招かれざる客
キャンプが終わると、生徒会委員の引越しだ。天使組が使ったログハウスは九人で使うには広すぎる。どうしたものかと考えあぐねていると、
「会長、こうとうぶのめずらしい方がお見えです。」
秘書として採用した金狼法師がやってきた。
「後頭部の珍しいって誰だ?」
部屋にやってきたのは一体の女鬼だった。
「高等部の馬頭で~す。」
元上司の馬頭家のやつだ。鬼の中でも牛頭馬頭と言えば、閻魔の側近だ。力持ちの牛頭家は建設業を、足の速い馬頭家は通信業を担っている。
「馬娘が何のようだ。」
普通の悪魔なら格上の鬼に気後れするところだが、九頭家にも元鬼としての意地がある。
「クズのくせに。」
やつは小声でつぶやいたが、こちらも地獄耳。しっかり聞こえている。
「九頭ちゃん。部屋余ってんでしょ。高等部でも使わせてよ。」
なるほど、連中はここを狙っているわけだ。
「悪いが、そんな余裕はない。必要なら、自分達で建てれば。」
悪魔や天使はきれい好きだ。神は知らないが、鬼は部屋を片付けない。うちは悪魔になってからは、いやいやながらも片付けをするようになった。どうせ連中のことだ。天使や悪魔をこき使うつもりだろう。鬼の考えそうなことは手に取るようにわかる。
「神組の連中もか?」
僕は、断る理由を探した。
「あいつらが、他の種族にものを頼むわけないじゃない。気に入ったものは横取りし、気に入らなければ押し付ける。鬼よりたちが悪いんだから。」
立場が変われば味方も変わる。こいつらも気まぐれな神組に手を焼いているのか。
「そんな要件で来たのか?」
こいつとは幼馴染だ。うちが悪魔に鞍替えしても、のんびり屋の牛頭・せっかちな馬頭・優柔不断な九頭の三頭家でおんぶとかしてよく遊んだものだ。なので本題は別にあるにことは解る。
「許嫁に冷たいのね。」
「昔、上司命令で押し付けてきたんだ。それにうちはもう鬼じゃないから、自然消滅だろ。」
いつまで上司風を吹かせてくるんだ。
「で、本題は?」
僕はしびれを切らせ尋ねた。
「中等部で楽しそうな事をしてるって聞いてね。今度、高等部でもイベントを催すことになったというわけ。だけど、神と鬼じゃつまらないじゃない。だから、中等部の連中にも参加してもらうことにしたの。」
なんだか、持って回ったような言い方だ。こういう時には、ろくなことがない。
「そっちだけでやってよ。」
「もう、中等部の校長の許可が降りてるから。」
そういって、羊皮紙の契約書を見せてきた。
「中高合同のダービーを許可する。」
ダービーって競馬か?
「天界の天馬と、有名な競走馬だった霊馬がでるのよ。ジョッキーを中等部から出してもらう。」
てことは、天使と魔導師が乗るのか?鬼と悪魔はどうすんだ。
「無論、鬼代表で馬頭も参加するわよ。まあ、うちの優勝で決まりだけどね。」
随分の自身だ。
「で、誰が乗るの?」
馬頭は、うなだれた。
「ははあ、いないんだ。」
「違わい。初めてのやつなんてお断りだよ。」
「残念だったね。これで鬼組の優勝は無くなったわけだ。」
僕は、お引取り願おうと立ち上がった。
「いるじゃない。ここに。」
馬頭は、僕を指差した。




