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号外2  新年特別企画!紙面座談会

投稿から一年と少しを記念して、号外を書きました

よろしくお願いします、


ロメリアが学園卒業から数か月後。

ロメリアが小説を書き始めるきっかけのお話です。


 今回は新年特別企画として、ハートシード子爵家令嬢ミレット様をお招きして、わたくしロメリア・アングスティとの紙面座談会をお送りします。



イカ(以下進行):「進行は僭越ながら、わたくしイカ・ホシが務めます。お忙しいところお越しいただき、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします」

ロメリア(以下ロ):「よろしくお願いします」

ミレット(以下ミ):「はい、よろしくお願いします」



進行:「さて昨年秋に学園を卒業され、お二人は春にはそれぞれご結婚の予定とのこと。おめでとうございます。今はどのように過ごされてますか」


ロ:「婚約が公になってから急にお茶会のお誘いが増えまして。それもこれまであまり交流のなかったご令嬢ばかりで、これにはやや困惑します。お茶会の内容も大体が、ご令嬢方がオリヴァー様からいかに気をかけていただいていたかという自慢話というか……。なかなか白熱したお茶会が多いですわね」

ミ:「・・恐ろしい。例えばどのようなことをおっしゃられるのですか」


ロ:「夜会会場で落としたハンカチをわざわざ追いかけて颯爽と渡していただいたとか、こぼしたワインでドレスが汚れて困っているとすぐさま別室に颯爽と案内してもらったとか、しつこくダンスの誘いをかけられて困っていたら、相手の子息をうまく颯爽と連れ出していただいたとか、ですかね」


ミ:「それはただ単にオリヴァー様がご親切なだけでは・・。その、心変わりと申しますか、ご心配ではありませんか」


ロ:「でもまあ、前世まえから似たような体験もあって慣れているのでわりと大丈夫です。それに彼は真っすぐで正義感の強い人ですから、浮気はしないと思います」

ミ:「まあ、信頼してらっしゃるんですね」


ロ:「ええと、彼にもし、別に好きなお相手ができたとしたら、それは浮気ではなく本気です。そして、その気持ちをわたくしに隠したままにしておくことができない性格でしょうから、はっきりと伝えてくると思います」

ミ:「ええっ、それでよろしんですの」


ロ:「その時になってみないと分からないですけど、淋しいでしょうね。でも人の気持ちは移ろうものですし、それはお互いさまですから。でも想像したら何だか腹が立ってきました」


進行:「お嬢様、その際はお申しつけくだされば、我々がいかようにも動きます!」

ミ:「フフフ。ロメリア様には心強い味方がいますわね。」

ロ:「イカだけにいかようにも(笑)」



進行:「コホン。えー、ミレット様はいかがですか」 

ミ:「イカだけに・・。あ、はい、わたくしはこれまでとさほど変わらない生活をしています。確かに、あんな暗くて何考えてるのか訳わからんような令嬢がルース様にふさわしいのか、というようなお話を遠回しに耳にもしました。

 ですが、わたくしの側には常にサン・クリストバル・デ・ラス・カザス三世、略してサンちゃんがいますし、平穏に過ごしております」


ロ:「やはり名前が長すぎて普段は略されるんですね……。

 わたくしはミレット様の事をそんなふうに絶対思いませんよ。むしろルース様にふさわしいのはミレット様だけです。でもミレット様にも心強い味方がいて良かったですわね」



進行:「・・とても心強いぬい……いえ、ご友人ですね。

 ご婚約、ご結婚によって今後環境が変わり、期待や不安もあるかと思いますが、心境の変化などはありますか」


ロ:「そうですわね、わたくしは結婚後も王都を離れるわけではないので、大きく不安はないのですが、ミレット様が辺境伯領に赴かれると頻繁にお会いすることも難しくなるので、そちらが淋しく思います」


ミ:「ロメリア様となかなかお会いできなくなるのはわたくしとしても淋しく感じています。わたくしの辺境の地への輿入れは急にまとまったお話でしたけど、今のところ現辺境伯さまのお怪我が快復されるまでとお聞きしています。そこまで長くならないかと思います」


進行:「ミレット様のご婚約者のルース・ストライフ様が、落馬事故で怪我をされた現辺境伯さまの代理で辺境伯職をお勤めになるため、辺境伯地に赴かれるとか。ご婚約当時にはそのようなお話があったのですか?」


ミ:「え、ええ。赴くために婚約したようなもので……。あ、いえ。婚約を結ぶときにはお話を聞いておりました」

ロ:「ミレット様、何か隠されてます?」


ミ:「そ、そんな、何も。

 現辺境伯にご自身の一人娘(御年7歳)との婚約を執拗に迫られ困惑し、婚約話を断るため偽装婚約を思いついたルース様と、婚約破棄や従来の人見知りもあって新たな婚約を諦めていたところに赴く地が好みドストライクの筋肉の宝庫である辺境伯領という偽装婚約に飛びついたわたくしとが意気投合した結果だなんて、とてもお話できませんわ!」


ロ:「ミレット様、そのお話詳しく!!」

進行:「・・・お嬢様、このお話どこまで記録しますか……」





 王都の一角のラバンディン公爵家の邸宅の2階にある執務室からは、二人の話し声が聞こえてくる。


「まずはこちらをお読みください。

 このような”新年特別企画!紙面座談会”の企画を立ててみたんですけど」


「紙面座談会?・・。また君は突飛な企画を…」

 満足気な顔を見せるロメリアとは対照的に、記事を手に取り、読み進めたオリヴァーの眉間にみるみるうちにしわが刻まれていく。


「うーん。どこから突っ込めばいいのか。

 まず、新年の企画は遅くとも昨年末までに書き上げなくては間に合わない。今はすでに2月だ。

 それから内容も仮にこのままならルースや現辺境伯家の承諾が必要で、おそらく承諾はされない。

 そして、そもそもロメリア、君が学園を卒業した時点で壁新聞部は廃部になっていて発表する場がない」


 「ひえー。後継者育成に失敗した弊害がこんなところに現れるなんて!

