ!いたぁぁぁぁい!違うんだって!誤解だってばぁぁああ!!」
私はブタの断末魔のような悲鳴を上げ、
尻を抱えながら地面を転げ回った。
---
一人の弟子が怒鳴った。
> 「このクソ野郎!小賢姉さんに手を出しておいて、まだ言い逃れか!
肝までぶち壊してやる!!」
そいつは空を舞い、
私の腹を蹴り飛ばした──まるで生きたサンドバッグ。
ドゴッ!
私は何回も転がり、泡を吹いて気を失いかけた。
---
まだ叫ぶ暇もなく、
別の奴がデカい棒を振り下ろした。
──肩に直撃。
バキッ!
> 「うぅぅ…肩の骨って…予備ないんですよぉぉ…」
---
さらに誰かが調子に乗って、
水桶を──ゴシャッ!──私の頭に逆さまにかぶせた。
私はずぶ濡れのカエル状態。
髪もパンツもびしょびしょ。目すら開けられない。
---
> 「もう殺してぇぇ…精神的拷問やめてぇぇ…」
---
周囲の罵声:
> 「スケベ野郎に罰を!」 「王家の道場の恥だ!」 「宗主を“義父”だと!? 貴様、死にたいのか!!」
---
私は、
地面の上を死んだ魚のようにバタバタ転がりながらも叫ぶ。
> 「ちがううううぅぅぅぅぅ!!
あれは俺じゃないって!!
体を乗っ取った奴がいたんだよぉぉぉ!!
とんでもない破廉恥で最強なヤツがぁぁぁ!!」
---
脳内で、あのふてぶてしい声が響いた。
> 「はっはっは!やっぱりこれぞ本物の“初対面”ってやつだな!
でもお前、抱きしめた時ガクブルだったぞ。まるで感電したタコみたいに。」
> 「貴様…!やりたい放題やっておいて、今度は観客か!?」
天龍が大笑い。
> 「英雄になるには、痛みも味わえ。 それに見てみろ──
彼女はお前に手を出さなかったぞ?」
---
私はびっくりして顔を上げた。
──王小賢。
道場の隅に立ち尽くし、石像のように動かない。
---
私は彼女を直視できず、視線だけで盗み見る。
彼女は……黙っていた。
両手で服の裾を握りしめ、
その顔は完熟トマトのように真っ赤。
けれど……立ち去ろうとはしなかった。
---
> 「な?見ただろ?」
天龍がいやらしく笑う。
「彼女はお前に怒ってはいない。
だって、俺が彼女の“鍵”を開けたからな。」
---
私は地面に伏せたまま。
顔に泥、髪は濡れ、
目が泳ぐ。
> 「俺は…ただ静かに読書して、
空を眺めて…優しく恋したいだけだったのに…
なんでこうなったあああ…」
---
天龍は、からかうように囁く。
> 「でもな…彼女のあの目。
春風のように優しくて、
その中に火が灯ってたぞ、小僧。」
---
私は呻いた。
尻はジンジン痛むし、肩は腫れている。
──私は、道場の歴史上初めて、
“間違って女の子を抱きしめただけ”で集団リンチを食らった男になった。
---
しばらくして、
弟子たちは疲れて退散。
私は…魚の死体のように転がる。
静かに、誰かが近づく。
私はそっと目を開けた。
---
王小賢。
無言で、
そっと、手を差し出してきた。
私はびびって、汗が噴き出た。
> 「あ、あの…お願いです、殴らないで…
俺、まだ……処女なんですぅ……」
---
彼女は真顔で言った。
> 「お前は、今まで会った中で最も下劣な男だ。」
一拍。
> 「でも……嫌いじゃない。」
──私、硬直。
風が吹く。
彼女の髪がなびく。
その耳が……真っ赤だった。
---
彼女は背を向けて、歩き出す。
数歩進んだところで、
彼女はふと、自分の胸に手を当てた。
──あの、“偶然”私が触れてしまった場所。
---
そして、彼女は小さくつぶやいた。
> 「あのバカ…最後に見せたあの目…ほんと、バカ…」
---
──私は聞こえた。
私は、泥まみれの顔で、苦笑い。
頭の中で、天龍が鼻で笑う。
> 「ほらな?ちょっとした演出で、心の扉は開くものだ。 このご恩、千年後も忘れるなよ。」
---
私は呟く。
> 「俺はただ…
本でも読んで…
空でも眺めて…
優しい恋がしたかっただけなのに……
なんで、こうなったぁぁぁ!!」
---
日が傾き、
蔦の影が道場に差し込む。
ひとりの少年──ずぶ濡れで、ボロボロで、
でもその目だけは──
夕焼けよりも強く、赤く、
未来を…燃やしていた。
「……もう、死ぬかと思った。」
手足はバラバラ、
尻は痛みで燃えている。
肩は…まるで象に踏まれた後みたい。
頭には──誰かが水桶をひっくり返したように、
全身ずぶ濡れ。
まるで雷雨の中、捨てられた犬。
私はまだ「うぅ…」とも言えないうちに──
---
「全員、手を止めろぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!」
──晴れ渡る空に雷鳴の如き怒声が轟いた。
今にも私の頭に振り下ろされようとした棒が、
一つの掌に止められた。
---
私は薄目を開けた。
長い銀白の眉。
直角な輪郭。
灰色の道着。
その姿は──
> 「ト、ト…トウ門主!?」
---
トウ・イチドウ(東一道)
幻青門の門主。
この地で生殺与奪の権を持つ男。
四十年前、「静者滅心」として名を轟かせた【幻心境】の継承者。
弟子たちは一瞬で黙りこくる。
顔面蒼白。
ある者は…ホウキすら落とした。
---
東門主は無言で、
私に近づき──
そっと、身体を支え起こした。
私の頭はまだグラグラ。
口は片方だけ引きつってる。
半分死人状態。
その時、門主は言った。
一語一語が、まるで天からの命令のように響いた。
---
> 「ドウ・ゼツニン(杜絶人)……お前の素質は凡庸だ。」 「だが──心に、気骨がある。」 「あの場で、王小賢を抱いた。衆目の中で、自分を貫いた。あれは…淫ではない。勇だ。」 「勇がある者に──機会を与えるのが道理だ。」
---
場が、凍りついた。
誰かが小声で呟く。
> 「そんな…ありえない……」
---
私は、呆然。
さっきまで──
罵倒され、
ボコられ、
淫獣扱いされていたのに…
今は──
褒められてる!?
