プール
夏はやっぱりプールでしょ!(海はいけないのです設定的に……)
遥香と合流して校内のプールにやってきた。
夏限定で作られているとは思えないほど広く立派なその施設は完全にレジャープールである。
ウォータースライダーが鎮座し周りを流れるプールが回っている。さらに大きな波のプールまである。50mの競泳プールに飛び込み競技用のプールまでできていた。すべて学生有志によって作成運営されているらしいがちょっと想像を超えていた。
売店で冷たいジュースを飲みながら待っていると遥香がやってきた。
その姿に思わず手が止まる。
もともと美人ではあった。だが、水着に着替えた彼女は一線を画していた。ピンク色のビキニに麦わら帽子。腰にはパレオを巻き胸にはリボンの飾りがついていた。小さくはなくそれでいて大きすぎない胸が程よく主張していた。
「ごめんなさい、待たせちゃったよね?」
息を切らせながら両手を膝につけ上目づかいに顔を上げる遥香は破壊力抜群であった。
「あ、ああ、大丈夫だ俺も今来た所だから」
「そう、よかった。それ飲んだらいこっか」
「ああ……」
思わず目をそらしてそういうのがやっとであった。なんだこれ、裸の時よりもドキドキしてるぞ。
残っていたジュースを一気に飲み干し缶を捨てる。
「どこから行くんだ?」
「とりあえず、流れるプールの方に行って体を慣らしていきましょう。そのあとウォータースライダーに行きたいな」
「OK! じゃそうしよう」
「ところでだ、さっきからそこでちょろちょろしてる黒い奴、いい加減出て来いよ」
「え!」
そう言うと遥香の後ろから秋野がこそこそ出てくる。
小柄で黒いワンピースじゃないな、濃紺のスクール水着か?
「なんでこそこそ隠れてるんだよ、堂々と出てくればいいだろうが!」
「いや、だって、デートの邪魔しちゃ悪いし、でも気になるし、急だったからこんな水着しかなくて恥ずかしいし……」
「わかった。別に怒ってるわけじゃないから気にするな。それに別にデートってわけじゃないから一緒でも問題ないぞ。水着もちゃんと似合ってるから気にするな」
そう言うとうつ伏せ加減で申し訳なさそうだった秋野の顔がパーッと明るくなる。
逆に遥香はちょっとむくれて怒った様だが……何で怒るんだ?
「じゃ、とりあえず流れるプールに行くぞ」
そういって歩き出すと、遥香が左腕を掴んで強引に組んできた。
左の腕に柔らかい感触が直に伝わってくる。鼓動も高鳴る。マジ勘弁してほしいと思うが、何故か激おこな今の遥香に言えるはずもなく、理性を総動員して耐えるしかなかった。
流れるプールに着いた俺達は早速中に入る。
程よく流れていて泳ぐことも出来そうだが、人にあたると迷惑なのでさすがにしない。
3人で流されながら今後の予定を考える。
「体が慣れてきたらウォータースライダーに行くのか?」
「いくよ! ここに来たならあれはやっとかないとね」
「まぁ、いいんだけど。それより二人とも日焼け対策は大丈夫なのか?」
「え、誠也知らないの?」
「なにを?」
「ここにいるとあまり意識しないけどこの大陸を包む霧あるじゃない?中にいると目立たないけどきちんと空にもかかっているのよ。だから本土よりも空が青くてきれいなんだけど、あれって青より短い光全て弱めてくれているらしいの、だからここでは紫外線も弱くなってるから大丈夫なんだって」
「ほぉ、遥香のわりにはよく勉強しているな」
「でしょでしょ、頑張ってるんだよ」
「誠也塗りたかった?」
「ばか、そんなんじゃねーよ」
正直言うと塗りたかった……とはいえるはずもない。
「結構遅い時間に来たから余裕もないし、そろそろ向こうに行くか」
「そうだね、順番待ちもあるかもしれないしね」
案の定多くの人が並んでいた。待ち時間は1時間程度と思われる。
「すごい人だね」
「すごい」
「これは時間がかかりそうだ」
