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あの人のために
旅行から帰ってきた馬頭は、荷物の整理を始めた。やはり、ここを出て行く気だ。
ついに見つけた
捜し求めていたもの
きっとできる
夢の実現のために
でも、選ばれなかったら?
臆することは何も無い
勇気を持ってアタックするだけ
難しいことは解ってる
誰も掴めなかったんだから
でも、ここで動かなかったらきっと後悔する
そんなのは嫌
あの人はどう思うかしら?
いいえ、相手のことなんか気にしちゃダメ
待っているだけじゃ、夢は掴めない
心のままに進もう
きっと道はある
地獄の砂漠を越えて
あの人のために
振り向いてくれないかも?
でもかまわない
あの人の役にたちたい
行かなくちゃ
地図は無くても運命が導いてくれる
さあ、出かけよう
大切な人のために
「旅に出る。」
そう言い残して馬頭はどこかに出かけてしまった。一週間、一ヶ月と月日が過ぎるが、馬頭は帰ってこない。学校もしばらく休学しているようだ。
僕はこの時初めて一番大切なものを失くしたことに気がついた。




