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GM6

「なんというか、いくら昼間でも薄暗い墓地っていうのは中々に不気味なもんだな。オレらのプレイヤーは日本人だったし、こういう西洋風の墓地に馴染みが無いっていうのも拍車を掛けていると思う。やっぱり知らないもの、未知のものていうのはそれだけで多少の恐怖ってもんを覚えると思うんだ。しかもここはファンタジー上等の世界な訳で、幽霊はさておきゴーストやゾンビってのもモンスターとして登場してる。いくら街の中とはいえそういうのが出てくる可能性はゼロじゃないんだから、もしもの場合に備えて分断されるリスクは最小限に抑えるべきじゃないか?」

「言い訳はそこまでか?聖職者」


 要するに怖いから手を離さないでという事だろう。アテナは墓地の奥に進む内に、手を繋いだ状態から俺の腕を抱き込むように抱えるようになっていた。


「別に怖いのが恥ずかしいとかそう言うんじゃ無くてな。むしろ怖がるついでにナギに抱きつけるのは逆役得みたく思ってる。とにかくこういう雰囲気が苦手なんだ。だからとにかく喋りまくったりして不気味な雰囲気を払拭したいというか、余計な事を考えないようにしたいというか」

「分かった好きなだけしがみついて喋りまくっててくれ。俺はアテナに抱きつかれた感触のおかげで、恐怖を感じる部分がマヒしてるから」


 抱きつかれてる腕に7割、辺りの探索に3割意識を向けて墓地をゆっくりと歩いて行く。西洋風の墓地という事だが、墓標の形は完全に定型という訳では無い。四角いもの、輪切りしたかまぼこみたいなもの、地面に石の板が埋め込まれたもの、そして剣や槍等の武器が刺さっていたりもしている。そして石の墓標には、基本的に丸の中に十字が入ったマーク…確かこの世界の教会のシンボルが刻まれていた。


「お?小屋だ」

「えぇ…」


 そんな墓地の隅っこに、一軒の小屋を発見した。アテナの「余計な物見つけんな」という意味を含んだ声を無視して、アテナを引きずりながら小屋に近づいていく。


「管理人…西洋じゃ墓守っていうんだっけ?そいつの小屋か?」

「…見つかったら、怒られないかな?」


 元はといえばアテナの提案でこんな所まで来てるのだが、予想以上の雰囲気にアテナはすっかり弱腰になっている。このまま第三者に見つかってもロクなやりとりも出来そうに無いし、何かを隠すには絶好の場所だがさっさと離れる事にするか。


ギィ~…


「ひっ」


 突然鳴った古ぼけた扉が開くような音に、アテナが小さな悲鳴を上げる。その音は小屋の方から聞こえてきたもので、実際に小屋のドアはゆっくりと動いていた。


「………」


 開かれた小屋のドアの向こうには一人の人物が立っていた。


「………」

「………」


 その人物…いやソレ佇まいに言葉を失う。そこに居た人物を見て感じた何かは、とても言葉では言い表せないものだった。人間のように見えているのにそれと同時に人間じゃないとも思える。子供のように見えるし、大人のようにも見える。男のような雰囲気にも、女のような雰囲気にも感じる。ただ一言言えるのは、墓守どころか一般人では絶対に無いという事だけだ。


『…珍しいな』


 ソレは発した声もやはり異質なもので、脳に直接話しかけられているようなおかしな感覚に陥りそうになる。珍しさで言えば、絶対そっちのほうが珍しいと思う。


『君達は元アバターだろう?こんな所まで来るなんて…よほどの物好きなんだね』


 聞き逃す事が出来ない事を言いだし始めたけど、あまりの事態に俺もアテナも何のリアクションも出来なかった。俺達の目の前に居るソレは…俺達がコミュニュケーションを取ってもいい存在なんだろうか?


『ふむ…怖がる事は無い。ワタシが君達を害する事は無い。なんの目的でこんな所まで来たのかは分からないが、こうしてここで出会ったのも何かの縁だろう。仕事も一段落した所だし、ちょっと話さないか?』


 ソレが話し合いを提案してきた事で、なぜか俺の中に「ソレと話して良いんだ」という気持ちが湧き上がってきた。なんなんだろうこの感覚は…まるで、許可を貰ったというような…。


「そ、その前に聞きたいんだけど…」


 俺が戸惑っている間に、俺の腕を強く抱きしめながらアテナが口を開いた。


「あんた…なんなんだ?」


 ソレはアテナの言った事を確かめるように間を置くと、ゆっくりとした動きで片手を胸に当てた。


『神…いやゲームマスターだ』

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