鎌
業を煮やした閻々は金棒を放り出すと、客席にいた取り巻きから錫杖を受け取った。シャリシャリという退魔の音が僕の頭に響き集中できない。
「ここからは菩薩としての閻魔一族の力をみせようぞ。」
長い錫杖とその音に、次第に追い詰められて行く。
「もう後がないぞ。」
やつは錫杖を振りかぶると力いっぱい僕の部上に振り下ろした。
パキン
ついに、僕の鎌の刃は真っ二つに折れた。お陰で直撃は免れたが、鋭く真っすぐな折れ口が痛々しい。
「折れたにしては、綺麗すぎる。誰かが予めひびを入れておいたのか。」
だとしても、いまさらそんなことを詮索しても仕方がない。
「万事休すか。」
「これを使え。」
客席からの声を共と、一本の大鎌が僕の横に飛んできた。その鎌の柄は長く、刃は異様な黒い光を放っていた。
「それは抜いたものは王妃になるというナガエクサカリバ。」
鎌を見た閻々は明らかに動揺していた。
「ほう、やはり知っていたとはな。」
僕の後ろには馬頭がいた。
「長柄草刈刃」天界の神殺しの剣「短柄草刈刃」と対で造られた魔界の鬼退治の首切り鎌だ。その刃は隕石より取り出した隕鉄を七日七晩かけて地獄の炎で鍛造したとされ、その柄は鉄よりも固いとされり鉄刀木という木でできている。剣は、天界より人間界にもたらされ、今では異国の王剣とされている。
「部下の岩鬼に守られせていたはず。どうしてそれを。」
「土台の岩を蹴とばしたらあっさり渡してくれぞ。」
馬頭は笑いながら答えた。それはまさにいつも通りの馬頭だった。
「役立たずが。まあいい。これでお前が妃になることがはっきりした。そこで許婚が負けるのを見ているがいい。」
「それはどうかな?現会長としてボクも参戦しよう。」
「遅れて来て、すでに失格だ。」
「馬は?」
「馬は武器ではないから使用禁止だ。」
怒った閻々はなんとしても場内に降りようとする馬頭を止めた。




