プロローグ 招待状は渡された
この度、小説家になろう様に投稿させて頂きました。コメコパンと申します。処女作ですので見苦しい点が多々見当たると思いますが、温かい目で見守ってくださると有難いです。
不自然な点等ありましたら指摘してくれるとありがたいです。
河川敷で、空野愛は彼女と草むらに腰かけていた。
「きれいな夕日だね」
そう彼女に言葉を掛けられて、愛は目の前の夕日に意識を向ける。空は僅かに赤みを帯びており、一種の幻想的な風景と化していた。
「こういう景色は『幻想的』と呼ばれるのでしょう?」
その言葉を聞いた彼女は「そうね」と呟き、口元に寂しげな笑みを浮かべた。そして、しばらくの沈黙の後、彼女は陽気そうに振る舞いながら、口から言葉を吐き出した。
「今までありがとう。空野ちゃん。高校からは別々になるけど、時間があったらまた遊ぼうね!」
「ええ、誘ってくれれば必ず応じますよ」
彼女はその言葉に今度こそ満面の笑みを浮かべ、「良かったー!!」と心から安心したように息を吐いた。
愛もそれに応じ、「『友達』として当然ですよ」と彼女に言葉を掛けた。
それから愛と彼女はとりとめのない会話をしばらくしていた。
ふと、愛が空を見上げると、既に太陽は地平線に姿を消していて、もはやそこにはただの暗闇だけが残っていた。
「もうこんな時間ですか…」
「そろそろ帰らないと、親に叱られちゃうわね」
「では今日はこれくらいで」
「ええ、じゃあ、『また』今度」
「はい、必ず」
その言葉を最後に心たちはお互いに、反対方向に歩き始めたのだった。
これが、愛にとっての日常、尤も明日——高校の入学式——からはお互い別々の高校に通うことになるのだが。
彼女との会話、やりとりは愛にとって重要なものだった。もし、小学生の頃、彼女に出会わなければ心は今、この世にいなかったかもしれなかったのだ。だからこそ、高校生活に心は少しの懸念を抱いていた。
———私はまた気付かれるのではないか。また、あの表情を向けられてしまうのではないか。また、また、また…………。
「大丈夫です、私は『人間』として生きれている」
愛は自身の思考に無理やり区切りをつけて、再び周囲に目を向けた。
今、愛は横断歩道の真ん中で歩いており、目の前では信号のランプが赤く光っていた。そして———
———赤?
その違和感に気付いた直後、愛は3メートル横に吹き飛ばされた。
———キャアアアアア!!!
遠くから誰かの叫び声が聞こえ、顔を向けようとしたが、骨でも折れてしまったのか、ピクリとも動かない。
———誰か?救急車を!!
そんな叫び声をバックに愛の目はゆっくりと閉じられ、自らの意識を手放した。
□ □ □ □ □ □ □
ふと気づけば愛は『何も見えない』場所にいた。手足の感覚はなく、方向感覚も分からないまま、言うなれば、ただただ『彷徨って』いた。
いつまで、そうしていたのか、もはや『時間』すらよく分からなくなったころ、
———おい。
誰かの声が心に届いた。もしかして、自分を呼んでいるのだろうか、とありもしない幻想を抱く。
———そうだ、貴様のことだ。
そしてそれは幻想ではなかった。なぜ、どうして、そんな漠然とした疑問が浮かぶ。
———ふむ、では、単刀直入に問おう。貴様はその『停滞』を拒み、新たな生を受けたくはないか?
新たな生、その言葉は心の中に反芻していった。
愛は昔から『人間』でありたかった。そのきっかけは親からの言葉だった。
———あんたは何なの?化け物なの!?
怯えた声で母は叫んだ。
———お前はなぜ…そんな事を…
困惑した風に父は呟いた。
そして、愛は自身が『欠陥品』なのだという結論を下した。『欠陥品』は『完成』しなければならない。
———答えはなんだ?さっさと話せ。
『人間』とは常に『生』を渇望している、だからこそ愛は同様に『生』を望む。
———ほう、貴様は自身の在り方を否定するため、二度目の生を望むか。
そう、自身が『完成』するために。
———よかろう、その望み、確かに聞き入れた。
その言葉を最後に、愛の意識は微睡みの中から浮上し始めたのだった。
□ ■ □ ■ □ ■ □
目的を終えたソレはやがて、その確かな形、声を失った。
ソレは称するならば『始まり』、そして『■』でもあった。
そして、ソレはまた俯瞰を始めたのだった。
以上がプロローグでした。もし面白いと感じてくださったのなら、次も見てくださるとありがたいです。
ではでは