---
思わず振り向くと、
王小賢が父・王有林の傍に立っていた。
夕陽が彼女の顔に当たり、
その顔はまだ赤い。
目は…潤んでいた。
彼女は私を見た。
たった一瞬。
そしてそっと、父の手を引いた。
> 「お父様…帰りましょう。」
---
彼女は何も言わなかった。
笑いもしなかった。
けれど──
怒って去ることもなかった。
---
> 「振り向かないけど…拒絶もしていない……」
---
その瞬間──
脳内の最悪な男、あの無神経の化け物がまたしゃしゃり出た。
> 「見たか?ワンタッチで心の鍵、開いたぜ。
女の子ってのはな、ケツを叩けば胸を揉み返してくるんだよ。」
> 「…貴様は外道。」
> 「ノンノン、俺は“天命”。
お前はそのラッキーボーイ、選ばれしツッコミ担当だ。」
---
門主が踵を返し、
袖を翻しながら宣言した。
> 「明日より──杜絶人は正式に、第二支部へ昇格とする。」
---
ドオオオオオン!!!
第三支部の弟子たちが、
石のように固まった。
顔色は…未熟なバナナより青かった。
---
誰かが口を震わせた。
> 「えっ……クラス替え!?あいつが!?」
別の者:
> 「女神を抱いた男が、今度は昇格…!?意味がわからん!」
また別の者が叫ぶ:
> 「絶対、裏がある!!」
---
私は、まだ理解していなかった。
> 「え?なにそれ…クラス替えって…何かしたっけ、俺?」
---
東門主は頷いて、
静かに去っていった。
長老たちも背を向ける。
私だけが、
取り残された。
---
風が吹いた。
紅葉がひらひらと舞う。
私はぽつんと立ち尽くす。
> 「……ま、いい事なんだよな……うん。」
---
ガン!!!
誰かが鍋蓋を蹴り飛ばした。
> 「どこがいい事だあああ!!!」
弟子が絶叫。
> 「試験も通らず昇格だと!?ルール違反だろ!!」
別の者:
> 「あいつ…あいつは死刑だ!!」
---
ドドドドドド!!
第三支部、五十人以上が突撃!!
手には──ホウキ、棒、フライパン、スリッパ、果ては石椅子まで!
> 「殺せぇぇぇぇ!!」
> 「ぶっ潰せぇぇぇ!!」
---
私は絶叫。
> 「門主ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!クラス替え要りません!!要りませんからあああああああああ!!」
---
私は全速力で逃げた。
走って、
滑って、
泣きながら逃げた。
---
> 「なんでやねん!!俺が頼んだわけじゃないのにぃぃ!!」
---
誰かが叫ぶ:
> 「あいつは女神に近づいた!!
あいつは抱いた!!
全てを手に入れた!!
だから、あいつは死ぬべきだ!!」
---
私は山を駆け下りた。
足がぬかるみに滑り、
顔面はマンゴスチンに激突。
体は洗濯ロープに引っかかる。
──最悪。
---
転がり落ちる。
まるで机から落ちたミートボール。
私は叫んだ。
> 「東一道ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
貴様は災厄の化身かああああ!!」
---
脳内、天龍は腹を抱えて笑っていた。
> 「ははははは!!
昇格でここまで追われる奴、初めて見たわ!」
---
私は嗚咽。
> 「お前は…俺の人生の天災だぁぁ……」
---
空は高く。
一筋の雲が浮かび、
陽の光が差し込む。
その下を──
尻の腫れがやっと引いた少年が、命からがら駆け抜けていた。
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