吹雪の中で君達と
雪が降っている。
淡い光が雲の隙間から私に向かっておはようと呼んでいる。その光に導かれるように目を覚ました。
2階から1階へと重たい身体を運び、外の景色を見る。
リビングでテレビを点けると毎年言われる数十年に一度の大寒波が来るとニュースが流れている…雪掻きをしなければならないと思うと同時にため息をつく。
春夏秋冬と言われてるが今じゃもうハル夏夏冬だ。
だが何故かこんな季節を私は一番好きだと思ってる。
1月23日朝7時、親はまだ眠っているが私は登校時間なのでブーツを履きあまり大きい音を立てないように玄関のドアを開けた。あ、閉める時もだ忘れてた。
「バスは…」まだ来ないか。流石にこの雪じゃ遅れるよなぁ〜。
「お、花奏ちゃんおはよう」
「佐藤さん!おはようございます」
近所に住んでいる佐藤さん、毎朝バス停の雪掻きをしてくれている。
「いつもありがとうございます、乗る人私しかいないのに…」
「いいんだよ。老後の運動にも丁度いいからな」
「それにしても寒波、午後からって言ってましたけどどうなんですかね」
「まぁ、そんときはそんときよ」
他愛のない話をしているとバスがやってきた。
10分遅延…まぁ全然余裕で学校は間に合うんですけど……やっぱり遅れて行きたかったぁ。
「おはよう花奏」
「おはよう咲希」
親友の咲希、小学校からの友達だ。
「バス思ったより早かったね」
「それがさぁ、いつもはいるはずの人達が今日は来なくて」
「あぁ…休んだのね」
「そう!良いよねぇ…寒波が来るならうちの高校も休みにしろってんだ!」
「うるさい」
「あ、すいませぇん」
嫌味を言うように後ろの4人席に座ってる人に言った。
「あんたも来たんだ陽太」
「まぁな。寒波来るから休むって母ちゃんに言ったら怒鳴られた。結果がこれ」
「あんたにも逆らえない人がいるんだねぇ」
「法律と母ちゃんには逆らえねえよ」
陽太はバックからイヤホンを取り出して耳に嵌めて音楽を聴き始めた。
「何聞いてんの?」
「マンウィズ」
それ以上は質問するなと言わんばかりのめんどくさそうな顔をしていたのであっそと言う顔をしながら前を向いた。咲希とも話そうとしたが既に寝落ちしていた。そして8時頃に学校前バスが止まり3人は降りた。
玄関に入り下駄箱から上履きを取り出して履きそのまま教室へと向かった。
「アレ?誰もいない」
教室、廊下誰も人の気配がしなかった。
「どうやら私達は嵌められたらしい」
咲希が教室の連絡掲示板に指を差した。
"本日は寒波の為、休校になります"
「まじかぁ…」
「連絡が遅れたらしいな。今母ちゃんから謝罪LINEが来た」
「じゃあなんで鍵空いてたの?」
「さぁな、清掃員でもいたんじゃねえか?それかこの連絡を見せる為に敢えてこうしてるのかもな」
「なるへそ、それじゃあ帰りますか」
「えぇ…」
「えぇって何よ咲希。だってそれ以外にここで何するの?」
「まぁそうだけどさぁ」
そうして3人はブーツに履き替えて玄関を開けた。
吹雪が顔面を襲った。
「ブッ!!もう来ちゃったの!?」
予定よりも早い寒波が花奏達に試練を与えた。
念の為にバスの公式HPを確認したが運休が決まった。
「くそ、これじゃあ傘も使いもんにならねぇし。覚悟して行くしかないか」
そうして陽太は外に出た。一歩一歩前に進み、風に飛ばされないか確認した。そして振り返り2人を見て話した。
「おい、何してる!さっさと行こうぜ!」
そんな彼を見て2人は
「あいつ…テンション上がってんな」
「まぁ、そんなもんでしょ」
そうして3人は吹雪の中、自宅に向かって歩いて行った。どれくらい経っただろうか、時計も確認する暇がないほどの猛烈な寒さと風に顔面が押されるかのように身体が傾く。それに負けじと身体を起こす。これをひたすらに繰り返した。そうして歩いていると冬の地域名物の光景がやってきた。
「歩道まだ、整備されてねぇじゃねぇか!」
積もった雪の山によって歩道は使い物にならず、3人は車道に出た。
