表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/34

クエスト7

 ギルドでの報告を終えて、俺は先日お世話になった飲食店に向っていた。


(予想してたけど、ギルドでも心配されてしまったな…)


 衛兵さんの所でもそうだったのだから、ギルドの報告でも言われるかと思ってたらその通りだった。なんとタヂカラさんも俺が帰って来るのを待ってくれていて、もう少しでも遅くなっていたら捜索に行くところだったらしい。

 俺は心配を掛けてしまった事を謝り、遅れたのは慣れない森で迷子になったからと報告しておいた。本来の実力を見せて自分なら安全とアピールする事も出来たけど、元プレイヤーキャラだとかを教えるのは憚られたからだ。


(ズルしてる訳じゃ無いんだろうけど…他の人が苦労してるのに俺だけっていうのもな)


 そんな訳で、俺はあくまで新米冒険者として活動していく事を決めた。ちなみに取ってきた薬草なのだが、報告ついでに聞くとゲームでの使い方とはかなり違っているらしい。ゲームでは大量に用意して回復アイテムにしたりしてたけど、どうやら回復アイテム自体がかなりの貴重品なのだそうだ。解毒草は病気の治療薬、麻痺草は手術での麻酔として使うとのことで、薬草なんて瀕死の傷も治す効果があるのだとか。

 薬草の効果には少し疑問を覚えたが、この世界の人達の強さというものを考えれば納得がいった。スライムを倒すのにも数人がかりという事は、冒険者であっても初期ステのプレイヤーキャラより弱いという事になる。確か無加工の薬草の回復量は20くらいだったから、それくらいの回復量でも全快出来る程体力が低いんだろう。初期キャラでも体力は100はあっただろうし、スライムの攻撃で20くらい食らってたハズだから…。


(出会ったら死を覚悟するな)


 ギルドのモンスター討伐の報酬がとんでもないのも頷ける。ついでにプレイヤーキャラが勇者扱いされるのも当然だ。ゲーム並みにリポップでもしようものなら街が壊滅するだろう。どういう理屈なのかは分からないけど、プレイヤーキャラが余分なモンスターを狩ってくれるおかげでこっちの世界に現れるモンスターが少なくなってるんじゃじゃないだろうか?


(俺が転生したのは、そうやってゲームから漏れたモンスターを倒すためだったりして?)


 そうなると素材うんぬんじゃなくて、見かけ次第積極的に倒して行こうという意欲が湧いてくる。俺の事をタヂカラさんや衛兵さんが心配してくれたように、俺だって彼らがモンスターに襲われたらと思うと気が気で無い。だったら出来る限り皆に危険が及ばないよう、こっそり頑張って見たくもなるというものだ。


(薬草も、普段は相場を壊さない程度…万が一の時は多少怪しくても大量に持って来よう)


 とはいえ、それらを効率的にやるには武器ぐらいは欲しい所だ。今のままモンスター狩りに精を出し過ぎたら流石に不自然に見えてしまうだろう。スライムはともかく兎を狩る必要があった場合、スキルを使うためには武器は必ず必要になってくる。


(日々の生活費に加えて貯金かー…)


 冒険者の世知辛さを痛感したところで、目的の飲食店「みちのひらき」に到着した。夕食時の店内は騒がしく、つい昨日まで働いていたハズなのに客として入るとまた違う感じがする。


「こんばんは」

「「「いらっしゃいませー!」」」


 のれんをくぐると息の合った挨拶が飛んでくる。なるほどこれがこの店の本来の姿なのかと、家族の絆というものを見せて貰えた気がする。


「おっ、ナギさんおかえり」

「お仕事お疲れ様」

「おかえりなさい!」


 俺の姿を見た家族三人は、笑顔でさらに出迎えてくれた。俺は一瞬呆気に取られてしまったけど、同じように笑顔になって…。


「ただいま」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