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戦い

 キャンプ場はどこも許可が下りなかった。まあ、無理も無い。そこで学校の敷地内でまかなうことにした。裏山を使う許可を取った。さっそくテントとログハウスのために整地を始めた。


 悪魔たちが木を切り倒し、天使が運ぶ。それを魔導師が組み上げていく。役割は完璧だ。

「各組が暴れて手が着けられません。」

 監督していた役員が生徒会室に駆け込んできた。


「なんで、数の少ない天使が一番広い場所なんだよ。」

「それなら、悪魔が他の連中の場所を作らなきゃならないんだ。」

 豪華な天使の宿泊施設に魔導師たちが不満を持ったらしい。テントとログハウスだ。そりゃ無理も無いか。しかも、天使たちのログハウスを使わない魔導師たちが建てるというのもさらに不満を募らせる結果になった。とうぜん、悪魔たちも参戦する。やつらは細かいことはどうでもいい。ただ、争いに首を突っ込んで面白がっているだけだ。


 かくして、クラス対抗の陣取り合戦が始まった。でも、やつらも馬鹿じない。喧嘩となれば、キャンプそのものが中止になりかねない。そこで、作業に紛れて、戦いを仕掛けていた。


 悪魔は魔導師めがけて木を切り倒す。魔導師はその木を天使に向けて投げる。天使は、飛んでくる木材を悪魔めがけて打ち落とす。それは斜面の土砂を巻き込み、魔導師を襲う。こうなったら誰も止められない。膠着状態になるまで待って交渉するまでだ。


 当初は人数に勝る悪魔たちが優勢だった。やがて木材が増えるに従い、状況は変わってきた。天使が悪魔たちを木材の檻に閉じ込め始めた。これで、有利になったのは魔導師だ。彼らは天使を攻撃するのを止め、木材の供給に戦法を変えたのだ。


 しかし、悪魔が鎮圧されると、状況はまとも変わった。天使と魔導師の一騎打ちが始まった。天使は人間である魔導師を傷つけるわけにもいかず、しだいに劣勢となった。困った天使は、一旦は鎮圧した悪魔を解き放った。彼らはすぐに魔導師たちに襲い掛かる。学園内では鎌で切られても死ぬことは無い。


 こうして天使と悪魔が残るかと思ったが、なにせ統率の取れて無い悪魔たちだ。ばらばらにされて、封印されていく。それでも人間である魔導師たちは疲労によって勢力が衰えてくる。こうして天使と魔導師の間でついに膠着状態になった。


「この勝負、生徒会か預かる。」

 僕は、ひそかに高等部にいる九頭家ゆかりの神と鬼を集めて、この時を待っていた。天使と悪魔と魔導師。学生とはいえ、神と鬼にはかなわない。無論、無理やり停戦させても、何も解決はしいない。そこで、僕たちは提案をした。


 裏山に魔導師たちのテントと張る場所を確保する。そこで伐採された木を寮近くに運び、天使のログハウスに使う。そのまま生徒会の寮とする。悪魔たちは森の中で思い思いに夜を過ごす。夜行性の彼らに夜おとなしく過ごせというのが土台無理な話だ。余った木は校庭の真ん中に組み上げる。どの種族にとっても火というのは神聖なものだ。きっといい経験になるだろう。

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