とはいえここは待つしかない。
雑談をしながら順番を待つ。少しづつウォータースライダーに近づいていくと建物が思っていたよりはるかに巨大でちょっと驚いた。3階建ての建物より高いくらいの高さからうねうねとスライダーが絡まっている様に見える。これはまだまだかかるかなと思ってみると上に上がる階段には人は待っていない様だった。おそらく安全対策だろうこの辺りはやはり日本らしい。
「階段に人がいないようだから意外と早くいけそうだな」
「そうね、すでに相当待ってるけどね」
「それより順番」
「ああそうだな。俺たち3人の順番決めておかないとな」
「じゃ わたしからね」
「「それはダメ(だ)」」
俺と秋野でハモった。
「なんでよ!」
「なんでよじゃない。俺たち3人の中でどう考えてもお前が一番危険だからだろうが」
「どこが危険なのよ」
「胸」
「は?」
「俺は男だし秋野はスク水だ滑ったところで水着が無くなることはまずない。だが……」
「遥香はお約束……」
「だ、大丈夫よ……さすがにここでそんなお約束展開にはならないわ」
「そうかもしれないが、水着が外れて流されるまではいかなくても……いやありそうだな。すでに前科がある」
「前科?」
「もう忘れたのか? ゴブリンに襲われてた時の事……」
「あー、あー」
遥香は大声をあげて意味をふさぐ仕草で誤魔化す。
「まぁ、そういうわけで遥香が一番はない。妥当なところで秋野が一番次に俺、最後の遥香でいいんじゃないか?」
「賛成」
「わかったわよ」
「安心しろ。万が一お前がマッパで流れてきても何とかしてやるから」
「うん」
「無いわよ、たぶん……さすがにそれは……ないと思う……けど、もしもの時はお願い」
「おぅ」
そして俺達は3人で階段を上る。上には3人のスタッフがいた。彼らが水魔法で押し流してくれるらしい。そして前のグループが順番に滑り落ちていく所だった。
「いらっしゃい。まず注意事項から説明します」
そういって色々説明される。そして俺達の番が来た。
「最後に、滑る前に魔力譲渡やブレスなんかが使える方がいたら私たちに頂けると助かります」
魔力譲渡は水魔法だ。とはいえ効率が悪く初級でも難しい方の魔法にあたるため意外と使える人は少ないと聞く。
「あ、はい、では少しですが……」
遥香が3人に魔法をかけていた。使えたんだな……
「じゃ、俺も微力ながらブレスをかけておくか」
そういってブレスをかける。ブレスはかけた相手の全能力を上げる。魔力や精神力も上げるので少しは楽になるのだろう。
「ありがとうございます。では楽しんできてください」
まずは秋野が滑っていく。きゃーとか、おーとか声が聞こえる。普段無口? なあいつにしては珍しいな、などと思う。きっと楽しんでいるのだろう。
次は俺だ。胸の前で腕を組み落ちていく。結構なスピードでぐるぐる回るようで、これはなかなか激しい。なかなかに楽しいがあっという間に下に着いた。水しぶきを盛大に上げて着水する。
俺の後からすぐにきゃーとかすごーいとか言いながら遥香が落ちてきた。よく見ると胸の前で組むように言われていた腕がかなり上がっている。あれで着水は拙い。
そのまま着水し盛大な水しぶきが上がる。誰にも見られてないはずだがあの状態だと水着がずれている可能性が高い。早く何とかしないと……
俺は即座に水に飛び込み遥香を見つけた。水中で泳いで近づき遥香を抱き寄せる。
「え、なに、誠也みんなが見てるよ、はずかしいよ」
「ばかやろう。恥ずかしいのはこっちだ早く水着を直せ」
「え、あああぁ」
遥香は胸元を見ると真っ赤になって慌てて水着を直す。
「あ、ありがとう」
「ああ、気にするな」
「お約束」
俺たち二人が真っ赤になって照れている中、秋野だけはマイペースだった。
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