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GM2

「…まだ食うのか?」

「もち」


 可愛らしくVサインをするアテナだが、正直俺はもう見てるだけでお腹いっぱいな状態だ。市場に着くなりまずはクレープ、次に喫茶店でケーキとなったところでウズメさんが何をオススメしてきたのかの予想がついてしまった。俺は3件目のフルーツサンドでギブアップだったのだが、アテナは現在5件目のパンケーキを美味しそうに頬張っている。


「お前そんなスイーツ大好きキャラだったっけ?」

「違うよ。多分転生した影響だろうな、甘い物めっちゃ好きになった」


 ここで「太るぞ」という定番の禁句を言ってしまう程俺は馬鹿では無く、苦いコーヒーと一緒に言葉も呑み込んでおく。ちなみにアテナの転生による趣向の変化は既知の物だったので特に突っ込む事は無い。本人もある程度納得している事でもあるし、この幸せそうな顔を見る限り良い変化だったと言えるのだろう。


「でも食い過ぎってくらい食べて無いのは分かるだろ?って訳で、はい、あーん」

「…あーん」

「おいしい?」

「…甘すぎなくて旨い。流石ウズメさんのオススメだな」


 実際デブまっしぐらなくらい食べてる訳では無く、こうしてちょこちょこ俺におすそ分けをしてくれている。それに贅沢にスイーツをかっ食らうなんて普段はやらないのだから、たまに発散する分には大丈夫なんだろう。


「ウズメさんもそうだけど、サルタさんにも感謝だよなー。普段の食事は勿論だけど、まさか家借りるのに顔まで利かせてくれるなんて」

「ほんとにな…元々はまかないに目がくらんで選んだ仕事が始まりだったんだぞ?そんなたまたま結んだ縁がこうまで発展するとは夢にも思わなかった」


 本当に人の縁ってものがどうなるのか分からないものだ。今後はアテナもアルハの街で一緒に暮らすという事で、当然みちのひらきのサルタさん家族にアテナを紹介する事になった。その時サルタさんが「どうせなら宿じゃなくて家を借りた方が良いんじゃないか?」と提案をしてくれて、以前宿を紹介してくれたように、今度は不動産を紹介してくれたのだ。

 おかげで家賃も良心的で二人で住むのには十分な家を借りる事が出来て、サルタさんの顔利きもあって初期費用を多少後回してもOKという事にもなってしまった。当然すぐ支払うに越した事は無いのだが、日々のクエストをしっかりこなせば期限まで問題無く返せるものであり、今日みたいなたまの贅沢が出来るのもひとえにサルタさんのおかげとなっている。


「やっぱり運のステの影響あったりして?転生の後に良い事が起こりやすいとか…デマに踊らされて多めに振ってたけど、99まで振ってる奴が転生したらえらいことになるんじゃないか?」

「こうして転生してる時点で十分幸運だと思うけどな。つーかそこまで尖った育成してるなら逆に消すのが惜しくなるんじゃね?オレらの場合は初期に作ったからちょっと愛着あるくらいで、ステ振りとかで消されるべくして消されたっていうか…」


 アテナの言う通り、特に俺が生き残ってたのは愛着以外なんでもなかっただろう。あんなに頑張ってキャラメイクした上に、色々な初体験を共にして来たというのに…新職業がやりたいという理由で削除に踏み切るとはね。ゲームだという前提があるとはいえ、薄情だとは…思わないか、そもそも人格が芽生えてるなんて思いもしないだろう。


「まぁ、いいや。今はお前と一緒に暮らせて幸せだし。それがお前の運の良さが発端だとするなら夫婦特権で乗っからせて貰うだけだ。ほい、愛する妻からのあーん」

「あーん…愛する妻からのあーんは一味違うな」

「…オレ、流石にあのモノマネできねぇんだけど」


 この辺の知識が残ってる辺り、俺らの人格形成は本当にどういう理屈で出来たものなのか。今更な事だけど、俺達プレイヤーキャラが何で転生出来たのかってところを神様に聞いてみたいものだ。

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