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[エピソード3-3]「あなたはあまのじゃくだから」



 さて話を戻します。



 受験する高校を選ぶときも母親と一悶着ありました。

母親から、「由緒ある女子高」を強くオススメされたのです。

「ごきげんよう♪」って挨拶することを指導してくださるお嬢様たちの楽園☆のような学校を。



「ギエエ~~!それだけは絶ッッッ対に無理~~!!!!」



 わりと激しく主張しました。

あちこちから理由をいっぱい見つけて心底嫌だと主張しました。

娘の無理無理無理無理無理vs母の無駄無駄無駄無駄無駄無駄



 やべえ、このままではアイアンメイデンに閉じ込められたような高校3年間を送らなきゃいけなくなる、やべえ!

それはやべえ!絶対違うとこ行く!(大焦り)

なんとか阻止しようとしましたが、所詮は母と子の力関係。


 私は学校説明会に連行され、受験の資料をもらい、成績がこれだけあれば受験できるわよみたいな説明を叱られながら聞いていました。(まじめに聞いていなかったから)

資料のなかに興味の持てそうな部活を探し、「まあでもこの学校も悪くないかも……」と思おうと頑張りましたが、無理でした。

学校説明会をあとにするとき、その学校はとてつもなく大きな監獄に見えました。



 結局、私は第一志望にしていた公立の高校(しかも制服がない!)に受かったので、女子の花園からも、制服の縛りからも開放されることになりました。

あのとき「ごきげんよう♪」方面に進んでいたら本当にどうなっていたかわからない。






 高校は、ジェンダーの観点から言えば、あまり悩むことなく楽しい時間を過ごすことができました。

2年生にあがる頃、男しかいないゆるい運動部に入ったことによって、気兼ねなくつるめる男友だちができたのです。


 短い髪で、エナメルバッグを背負って、ジャージを着て学校に行く。

休み時間は男友だちたちとだべって、放課後は部活をして、寄り道しながらチャリで帰って、テスト期間は彼らとブツブツ言いながら勉強をする。


 他の生徒たちからどう見られていたか知りませんが、部活の仲間たちは私を良い意味で女扱いせずに(体の強さが違うから配慮はしてくれたけど)、学校行事などでスカートや化粧を強要されることもなく、この上なくのびのびと過ごすことができました。

あのような思い出の1ページは、一生の宝だなあと思います。


 ただ、クラスの女の子たちはどんどん「女らしく」なっていき、オシャレをしたりメイクをしたりする子が増えていきました。

つるんでいた男友だちの1人に「お前のファッションセンスは女としてやばい」と真剣に言われたこともあり、「そろそろちゃんと女の子にならなくちゃ」という思いが芽生えていったことも確かです。




 「女の子にならなくちゃ(義務感)」ってなんだよ、と今では思います。

もともと女の子だろお前は、という話です。


 女の友人たちと話していると、彼女たちは「女の子にならなくちゃ」と言うとき、「今までよりもっとオシャレに気を遣おう!ズボラ生活はやめよう!」などというポジティブなニュアンスで言っているみたいでした。

 しかし私の場合は、「女の子にならなくちゃ」と言うとき「周りから女の子として認識される装いをしなくちゃ、性別に合わせた装いをすることを社会に求められているから、きちんとした大人としてそうしなきゃ……」という意味合いが強く、更生しなきゃという義務感から出てくる言葉でした。


 私がノリノリで女の子らしい格好をするときは、「よっしゃ!今日は女装する日よ!うふ!」ぐらいのテンションになったときだけです。いやマジで。

だから、逆の発想で、常に楽しく「女装」をできるようになれば人生ラクかな、と思って一時期「バチバチに化粧をしてゲイBARのママになる」という夢を掲げていたこともありました。

何言ってんだコイツって感じです。




 高校生活も後半になるにつれ、なにかにつけて「女の子になろう」と決意を固めることが増えました。

「女なのに女らしくしないこと」は「罪」である、そのように受け取っていたと思います。


 しかし、女性のファッションやメイクについて全く興味がなかった私は、いざ「女の子になろう」と思っても何もできませんでした。

化粧がわからん……と嘆く私を見兼ねて友だちがマスカラを貸してくれたことがありましたが、いざマスカラを手にとると「これ……つけるのか……私が……」という緊張とともに変な汗が出てきてプルプルしていたのを覚えています。


 今だからわかりますけど、あのときのマスカラ持った手が動かない感覚は、「わたしは」と書きだせなかった小学1年次の頃の感覚と似ていました。

「男として女装」はできるけど「女として化粧」はできない、今でもそんな感じです。





 葛藤はありつつも、小学校、中学校、高校、となんとかかんとか順調にあがってきた私。

しかしその「なんとかかんとか」は大学、社会人へ進むにつれ、いよいよ通用しなくなっていきました。


 一体どうなる!?女になりきれない女!



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