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青春テロリスト

作者: ハム

春から高校生になる、息子の話。



我が家の次男坊のお話。


生まれた時から小さくて弱々しくて。

泣き虫でとても手がかかる子だった。


耳の先がとんがっていて、ぱっちりお目目と色白の見た目もあってか、妖精みたいに可愛いらしいと

ご近所に知り合い見知らぬ人、たくさんの大人に可愛がられながら大きくなった。人に恵まれた子だった。




2歳頃だったか、バナナを食べると泣く事があった。




大好きなバナナが、食べると無くなってしまうのが

悲しくて悲しくて泣くのだ。


それが最後のバナナという訳ではない。

「バナナは1日1本」という約束なので

また明日になれば食べられる。


それでも、今手の中にある愛しいバナナが

ひと口かじる度に儚く消えていくことを憂いて、

ポロポロ涙をこぼしながら大切に大切に食べる我が子。


そしてまた次の日も、同じように泣きながら

大好きなバナナを食べるのだ。


そこまで大事に食べられたバナナは本望かもしれないが、

この先、この子は強く生きていけるだろうかと

心底心配したこともある。






小学生になっても、大変だった。


「ああぁ~!僕の人生は終わったぁ~!」


と嘆いては泣いていた。

彼の人生は週3ほどのペースで終わっていたように思う。明日提出の宿題を学校に忘れた、明日みんなの前で何かを発表しなくちゃならない、など理由は大した事ないのだが、彼には絶体絶命の危機だったのだろう。



5年生くらいだったろうか、

さぁ、あとひと仕事したら帰ろう!というあたりで

仕事中の私に息子が電話をかけてきたのだ。



「あぁー!僕の人生終わったぁ~!おがあさんどうしよぉぉおおおお!」と。



今度は何だ、と話を聞けば

好きな女の子と手をつないで、こっそり帰っていたところを、他のクラスメイトに見られてしまったと。


「どぉしよ~!明日になったらみんなにバラされてなんか言われるんだぁ~!!!あぁあぁぁぁぁ~!(泣)」


電話口でわめくわめく。



「とにかく落ち着きなさい!相手の子のフォローはしたの?明日誰かにからかわれたら、貴方が守ってあげなきゃなんだから。しっかりしなさい!」



と叱咤し、なんとか泣き止んだので電話を切った。


そばで聞いていた職場の人たちが、

ただ事では無いのでは?すぐ帰った方がいいのでは?と心配してくれたので、

皆さんに事の顛末を話すと・・・



話の内容のあまりの甘酸っぱさと塩っぱさに、

職場内全員悶絶。


上司に至っては、小刻みに震えながら

碇ゲンドウスタイルで耳まで真っ赤にして身悶えしていた。



おかげで思い出し笑いが止まらなくなり、その後の仕事がなかなか捗らず、帰るのが少し遅れてしまった。


それから息子のあだ名が「青春テロリスト」になった。



ちょいちょい、甘酸っぱくてしょっぱい爆弾を投下してくる。




そんな彼も春から高校生。


あの泣いていた小さな子が、

もうそんなに大きくなった事に驚く。


もうバナナを食べても泣かなくなった。

週3で人生終わることも、なくなった。


女の子との話は、あまりしてくれなくなった。

でもバレンタインにはチョコレートを貰っていたようだ。


「べつにっ!と、友チョコだし!」


と、言ってたわりには

耳が真っ赤だったキミの破壊力は抜群だ!

ホワイトデーのお返しはきっちりとしとくんだぞ!




これからも枯れた大人たちが悶絶するような、

甘酸っぱくてしょっぱい爆弾を投下してくれるだろうか。


内緒でもいいから、たんと青春を楽しんでおいで。



こんな異常事態の世界で、

逞しく生きる若者たちが


この甘酸っぱくてしょっぱい彼らの青春を、

安心して甘く熟成させられる世界に

私たち大人がしてやらなくては。


醜い争いをしている場合ではないのだ。

若者の未来まで奪ってはいけない。

彼らこそが希望なのだ。




全ての若者に、子供たちに、

平和と幸せが訪れることを心から願う。


1人の母として、

1人の大人として、

1人の地球人として。




















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― 新着の感想 ―
[一言] 息子様の可愛らしい言葉の数々にキュンキュンしました。 女の子と手をつないで歩いてたら、間違いなくからかわれちゃいますよね。 >貴方が守ってあげなきゃなんだから その通りですねぇ。 その言葉…
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