 って、さすがにわかってます。紙面座談会という形ではこのネタはボツです」

 「それじゃ……」


 「ミレット様のお話を聞いて、私、ひらめきました!このお話を脚色して小説を書こうと思うのです!

 今の世界のお話や小説はだいたい読み尽くしてしまったし、私が求めている恋愛小説が少ない気がしておりました。それなら自分で書いてしまえばいいと思いまして!ミレット様には完成したら、必ず発表前にお見せするとの約束で、書くことを承諾していただきました」


 「お、おう、そうか」

 前のめりのロメリアの迫力に椅子に座っていたオリヴァーは背もたれに身を倒した。

 「じゃあ、とりあえずそれで進めてみようか。校正は受け持つよ。

 ここまでロメリアがやる気を出すのは稀だから止める気はさらさらないよ。それよりも」


 オリヴァーは、コホンとひとつ咳払いをした。


 「座談会の記事で看過できない記述がある。

 俺は浮気はしないし、心変わりもしないからな。

 言い訳にも聞こえるかもしれないが、夜会で落としたハンカチを渡したのも、別室に連れ出したのも、ダンスのもめ事を仲裁したのも仕事の一環だから。夜会には少なからず帝国など外国の要人もいる。そんな会場にゴミが落ちていたり、服装が乱れた令嬢がいたり、痴話げんかが始まっては我が国の恥だからな。迅速に対処したまでだ」


 「令嬢のハンカチをゴミ扱いはひどいです」


 「いや、それは俺の目に入る位置でハンカチを明らかに故意に落としていたし。全く、下手なハンカチ落としじゃないんだから。ワインも同様だ。痴話げんかも俺が近づいたら急に令嬢が誘いを渋りだしたんたぞ。会場を常にチェックし国の権威を落とさないようにしている俺への新手の嫌がらせかと思ったよ」


 「はい、わかってます。信用してますから、疑ったりはしてませんわ。ただ、そうなった時の反応は何パターンか考えてあります」


 「それ、全然信用してないよね?!そこにエネルギー使わなくていいから!

 俺は仕事柄、はったりを言ったり、全てを話さなかったりはするが、できない約束は絶対にしない。それは前世まえから変わらないよ。ロメリアほど俺の興味を引き続けて飽きさせなくて面白い、変わった人は他にいないよ。ロメリアをまた探しあてた俺を信じてくれよ。・・あ、愛の力だろ」


 「フフフ。相変わらずロマンチックですね。ん、私、変わった人ですか?」

 

 「怒った?いい意味で、だよ?」

  

 「いえ、私にとって100点の誉め言葉ですわ!約束といえば、前世まえからの約束でも破られたのは”一生もののプロポーズをするから待ってて”ぐらいかしら」


 「いやあ、あれは何度かしたけど、君があんまり納得してない感じだったから」


 「ふふ。本当は毎回うれしかったんですよ。でも、どうせなら何度もしてもらいたかったから、どうすれば次回につながるか思案してたら、納得してないような顔になってしまったのかしら」

 うーんと唸るロメリア。


 「なんとなく、そんな気はしてたよ。今世こんかいもとびっきりのやつ考えておくから」


 「はい、期待してますわ。

 さぁ、小説を書き進めないと。ミレット様が王都に戻られるまでに仕上げたいわ」


 「あー、たぶんだが、ルース達はそのまま辺境伯地にしばらく留まることになると思うぞ」

 「しかし、現辺境伯の体のお加減次第で辺境伯代理は解任さるんですよね」


 「そもそも平民出身だが優秀な副官がいる辺境伯地に、親父、いや宰相閣下がごり押しでわざわざルースを送り込んだんだ。こっちに入ってる情報だと解任されるのは・・。まあ、いいや。そのうち分かるよ」


 首をかしげながらもロメリアの脳内は小説のことでいっぱいになっていた。





 その後、ロメリアは結婚し、公爵家の内政を受け持ちつつ作家活動を開始し、オリヴァーが設立したラベンダー出版社から生涯で4冊の小説を発表すことになる。


 ルースと共に辺境伯地へと赴いたミレットは彼と結婚。

 さらにルースによって、現辺境伯家と隣国との不正取引が暴かれ、現辺境伯は即解任された。ルースはそのまま正式に辺境伯に就任した。

 ミレットはルースからの熱烈な(筋肉)アピールにより心を通じ合わせ、たくさんの子どもにも恵まれ、辺境伯地で長く至福の時間を過ごすことになる。



 さらに追記すれば、ラバンディン公爵家の長女とストライフ辺境伯家の嫡男が王立セントラル学園で出会い、結婚するのはまた別の話である。


                    《終わり》

ここまで読んでいただきありがとうございました!


本来なら初投稿から一年後ちょうどにこの号外を投稿したかったのですが。

「遅くとも投稿したい日までに書き上げなくては間に合わない」ですね。

 


※本篇作中に登場したロブイヤー帝国第五皇女フェレシアの短編のお話を書きました。


「前世を思い出し婚約破棄される前に修道院に逃げ出した悪役皇女の真実」

 (N0495JB)

こちらもよろしくお願いします!



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