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クエスト4

 冒険者ギルドを出て城門の近くまで来た。普通の住民はそれほど居ないけど、勇者なんて言われてるプレイヤーキャラ達はそれなりにたむろしている。城門の近くには何人か便利なNPCが配置されているので、この付近は臨時のパーティを組む時の待合所みたいな事になっているからだ。


「一般の冒険者か?ギルドカードを見せてくれ」


 それらの間をぬって門まで行くと、衛兵の人に止められた。流石にゲームみたくフリーパスでは無いようだ、特に逆らう意味もないので素直にカードを渡す。この人はこんな勇者?に囲まれた状態で気が滅入ったりしないんだろうか?まぁ、モンスターが攻めてきても安心は出来そうだけど。


「…よし。最近街の外のモンスターが少し増えてきた気がする、気をつけて行ってくるように」


 カードを返して貰うと、衛兵の人はビシっと敬礼して送り出してくれた。


「ありがとうございます」


 衛兵さんにお礼を言って門の外に出る。


(あー…なんかこれ)


 ゲームを始めた当時、初めて街の外に出た時の事が思い出される。あの時は街の中のクエストを何回かこなして、装備もアイテムもしっかり備えてからようやく外に出たんだっけ。


(初めてモンスターと戦った時は…どうだったっけなぁ?)


 そんな自分自身で動いたわけじゃなかった当時を思い出しながら、俺はゲームでの知識から薬草の群生地へと歩き出した。そんなゲーム時代の知識がどれだけ通用するか分からないけど、一つの目安として動く分にはいいだろう。あてずっぽうで突っ込むよりは遥かにマシだ。


「んー…流石に道っぽい道は分からないな」


 心なしかゲームの時よりも森は深く、空を見上げても生い茂った木で良く見えない。これがゲームだった時は操作の為にか木はそれなりにまばらで、通れる場所も良く分かるように道になっていたハズだ。


「プレイヤーキャラだった頃はNPC以外の人は見えなかったし、なんか制限みたいのがかかってたのかな?本来の姿を見る事が出来ないっていうか…」


 となると本当に群生地に辿り着けるのかが不安になってきた。一応支給品でコンパスを貸して貰ったので、方角的には間違いないと思うんだけど。


「お?」


 すると、森が開けてちょっとした広場のような所についた。どうやらゲーム同様薬草の群生地になっているのには違いなかったようで、スケッチで見せて貰った薬草が所々に生えている。


「ふー…こういう所はゲームのまんまで助かったなぁ」


 ほっと胸をなでおろし、一応現実になった事を考慮して取りつくすようなマネは止めておいた。ゲームの時は採取の後一定時間でリスポーンしていたけど、取りすぎて薬草が全滅したとかになったら目も当てられない。こんな深くなった森の中を薬草を探してさまよい歩くとか勘弁願いたいところだ。


「こんなもんでいいかな?…これだけで普通のバイト一週間分くらいの稼ぎか」


 今はとにかく金が欲しい所だけど、あんまり稼ぎすぎても怪しいだろうか?流石に元プレイヤーキャラって事はバレたりしないと思うけど、初心者なのに手際が良すぎるって言うのはちょっと誤魔化すのが難しい。この群生地はいいポイントだけど、ここに頼らないでまともにやった場合も経験しておいたほうが良いかもしれない。


ブヨン


「え?」


 場違いな物音にそちらを振り向くと、そこにはスライムが居た。


「…は?」


 そしてその姿を見た瞬間、俺の頭が真っ白になった。スライムなんてゲームの中では見慣れていたし、ギルドで聞いた情報から出会ったら逃げるというのを常に心がけていたハズなのに。今目の前に居る現実と、ゲームとのあまりの違いに脳が追い付かなかった。


ブヨン


「でっか!?」


 そう、跳ねながら近づいてくるスライムは…人一人を簡単に呑み込めてしまう程に巨大だったのだ。

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