空からキミに
一年中、あつい日が続いています。雨はほとんど降っていません。冬はついになくなりました。今は夏だけになってしまいました。少年はあついのが苦手です。少年は毎日が苦痛で仕方ありませんでした。
あつさは空の気分によって変わると、少年は信じています。パパは今、見上げているこの空のどこかにいると信じています。パパに願いを伝えたら、空にも伝わるはずだと思っています。少年は目を閉じて、空に向かって手を合わせました。そして、空に向かって大声で叫びました。
「この地球を冷やしてよ」
すると、パパの声がどこからか聞こえてきました。
「わかった。ユズの願いを叶え・・・・・・」
目を開けると、その声は途中で消えてしまいました。再び目を閉じると、またパパの声が、少年の耳に聞こえてきました。
「ユズがママの気持ちをあたたかくすれば、あたたかさはママに集まってくる。すると、あたたかさをなくした地球が、涼しく変わっていくんだ」
それから、いくら目を閉じても、少年にパパの声が聞こえることはありませんでした。
少年は毎日、ママの肩を叩いたり、揉んだりしました。ママに片付けをさせないために、部屋をなるべく散らかさないようにしました。ママに折り紙で作った、バラの花束を送ったりもしました。すると、ママのまゆげは次第に下がっていき、笑っていることが多くなってきたのです。笑っているママが一番キレイだと、少年は改めて感じました。
だんだん地球は、あつくなくなってきました。地球は、冬を取り戻してきました。そしてクリスマスの朝、空から雪が降ってきたのです。少年は、目を閉じて空を見つめました。そして、空に向かって心のなかで叫びました。
「寒すぎるよパパ」
少年はママと抱き合って、あたため合いました。
「ママはあったかすぎるね」
「ユズがいるからかもね」
「ママにあたたかさを吸いとられたから、こんなに寒いのかな?」
「ユズは面白いこと言うね。少しパパに似てるかも」
「冷たっ。あっ、なんか大きいしずくが落ちてきた」
「もしかしたら、電線さんの涙かもしれないね」
「うん」
少年はまた、空を見上げて目を閉じました。すると、パパの声がまた聞こえてきました。
「ゴ、ゴメンな」