港町
「お疲れさまでした。本日はご乗船誠にありがとうございました。皆様お気をつけて下船ください。それでは皆様良い旅を」
船内アナウンスとともに慌ただしく乗客たちが船を下りていく。
「やっと着いたな、別に慌てることもないし俺たちは最後のほうでゆっくり降りることにしよう」
ここではぐれたら厄介だしな……
「うん、降りたら宿を探すんだよね」
「そうだな、明日の朝は早いからバス停の近くがいいので、まずはバス停を探して近くで宿を探そう」
「あ、だいぶ空いてきたよそろそろ降りる?」
「よし、じゃぁ行くか」
2人で船を下りる。
目の前の景色は普通の田舎の漁村のようだった。
実際電気は使えなくとも資材は持ち込めるのだから当然ではあった。
そんな街の中を船員に聞いたバス停に向かって歩いていく。
15分ほど歩くとバス停が見えてきた。
受付らしいおばさんがいたので聞いてみることにする。
「すみません、次のバスはいつですか?」
「小笠原行きかい? それなら明日の朝5時だよ」
「そうですか、切符は今買えますか?」
「ああ、一人15000円だよ」
「はい」
受付に2人の名前を書き3万円を渡す。
切符を受け取りついでに近くの宿を聞いてみることにする。
「この近くに宿はありますか?」
「ん、宿かい? それならその正面にあるのが民宿だよ。」
「おお、目の前ですね。ちょうどいい、今から行ってみます」
「ああ、それからバスでは車内販売なんてないから朝飯昼飯はちゃんと用意しておいたほうがいいよ」
「はい、ありがとうございます」
目の前の民宿『朝潮亭』に行き声をかける。
「すみません、誰かいませんか?」
「はいはーい、ちょっと待っててください」
バタバタと誰かが走ってくる音がする。
若い女性の店員さんだ。
「お待たせしました。お泊りですか?」
「はい、部屋は空いていますか?」
「一部屋だけなら空いていますが……」
後ろの遥香をチラ見しながら聞いてくる。
(まぁ、そうだよな。どうしようか)
「大丈夫です。お願いします」
後ろの遥香がニコッとしながら答える。
「お前いいのかよ、一緒の部屋になるんだぞ」
「別に構わないけど、何か問題あるの?」
「いや、お前がいいならそれでいい」
「では、一泊でおひとり様6000円になります。もし、明日のバスで小笠原に向かうのなら、うちのおにぎりセットがおすすめですが、どうされますか?おにぎり5個とから揚げ、漬物にお茶までついて1000ですが」
「おにぎり5個ですか?」
「はい、朝と昼の分を一緒にですね。ここのバスは結構揺れるのでお弁当だと食べにくいのですよ」
「そうなんですね、ではそれも2人分お願いします」
「はい、では14000円になります。お部屋にご案内しますね」
「街に出るなら荷物は部屋に置いて行ってくださっても構いませんよ、ではごゆっくり」
「俺はいろいろ見てみたいから町に出てみるつもりだけどお前はどうする?」
「私もいくわ、大体朝からまだ何も食べてないんだものおなかすいたもの。今からだと完全にブランチだけどね」
「そういえばそうだったな、じゃぁいくか。迷子になるなよ」
「ならないわよ!」
そして俺たちは町へと繰り出した。