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船旅

 「せいやぁ、どこぉ」

 「ここだよ、早くしないと船出てしまうぞ」

 「ちょっと待ってよ、人多すぎなのよ」

 「多いのはおまえの荷物だろうが? なんでそんなにあるんだよ」

 「女の子は必要なものが多いの! 仕方ないじゃない」

 「1日2日じゃないんだから、最低限の荷物だけ持ってあとは向こうで買えばいいと思うんだが?」

 「うっ、これでも厳選したのよ……」

 「ほんとかよ」

 俺は彼女の右手の重そうな荷物を取って歩き出す。

 「ほら、早くいくぞ。この船に乗れなかったら明日になるんだからな」

 彼女はにっこり微笑むと左手の荷物を両手で持ち直して慌ててついてきた。

 「まってってばぁ」

 そして俺たちは何とか船に間に合った。


 俺の名前は、『御剣 誠也』という。この春から小笠原の高校に入学が決まり、向かっているところだ。

 一緒についてきた彼女は『斎藤 遥香』という。幼馴染で昔は仲が良かったのだが中学に上がった頃から疎遠になっていき、最近では挨拶くらいしかしなくなっていたはずなのだが、なぜか同じ高校を受験しついてきた。入学が決まってからは何かにつけて絡んでくるようになった。彼女の両親と俺の親にも頼まれた手前、無下にもできず仕方なくつれてきた。まぁ、いわいる腐れ縁である。


 小笠原には東京から船に乗って大陸までで丸一日かかる。

 そこからバスで12時間ほどかかるらしい。

 今は朝8時なので大陸への到着は明日の8時だ。つまりそれまですることがない。


 「ひまだねぇ」

 「ひまじゃねぇよ。お前、明日の予定とかちゃんとわかってるのか?」

 「えーっと、朝8時についたら下船して宿を探すんだよね?」

 「ああ、まず寝るところ確保しないとバスは2日に一本らしいからな。直接の電話ができないから予約もできなかったしな。コンビニで一晩明かすとかむりだろ?」

 「無理無理、だいたいコンビニあるの?」

 「さぁな?向こうでは電気は使えないらしいからこっちの電気製品は持って行っても無駄らしいけど、代わりに魔石を使った道具と魔法のおかげで意外と快適らしいぞ」

 「そうなんだ」

 「コンビニがあるかはしらん!」

 「バスの日程も行ってみないとわからないのよね?」

 「いや、それは予定表があるから大丈夫だ。12時間もかかるから朝5時出発らしいがな」

 「うぇ、そんなに朝早く起きれるかなぁ」

 「安心しろ、その時はちゃんと置いて行ってやる」

 まぁ、実際に置いてはいけないんだけどな。

 「いぢわる。一日くらい頑張って徹夜してやるから」

 「ああ、がんばりな」


 そんな話をしていると船内にアナウンスが流れた。

 「これより本船は霧に入ります。安全のため霧を抜けるまで船外に出ないようお願いいたします。」


 しばらくすると窓の外が霧に包まれてうっすら青く染まる。が、すぐに霧は薄くなり数分で元通りの晴天になった。心なしかいつもより青い空に見えた。

 改めて船内アナウンスが流れる。

 「無事霧を抜けましたので、引き続きごゆっくり船旅をお楽しみください。なお、この先は小笠原自治区の管轄になります。突発的な異常事態も予想されるため。少しでもおかしなものを見つけた場合はすぐお近くの船員までご連絡ください」

 

 「霧って意外とすぐに晴れたね」

 「そうだな、それに電気が使えないというのも本当みたいだ。スマホが消えてる」

 「ほんとだ、電源はいらないね。これじゃ記念写真も撮れないや」

 「まぁ、分かっていたことだし仕方ない。とりあえずデッキに出てみよう。霧を抜けたら魔素があるはずだ、この辺りはまだ薄いはずだから体を慣らす意味でも一度デッキに出ておくほうがいいらしい」

 「そうなんだ、さすが誠也君。ちゃんと調べてきてるんだね」

 「お前が適当すぎんだよ、それより行くぞ」

 「うん」


 2人でデッキに出ると綺麗な夕焼けの中、水平線に太陽が沈んでいくところであった。

 「綺麗……」

 「ああ……」

 太陽が沈みきるまでぼ-っと眺めていた。


 「さて、船室に戻るぞ海の上だと夜はものすごく冷えるからな」

 「うん」


 その後も船は順調に航海を続け、無事大陸の玄関港。北の町に着いた。

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