祝辞
ここで、PTAを代表して、祝辞をいただいておりますので代読させていただきます。
「よくあんな大物のコメントもらえましたね。」
学校行事として、有力者の挨拶というのは欠かせない。高等部の神と鬼からの挨拶というのも考えたが、元下級役人の九頭家の依頼を受けてくれるわけもない。
「鬼に頼むなら神は挨拶せんぞ。」
「神に頼むってんなら、こっちは無しだ。」
神の鬼も互いに譲らない。どちらか一方というわけにもいかないと説得したが、今度はどちらが先に読まれるのかでもめた。
「このままでは、埒が明かないな。」
「ここは一つ、魔導師からということでどうでしょう。」
役員の一人が名乗りを上げた。どうやらやつの知り合いに有名人がいるらしい。
「それなら鬼も異論はあるまい。なにせ閻魔様をも従えたぐらいですからね。」
こうして、有名な魔導師に依頼することで収まった。
しかし、本人はすでに亡くなっているので、当日の朝、文を預かってきたという。
「生徒会初の学校行事ということで、真におめでとうございます。思い起こせば、生前私の妻も学園設立に向け尽力しておりました。祖父の代から教会とも深いつながりがありました。それもこれも国民の皆様のためを思ってのこと。政治の世界に身を投じ、日の本のために身を粉にして働いてまいりました。天皇陛下より森羅万象を扱う官職を命ぜられたことは私の誇りとするところであります。ですが志半ばで凶弾に倒れました。民主主義の根幹をなす選挙中のことであり・・・」
獏は慌てて放送を切った。
「何を読んでいるんだ。」
「あべのせいめいのふみですが。」
僕は文面に目を通す。
「これは阿倍清明の文ではなく、安倍の声明文だ。」
「放送中、お聞き苦しい点がございました。時間も押しておりますで、次のプログラムに移ります。」