会長を賭けて
馬頭が居なくなって、代理の牛頭だけでは仕事がうまく回らない。
「生徒会長を賭けて選挙を行なおう。」
緊急総会が召集された。さすがに皆、選挙と競馬の違いには気付いたようだ。選挙戦は生徒全員の見守る中、円形闘技場で行なわれることに決まった。
武器は自由。一対一のトーナメント方式で挑戦者を決めた後、現会長と直接対決。会長欠席の場合は挑戦者の不戦勝になる。
「馬頭、早く帰ってきてくれ。」
僕は藁にすがる思いだったで外を眺め続けたが、いつしかベッドに倒れこんだ。ベッドの下の古い藁には、未だ微かに馬頭の香りが残っていた。
選挙戦には候補者と応援者が参加した。どちらかが勝ち残れば、候補者は優勝となる。
「さあ、生徒会長を賭けた戦いが今始まろうとしています。ところで、馬頭現会長はまだ現れません。果たして決戦までにやってくるのかも注目であります。今回の目玉はなんと言っても十二神将です。かれらはわが子の応援のために参加しております。」
「おっと、ここでインドからの留学生が参戦だ。」
超美男子で有名なクリシュナ一族だ。彼の入場とともに女子たちの声援が上がった。
「応援は超大物、閻々様。」
閻々の入場とともに男子たちの歓声が上がる。
「さずが、人望はないが人気はあります。」
さすがに十二神将相手に戦おうというやつらは、ほかには出てこなかった。十二神将は十二神王とも呼ばれており、今回は王族対決の様相を呈した。
「さて、選手が揃いました。おや、一人足りませんね。クリシュナの姿が見えません。」
「行かなくていいんですか?」
客席にいるクリシュナの横に居る女性たちが尋ねる。
「野蛮なことはしないよ。閻々が勝てばいいんだろ。それとも君は僕の美しい顔が傷ついてもいいというのかい?」
さすがインド神一のプレイボーイと言われるだけのことあるようだ。
先頭の組み合わせを決める間「勝利を我が手に」が流れた。
さあ、立ち上がれ
戦の始まりだ
己の力を示すのだ
勇気と知恵と運
全てを備えたものに勝利を
油断はするな
信用するな
最後の一人に残るまで
さあ、武器を取れ
剣を交えろ
己の技を示すのだ
名誉と栄光と富
全てを与えよ勝利者に
相手の目を見ろ
瞬きするな
最後の敵を倒すまで




