斬首
武器が強くなったからといって、僕が強くなるわけじゃない。強力な魔具を扱うには大量の魔力が必要だ。圧倒的体力差の前に、僕はついに力尽きた。
「牛頭、そいつの頭を落とせ。鬼退治の鎌ならば悪魔にも効くはず。これで、お前の悪運も終わりだな。」
「やめてー。」
馬頭が叫ぶ。
「俺の命令は大王の命令と同じだ。やらねば一族もろとも反逆者として処罰するぞ。」
「こればかりはご勘弁を。」
牛頭も苦悩に顔をゆがめながら抵抗した。
「そうか。聞けぬか。そうだ、なら馬頭、お前が命じろ。」
突然の閻々の言葉に馬頭は言葉を失った。
「やつの首を跳ねねばお前たち一族も同罪とし、討伐するぞ。」
「ひどい。なんてやつ。」
馬頭は閻々をにらみつけた。
「いいぞ。その憎しみの目がやがて我が力の前に絶望の色に変わる。何とも爽快ではないか。」
「馬頭、もういい。これ以上迷惑はかけられない。牛頭。やってくれ。幼馴染のお前に殺されるなら本望だ。うちは悪魔だ。やつも両親には手出しできない。」
「さあ、命じろ。」
「そいつの頭を落とせ。」
馬頭は涙ながらに言った。
「すまん。」
牛頭は力いっぱい鎌を振ろす。その切れ味は鋭く、音も無く僕の頭は地面の上に転げ落ちた。
「閻魔一族にたてつくものがどうかなるかよくわかっただろう。」
閻々は勝利の雄たけびを上げた。
薄れ行く意識の中で、僕は幼い頃に父から聞いた話を思い出していた。
「九頭は元は古くからの由緒正しい鬼だった。九つの頭に九つの運を宿していたから信仰するに人間も多かった。そこへ、閻魔がやってきて、古くからいた鬼たちはその配下となってしまった。」
「じゃあ、牛頭ちゃんや馬頭ちゃんは?」
「両方とも、閻魔と一緒に外国からやってきんだ。」
「だったら、敵ってこと?」
「いや、彼らのほうが考え方が優れていたから、それで従うことになったんだ。当時は和修吉竜王とも呼ばれていた。やがて九頭家も含め多くの鬼が人間に忘れられていき勢力をなくしてしまった。だから、うちは悪魔になることにしたんだ。役人というのは運だけではどうにもならない。でも、悪魔は実力主義だ。力があれば魔王にだってなれる。」
「じゃあ、父さんも魔王になるの?」
「いや、運だけでなれるものじゃない。」
「だったら、僕が魔王になる。」
「そうだな。でもそれには力をつけないとな。」
「どうすればいい。肉を食えばいいの。」
「ははは、そうじゃない。これからは知恵だ。父さんには悪魔としての知恵がなかった。だから、お前は学校にいけ。そこで悪魔としての知恵を学ぶんだ。」
「許婚は死んだ。これで晴れてお前は誰のものでもなくなったわけだ。皆のもの、後日、挙式を行なう。今日の勝利を、我が妃に捧げよう。牛頭、その汚いごみを片付けろ。」
牛頭は、僕の体を抱えると、うつむいたまま時々肩を震わせて闘技場を去っていった。




