かりもの競争
あの世で「かりもの」と言えば魂。「刈りもの」。天使の弓と、悪魔の鎌。魔道師は護符で戦う。
キューピットの矢で恋に落ちるか、悪魔の鎌で魂を取られるか、護符で相手を動けなくすれば勝ちである。
それぞれの代表が校庭の中央のリングに上がる。天使は悪魔と魔道師を恋仲にする。悪魔は魔道師の魂を刈る。魔道師は天使と悪魔を封じる。悪魔有利に思えるこの競技だが、天使と悪魔のどちらが先にもっとも不利な魔道師と手を組むかで勝負の行方が変わる。
魔道師は天使と組みたいが、天使は事前に魔道師に矢を放っておくだろう。そうなれば悪魔を封じた瞬間に天使も封じないと負ける。悪魔と契約すれば裏切られることはないが、魂を持っていかれて負ける。なので、魔道師はどちらとも組むことはできない。
天使としては、魔道師を悪魔から守りながら戦わなくてはならない。悪魔は天使を倒せないので魔道師に天使を封じてもらいたいが、魔道師に矢が刺さった状態にならないと無理だろう。
こうして、天使と悪魔の消耗戦が続いた。聖剣と鎌が激しくぶつかる。その度に会場からは歓声が上がる。魔道師としては弱ったどちらかを封じて、差しの勝負に持ち込みたいので動けない。霊力に勝る天使も、体力バカの悪魔にしだいに分が悪くなってきた。
「おい、天使。このままでは、魔道師にしてやられる。先に魔道師を射抜いてはどうだ。」
悪魔得意のささやき戦法だ。
「疲れた。手出ししないから、お前こそ魔道師と直接対決してくるといい。」
天使も甘い言葉で巧みに誘惑してくる。
「魔道師に教育的指導!」
僕は高みの見物を決め込んでいた魔道師に生徒会長権限で指導を入れた。これでやつも動かざるを得ないはずだ。
やつは、躊躇無く天使を封じた。魔道師にとってどっちが残っても直接対決しかない。それならばと、飛び道具より接近戦を選んだ。
これで、時間切れになれば悪魔の勝利は確実だ。しかし次の瞬間、悪魔は魔道師に向かって突っ込んでいった。それは、魔道師がふと見せた隙だった。今まさにやつのくびはがら空きとなった。ついに死神の鎌が魔道師の首を捕らえた。
「カラン。」
大地の上に落ちたのは、魔道師の首ではなく死神の鎌だった。鎌には護符が貼られていた。魔道師は自らの首に護符を裏向きに仕込んでいたのだ。鎌がやつの首に触れた刹那、それが首を刎ねるより速く鎌に貼り付いた。
「勝者、魔道師。」