表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/34

クエスト5

(いやいやいや!馬鹿だろこれ!)


 硬直していた体に喝を入れ、とりあえず距離を取った。巨大スライムは緩慢な動きではあったけど、どう感知してるのか逃げた俺の方へと方向転換をして向かってくる。


(道理で危険だって言われる訳だ。ゲームの時と違い過ぎないか?)


 スライムに警戒しつつ、俺はゲームの時の事を思い出す。俺が最初に倒したモンスターは他ならぬスライムで、その時の俺はLv1初期ステの冒険者だった。その時は何の戦略もなく叩き叩かれの攻防しか出来なくて、それでも回復アイテムを使わなくても勝てていた。一匹倒して休憩してを繰り返し地道にレベルを上げて、10に行く頃には一撃で倒せるくらいの相手になっていたっけ。


(まさかそんな最弱モンスターがこんな巨大に…)


 ふと、巨大という自分の考えに疑問を感じた。ゲームから現実になって、こうして本物を目の当たりにして驚いてしまっていたけど。ゲームの時と比べても、大きくはなって無いんじゃないかという気がしてきた。


(ゲームの中のグラフィックも…人間と同じくらいの大きさだったっけ?)


 そのゲームと比べて強化されてるかもしれないという考えに疑問を持った瞬間、自分でも驚くほど冷静さを取り戻す事が出来た。


(試しに一発ぶん殴ってみても…いいんじゃないか?)


 逃げるにしても、ただ逃げるだけじゃ勿体ない。幸い逃げるだけなら問題無いくらいスライムの動きは遅いし、試してダメだったらさっさと逃げればいい。ゲームの時ならば例え全裸でも勝てる相手なんだ、今の俺強さとモンスターの強さがどうなっているのか…試させて貰おう。


ブヨン


「………」


(蹴りにしよう、リーチあるし素手じゃちょっと触りたくない)


「くらえ!」


 ゲームのシステムとしては蹴りの攻撃なんて無かったので型としては適当だ。俺は素早くスライムに近づくと、スライムに横蹴りを繰り出した。


ボチュン!


 何か弾力性のある物を蹴っ飛ばした感触がした瞬間、破裂するような音が辺りに響いた。


「え?」


 勢い余って倒せそうになる体勢を整え、さっきまでスライムだった物を見下ろす。どうやら俺の蹴りは、スライムを一撃で倒すくらいの威力を秘めていたようだった。


「おおおお!マジか!」


 これは嬉しい結果だ。一撃で倒せたという事は俺の強さはゲームの時のままだし、とりあえずスライムの強さもゲームの時のままだと思って良いのかもしれない。タヂカラさんはモンスター退治をするなら複数人の仲間が必要だと言っていたけど、今の俺なら一人でもまったく問題無い。例えステ振りを失敗していたとしても、それなりに高いLvまで上がっていた俺の身体能力は普通の冒険者に比べてかなり高いものだったという訳だ。


「そうだ!魔石!魔石落ちてないか?」


 確かモンスター退治には報告するためのアイテムが必要になるってタヂカラさんは言っていた。スライムの場合は魔石と言うゲームの時は換金にしか使えないアイテムで、ドロップ率はそんなに悪く無かったハズだ。


「ん~…」


 スライムの欠片がじわじわと霧散して消えていく中を注視してみたが、残念ながらドロップは無かったみたいだ。


「…スライムの死骸ってこんな風に消えて行ってたんだな」


 ゲームの時のモンスターの死骸は単にフィードアウトして消えていくだけだった。スライムみたいな奴なら同じように消えても違和感は無いけど、もし動物系のモンスターならどうなるんだろう?


「そういえば…この森にはもう1種類雑魚モンスターが生息してたよな」


 ギルドのボードにもしっかりあったそのモンスターは、モフモフした兎のようなモンスターだ。報告に必要な素材は肉や毛皮、もしかしたら…倒す事が出来れば確定で回収できる物なんじゃないか?


「よし!モンスター狩りだ!」


 俺は意気揚々と、薬草の群生地から森の中に突っ込んでいった。捕らぬタヌキの皮算用とはいうけれど、ここまでローリスクハイリターンなものなら期待して良いじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