「この吹雪じゃ前も確認できないし、先がどうなってるかわからないよ」
「私がどうかした!?」
「咲希じゃない、先!先頭の先!」
「確かに風呂入りたいね!」
「話聞いてる!?」
その後もグダグダ言いながらも何とか見覚えのある交差点にやってきた。
「あれって…」
目線の先には警察車両2台があった。
「まずい、サツだ!」
「さっさと隠れやがれ!」
「ヤクザか」
ボケた2人に咲希がツッコむ。グッジョブをしながらも陽太が話した。
「あれは…大宮、県外ナンバーか。スキーしにでも来たのかな?」
「曲がろうとして勢い余って壁にドカンか。まぁ60キロ出してても事故るときは事故るしねぇ」
「あれ咲希そういうのわかるんだ」
「うん、先週親父が事故ったから」
「タイムリー…」
「気にしないで。親父の自信の過信だから」
「まぁ警察がいるし何とかなるし、私達もさっさと行こう」
「そうだね」
歩いていると見慣れたお爺さんが歩道の雪をどかしていた。
「あ、佐藤さん!」
「おぉ、花奏か」
「俺ら先帰ってるぞ」
「うん、ありがと」
佐藤さんと数分話し手伝った後、無事に花奏は家に辿り着き、玄関のドアを開けた。
と思っていたが驚愕な事実を発見してしまった。
「かかかかかか、鍵がない」
〔ヘルプミー鍵損失!〕
〔えぇ!?私もう家着いちゃったよぉ!〕
〔どうしよう…お母さんが帰ってくるのもすっごく奇跡的に早くて4時とか出し…〕
〔ちょっと待ってて!〕
そして音信不通になり10分が経過した。
「さ、寒い…」
まさかこんなことになるなんて…
「おい、大丈夫か?」
「へぇ?」
陽太がホッカイロを手に持ちながら話しかけてきた。
「よ、陽太!?何でここに!?」
「何でって咲希から連絡来たんだよ」
〔うちよりも陽太の方が家近いよね!お願い!〕
〔えぇ…〕
〔今度、ぷよテトやるからさぁ!〕
〔了解した〕
「そんなんで大丈夫なのか」
「あいつに負けっぱなしは嫌なんでな。約束は守ってもらう。そんなことより早く行こうぜ。ほらホッカイロ、寒かったろ」
「うん…ありがと」
そうして約5分後、陽太の家に着いた。
「母ちゃん、花奏来たぞ」
「あらやだ、花奏ちゃんいらっしゃい」
「どうもです。ほら早く上がって、外寒かったでしょう。服も濡れてるし、そうだ。お姉ちゃん!花奏ちゃんに服貸してもいい!?」
すると遠くからイイヨ~と聞こえた。
「じゃあ行くわよ!」
「俺部屋いるから」
「わかった」
そして着替え終わり陽太のいる部屋に入った。
「おつ〜」
彼はそう言いながらゲームをプレイしていた。
「これって…」
「モンハンXX、神ゲーだぞ。あ、マリカーやる?」
「やる」
数分後、、、
「うおぉぉおおりゃあぁぁぁぁあ!!」
ヨッシー(花奏)が赤コウラをワルイージ(陽太)に当てて一位に返り咲きそのままゴールした。
「くそったれ!狙ってたろ、今!」
「戦略勝ちよ」
「もう一回だ!もう一回!」
「私が一位取るだけよ!」
ピンポーン
「ちょっと待っててくれ」
「うん」
そうして少し待っていると
「お邪魔しまーす」
咲希がやってきた。
「大丈夫だった花奏?」
「咲希!そっちこそ大丈夫だったのこんな中」
「うん、おかんが会社行くって言うから、陽太ん家まで送ってって駄々こねた。そしたら渋々OK貰って現在に至る」
「すごいわね、咲希」
「お前もマリカーやるか?」
「やるに決まってるわよ、舐めんじゃないわよ私を」
「ちな、花奏は俺を倒したぜ」
「へぇ、なかなかやるわね花奏。でも最強マスターの私に勝てる者はおらず、この先にも現れない!」
「どんなテンションでやってんのよ」
こうして3人は夕方まで遊んだ。
ちなみに花奏が勝った。
寒波が少し落ち着いてきたので2人は花奏の両親の仕事帰りの車でそのまま帰ることになった。
「すいません、花奏がお世話になりました」
「いえ、こちらこそ。また遊んでやってください」
「はい、わかりました」
「じゃあね、陽太」
「あばよ」
次の日の空はあまりにも綺麗な青空だった。