選挙
「馬頭、お前いつまでここにいる気だ。」
「ずっと。」
おい、聞いてないぞ。
「言わなかったか、会長も住むって。」
まさか。
「お前と違って、選挙で選ばれたんだ。」
いつ、そんなものがあった。
「対抗馬を立てて選挙戦を戦う。お前も見ただろ。いや参加したんだぞ。」
あれは競馬じゃなかったのか。
「投票でも一位だったしな。」
あの掲示板は選挙の投票だったのか。なんか色々間違ってる気もするが本人たちがそれで納得しているなら何も言うことはない。
「だから、ボクが会長なんだ。で、すぐに引越しを手配した。」
「親は反対しなかったのか?」
「九頭なら安心だって。」
僕の一縷の望みは儚く砕け散った。信用が厚いというのも時には問題だ。
「真ん中から分割するから。それまで待って。」
「面倒だし、このままでいいよ。」
こいつ希代のせっかちだった。
「僕のベッドはどうした?」
「捨てた。ちなみにこれ優勝賞品だから。」
馬頭は僕が転がされているベッドを指した。
「馬とベッドは関係ないだろ。」
「ベッドじゃなくて藁だよ。どうだ、藁のベッドの寝心地は。」
アルプスの山小屋じゃないんだ。今時、藁のベッドはないだろ。でも、なんだか懐かしい。昔、牛頭と馬頭の家に泊まった時も藁だったっけ。
その後は、覚えてない。おそらく疲れからすぐに寝てしまったのだろう。朝目覚めると、やたらベッドが狭い。それに、腹の上が重い。
「なんだ。何か乗ってるのか?」
横をみて慌てた。大の字で寝ている女の子がいる。そいつの足が僕の腹の上に乗っている。
「やばい、何かとんでもないことをしたんじゃないか。」
昨日のことを必死で思い出そうとする。そうだ、確か馬頭が会長になって一緒に住むことになったんだっけ。てことは、こいつは馬頭か。確かめようと覗き込んだ途端、
「迎えに来てくれたんだ!」
そう叫ぶと馬頭は僕に抱き着いてきた。
「離せ、離せ!」
その声に馬頭は目を開けた。
「あー、夢か。」
「何の夢を見てたんだよ。」
「嫌なやつとの結婚式に、王子様がやってきて救い出してくれることろだったのに。」
馬頭は落ち込んでいる。こんな女の子っぽいやつだったっけ?
「お前は、ないのか?」
「天使や悪魔は夢を見ないからな。」
「好きな子ぐらいいるんだろ?」
そう問われて、僕はしばらく考えた。
「まわりは天使と悪魔と魔導師だけだからな。やつらとは、なんか気が合わない。やっぱりまだ鬼の心が残っているのかな?馬頭はどうなんだ。」
「美少女の馬頭ちゃんだぞ。モテモテで断るのが大変なくらいだ。そんな余裕はない。」
「なんだ、一緒じゃんか。」
「クズと一緒にするな。王子様が放っておくわけないだろ。きっと迎えに来てくれるさ。」
「じゃあ、その時は応援するから。」
この一言が将来大変なことになるとはまだ知る由もなかった。




